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女神様の眷属  作者: みぬま
エインルッツ王国 炭鉱街ドイロック編
31/113

発掘、希少石!

 足を止めることなく奥へ奥へと進んでいく。雑魚岩モグラはみんな揃って逃走中だ。邪魔が入ることはない。


「神気さまさまだな」

「キミの神気はサリスタ様由来だからね」

「やっぱりサリスタ様ってすごい神様なんだ?」


 俺の問いに白夜はう〜ん、と唸る。


「神様そのものに優劣はないんだけど、持ってる権能によって生物が本能的に畏れることはある。で、サリスタ様は畏れられる側の権能の持ち主なんだよ」


 ああ、滅びとか挫折とか、そっち方面の権能に関しては確かに恐いかもしれない。


「キミは理解してなさそうだけど、再生や再起だって畏れられる権能だからね」

「そうなんだ?」

「逆の立場で考えてみたらわかるよ。滅びや挫折から縁遠い存在が敵として目の前に立ちはだかったらどう思う?」

「あー……なるほど」


 そりゃあ厄介な相手だ、できれば敵対したくない。

 つまり敵対する方向で考えるとサリスタ様って一番厄介で恐ろしい権能を持ってるんだな。だから魔物があんなに必死に逃げていくのか。

 それでも襲いかかってくるのがいるのは俺の神気程度では怯まない大物だから、ということなのだろう。


 やっぱり白夜がいると分からないこともすんなり理解できてありがたい。


「白夜の話は為になるなぁ」

「ふふん。何せボクはスワイズ様の眷属だからね」


 お、珍しく自慢げだ。白夜でも褒められればやっぱり嬉しいんだな。


「そういえばスワイズ様に珍しいものを見つけたら報告するって言ってたんだっけ。思えば地上に降りた初日に一杯珍しいものを見つけたのに報告するのを忘れてたな」

「ああ、あれは別に珍しいものでもないからいいんじゃない? キミにとって珍しくてもこの世界では普通ってものは結構あるからね。むしろキミにとって普通のものがスワイズ様にとって珍しいってことの方が多いかもしれないよ」

「あー、なるほど。これは難易度が上がったな……」


 もしかして果たせそうにもない約束をしてしまっただろうか?

 いずれにせよスワイズ様にとって珍しいものか否か、逐一白夜に確認する必要がありそうだな……。


「でもキミにとって珍しいと思うものを報告するのも面白いかもね。スワイズ様からしたら珍しくもないものが異世界の人にとっては珍しいものだという知識になるし」


 早速連絡してみよう、と呟いて白夜が静かになった。

 今は話しかけない方が良さそうだと判断して、俺は俺で暇つぶしに意識を全方向に向けてみる。


 ん? 足元に何か埋まってるな。何だろう、石……?

 それにしてはその辺に転がってる石とは違う感じがする。


 しゃがみこんでポーチの容量を誤魔化すために背負っているリュックからスコップを取り出す。薬草採取用に持ち歩いてるものだけど、これで踏み固められた固い地面を掘れるだろうか……。


 思考錯誤しながら、最終的にはスコップの損傷を度外視でガツガツ地面を掘り返す。すると間もなく目的の石に到達。

 丁寧に周囲の土を取り除いて持ち上げてみると、掌に乗る程度の大きさの──何だろう、水晶? 柱状の結晶が寄り集まったような形状でちょっと向こうが透けて見える、薄ら黄色味を帯びた石が


「ちょっとキミ、何やってんの!?」


 うおぉ、びっくりした!

 スワイズ様とのやりとりを終えたらしい白夜の声に驚いて、危うく手の上の石を取り落とすところだった。


「うわぁぁ、えぇぇ? どうやって見つけたのさ、こんな希少石」

「え、希少なの? 地面の下になんか変わった石があるなぁと思って掘り起こしてみたんだけど」

「えぇ……ちょっと待って、スワイズ様と替わるから」


 え、スワイズ様と替わるってどういうこと?

 疑問を口にするより先に仮面が解除されて白夜が地面に降り立つ。次の瞬間、ふわりと眩い光が白夜を包んだ。そして。


「うはぁ、地上ひっさしぶり!」


 聞こえてきた声。それは白夜のものとは違う、けれど聞き覚えのある声だった。

 徐々に収まっていく光の中に人の形が見え始め──光が完全に収まると、そこには神界で俺にざまざまな知識を与えてくれた神・スワイズ様が立っていた。

 相変わらず好奇心旺盛、天真爛漫がその表情から溢れ出ている少年の姿をした神様が、こちらに向かって手を振ってくる。


「アキオも久しぶり! ふふふ、びっくりしてるねぇ?」

「そりゃあ……びっくりもするでしょう」


 けどまぁカラクリはわからなくもない。そもそも白夜はスワイズ様と替わると言ってたし、そのあとでスワイズ様が現れたなら答えなど明白……と言いたいところだけど実際はどうなのか。


「眷属って神様と入れ替わることができるんですか?」

「ちょっと違うかな。これは君たちの世界で言うところの憑依とか、神降ろしみたいなものだよ。この体は白夜のものだけど、僕が入ることで僕の姿を周りに見せていると言えばいいのかな。実際は白夜の姿のままなんだけど、僕の神気で姿が僕そのものに見えるというか」


 ふむ、つまり。


「幻覚みたいなものってことですか」

「そうそう。理解してもらえたところで君、どうやら面白いもの見つけたらしいね? ちょっと見せてよ」


 ずずいっと寄ってきたと思った時にはすでに手にしていた石はスワイズ様の小さな掌に乗っていた。速いっ。動きが全く見えなかった……!

 驚く俺の目の前ではスワイズ様が目をキラッキラ輝かせながら色んな角度で石を眺めている。そして「これはすごい!」と声を上げた。


「君も魔晶石は知ってるよね。あれは魔物の体内で結晶化した魔力なんだけど、これは地晶石と言って地面の中で結晶化した魔力なんだよ。でも自然の中で魔力が結晶化するのって本当に稀でね、つまりこれはものすごく希少な石なわけなんだけど、本当によくこんなの見つけたね!」


 すらすらと説明しながら掲げるようにして石──地晶石を俺の目の前に持ってくるスワイズ様。めちゃくちゃ興奮してますな。知識の神様がこれだけ興奮しているのだから本当に希少な石なのだろう。


「状態もいいし、サイズも大きいし、色の具合もいい。ここまで揃うと希少価値は計り知れない……けど、どうする?」

「どうする、とは?」

「売れば一生遊んで暮らせるだろうけど、君のお友達を元の世界に帰すためにラクロノースに捧げてもいいと思う」


 へぇ、そういう使い道もあるのか。

 上質な魔晶石を三百個集めるのは厳しいし、超巨大ムカデもどきのおかげでお金に困ってるわけでもない。だったらラクロノース様に捧げる分として、領主様経由でエインルッツ国王に送って──


「でも、もし手放す場合は気をつけて」


 地晶石の扱いについて考えていると、不意にスワイズ様の真剣な声が響いた。


「この石には見る者を強く惹きつける力がある。人なんて簡単に狂わせるから、売るにしても預けるにしても相手をよく見極めた方がいいよ」


 ええ、そんな面倒臭い石なの? だったら……。


「ならそれ、スワイズ様に預かってもらってもいいですか?」


 という結論になるんだけど。

 するとスワイズ様が驚いたように目を見開いた。口も「え?」という形になっている。え?


「そんなに面倒な石なら売るっていう選択肢はないですし、そもそもクラスメイトたちを元の世界に帰すために使えるならそっちに使いたいわけで。でも預けるにも相手を選ばなきゃいけないんですよね? だったらスワイズ様に預けたら安心じゃないですか」

「あ……ああ、うん……そう、そうだね? え、でもいいの?」


 何が「いいの?」なのかわからず首を傾げる。


「僕のこと、信用してくれるの?」

「え、なに言ってるんですかスワイズ様。俺のスワイズ様への信用度はマックスどころか限界突破してますよ?」

「ほ、ほんとに〜?」


 どうしてそこを疑われないといけないのか。


「スワイズ様、そんなに信用ないんですか?」

「いやいや、そんなことはないよ! でもね、大事なものを預かって欲しいだなんて言われたのは初めてなんだよ!」

「じゃあ俺が第一号ですね」


 神様っていうのは何とも不思議なものだなぁと思う。けど考えてみれば確かに、神様に物を預かって! なんて言うやつはいないか。

 そもそもそういう状況になることってなくない? 俺、めっちゃレアケースに遭遇してない??


「ふふふ、大切に預からせてもらうね!」

「よろしくお願いします」


 実に嬉しそうなスワイズ様。何だか和むなぁ。

 なんて思っていると、廃坑の入り口の方から「クライルさーん! 中にいますかー!?」という声が聞こえてきた。この声、聞いたことがあるような。


「それじゃあ僕は戻るね。あっそれと白夜から聞いたんだけど、君がこの世界で面白いとか珍しいと思ったものも僕にとっては新しい発見みたいなものだから遠慮なく報告してね。楽しみにしてるよ!」


 じゃあね! と手を振ったスワイズ様の姿が再び眩い光に包まれる。そして光が収まると、目の前には見慣れ──るほど本来の姿を見てないけど、この世界で最も身近な存在である白夜の姿がそこにあった。

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