表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の眷属  作者: みぬま
エインルッツ王国 炭鉱街ドイロック編
25/113

調査開始!

 鳥の囀りで目が覚める。穏やかな朝だ。しかしまったりしている暇はない。

 今日は魔物調査の初日。時間に遅れないよう手早く身支度を整え、サリアさんのお店で朝食を摂り、荷物をチェックして早めに宿を出る。


 集合場所である衛兵隊の詰所に到着すると、すでに数人が集まっていた。

 見るからに兵士ではなさそうな、俺と同じく雇われたらしい戦士系の大男と軽装の女性、そして弓を背負った男性がいて、衛兵隊の制服を着た男性が対応していた。


「おはようございます」


 とりあえず無難に挨拶でもしてさりげなく輪に入れてもらおうと近づいていくと、大男と軽装の女性、弓の男性がこちらを振り返って目を見開いた。


「おいおい、このひょろっちい神使様も魔物調査に参加するってのか?」


 うわ、大男にひょろっちいって言われた。小悪党の件といい、俺ってどんだけ弱そうに見えるんだろう。


「あっもしかして、調査に役立つ魔法が使えるとか?」


 ポンと手を打って軽装の女性が問いかけてくる。

 魔法かぁ、それは使えないな。素直にそう答えようと思っていると、弓の男性が間に入ってきた。


「この人かなり強いよ。素手でアンゴルとズモルを黙らせてた」

「はぁ? あの小悪党ふたりを? このひょろっちいのが?」


 またひょろっちいって言われたよ。

 そもそもこの大男の言うひょろっちいの比較対象って何なんだろう。自分か? 自分なのか? そりゃあんたに比べたら俺はひょろっちいだろうさ。


「まぁまぁ。この方の実力は衛兵隊が保証しますよ。アンゴルとズモルを無傷で下した上、うちの隊長が相当な使い手だと見込んでましたし。それに薬草採取などの仕事でも護衛なしで街の外に出て十分な成果を上げていらっしゃいます」

「はぁ!? ひとりで街の外に出てるだと!? 自殺志願者か?」


 この大男、ちょっと好き勝手に言い過ぎでは。怒ってもいいだろうか?

 しかし俺が何か言うより先に、衛兵さんが口を開く。


「クライルさんは確か、お一人で巡礼の旅をされてるんですよね?」

「え? ええ、まぁ」

「マジか。だとしたらアンタ本物だな。このご時世、一人旅ができるのは実力者しかいねぇ。ひょろっちいとか言って悪かったな」


 おお、急な掌返し。もしかしてこの大男、あけすけなだけで嫌味を言ってたわけじゃないのか?


 いずれにしても、一人旅ができるというのはすごい説得力を持っているらしい。

 一人旅ができるイコール実力者。覚えておこう。本当は白夜がいるから一人旅でもないんだけども。


 そんなやりとりを経て自己紹介をしていると、調査に参加する兵士を引き連れた髭隊長がやってきた。


「おっ、もう揃ってたか! 優秀優秀! 今回の調査については事前に説明した通りだ。質問のある奴はいるか?」


 俺としては特に質問はない。他の人たちも同じようで、兵士さんが大きな声で「ありません!」と応じている。あまりの声の大きさにちょっと驚いていると、いつの間にか隣にきていた軽装の女性、レイシーさんが声をかけてきた。


「神使様、お強いんでしょ? あたしは足の速さと目の良さ、あと観察眼を買われて雇われたんだけどさ、戦闘になったらあまり役に立たないんだ。だから移動中はよろしくね!」


 よろしくねって……つまり守ってくれってことだろうか。だったら見るからに強そうな大男、グラドさんに頼めばいいのに。

 そんな俺の思考を察したのか、レイシーさんは「あいつは粗暴すぎて無理」と腕に絡みついてきた。色仕掛けでないことはレイシーさんの様子からわかるんだけど、歩きにくいからあまりくっつかないで欲しいなぁ……。




 持ち物などの最終確認を経て、髭隊長に見送られながら街を出る。目的地は街の北東、ドイロックの街が小さく見えるくらい離れた場所だ。


 道中は調査員の代表に任命された兵士、オリスさんが今後の動きについて注意事項を含めて説明してくれた。

 現地に着いたら二人一組で行動。これは事前に聞いてたけど、誰と組むのかは今日初めて聞く。

 ある程度パワーバランスを考えて組んだらしく、俺はオリスさんとペアだった。ちなみにオリスさんは事務方寄りの兵士だそうで、細かい記録はオリスさんがつけてくれるらしい。


 その後も注意事項などを聞いているあいだに現地に到着。各班で担当する方向を決めて散開する。


「神使様のおかげでここまで魔物に出くわさずに済みました。ありがとうございます」

「お役に立てたならよかったです。ところで……」


 俺はぐるりと周囲を見回す。基本的には草原が広がっており、ところどころに採取依頼でよく利用しているまばらに木が生えたエリアが点在している。


「目撃された地点はどれも見通しのいい草原という話でしたよね」

「そうです。しかし目撃した者と該当の魔物まで距離がありすぎて詳細な姿は把握できていません。ただ遠目に見てもわかるくらい大きくて、黒っぽい魔物であるということだけ判明しています」


 大きくて黒っぽい、ねぇ。視点を高く上げて改めて見回してみたけど、それっぽいシルエットは見当たらない。

 あ、弓の男性ことキールさんペアが兎っぽい魔物と戦ってるな。これくらい離れると俺の神気が届かなくなるのか。


「それっぽい魔物は見当たりませんね」

「まぁ気長にやりましょ──う!?」


 オリスさんが引きつった声を上げるのと同時に、背後にオリスさんとは異なる気配が現れる。

 反射的に振り返ればそこには中途半端に地面から這い出たでかいムカデのような頭と胴体があった。頭部をこちらに向けて様子を窺っているように見える。


「えっ、虫系? 動物系じゃないのか」


 距離としては二十メートルほど離れている。それでも大きな魔物であることは頭のサイズから予測できるし、俺の神気を無視してくる辺り、ただの雑魚ではないのだろう。

 とりあえず捕獲しようと走ったものの、素早く地面の下に潜られてしまった。


「……あれが(くだん)の魔物ですかね?」

「お、恐らく……。しかしクライルさん、よくすぐに動けましたね」

「あー、特に虫がダメとかないので」


 そういうことじゃないんですけどね、とオリスさんが呟いているけど今は巨大ムカデもどきが優先だ。気合を入れて気配を探ると地中を移動してどんどん遠ざかっていた。逃げてるのか……?


「確認なんですけど……これまでに例の魔物に襲われたという話はありましたか?」

「いえ、目撃されただけで襲われたという報告は受けていませんね」


 案外危険な魔物でもないのか? でもあの大きさだ、牙を剥かれたら間違いなく脅威になるだろう。


「う〜ん」


 思わず唸るっていると、今度は反対方向から似たような気配が迫ってきた。振り返るのと同時に地面から先ほどと同じような大きさのムカデもどきが姿を現す。

 しかも今度のやつは全身を地上に乗り上げ、半身を持ち上げるようにしてこちらを威嚇してきた。


「う、うわあぁぁあ!?」


 オリスさんが叫ぶ。するとムカデもどきはオリスさんの方へと頭を向けた。音に反応してるのか?


「ほいしょ!」


 とりあえず考察は後にして、オリスさんを小脇に抱えて離脱する。ムカデもどきはやはり音に反応してか、少し遅れてこちらを振り返った。

 うーん、やっぱりそんなに脅威とは感じないんだけど……。


「く、クライルさん! 撤退しましょう!」

「え、あっはい」


 じっくり観察しようかと思ったけどオリスさんの精神力が限界に達したようだ。まぁ足が一杯ある虫って気持ち悪いもんな、仕方がない。


 こちらに向かって来ようとする巨大ムカデもどきを巻くべく、自分の予測に従って足音を殺すことで追跡を躱す。

 そうして十分引き離し、相手が地中に潜り離れていくのを確認してからオリスさんを地面に下ろした。


「いやぁ……それなりに鍛えている私を抱えて逃げ切るとは、クライルさんは細身なのに力持ちなんですねぇ。あと脚力も素晴らしい」


 地面にへたりこんだオリスさんの称賛に苦笑を浮かべつつ、改めて巨大ムカデもどきが消えた方を見る。

 気配はもう遠い。しかしあいつら、なんで──


「おーい、大丈夫かー!?」


 思考が中断されて声の方を見れば、近辺にいた調査員たちが駆け寄ってくるところだった。

 うーん、俺がひとりで考えたところで大した結論は出ないだろうし、情報共有してみんなの意見も聞いてみよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ