呆気ない最期
森に響き渡る轟音、悲鳴、怒号。
それを追うように見上げるほどの巨体が襲いくる。
叩きつけられた殺気に俺たち異世界人は正常な判断力を失い、この世界の人々──兵士たちの誘導があってようやく逃げなければいけないことを理解し、必死に足を動かしていた。
場所は実戦経験を積むために訪れた、王都からほど近い森。
将来的に貴重な戦力となる異世界から召喚された俺たち二年C組を守るため、護衛に選ばれた兵士たちは精強だった。しかしそんな彼らにとっても突如現れた巨大な魔物は強敵だった。
精強であるばずの彼らが腕の一振りで吹き飛ばされていく。
頼もしかった兵士たちが、目の前で次々と命を落としていく。
その事実にぞっとした。
「救世主様たちはこちらへ! 落ち着いて退避を!!」
隊長さんの声が聞こえる。
実戦経験どころか魔物すら今日が初見だった俺たち異世界人は皆恐怖に顔を引きつらせ、混乱しながらも隊長さんの声の方へと走った。全員が腰を抜かすことなく足を動かせたのは奇跡なんじゃないだろうか。
なんて、こんな時に余計なことを考えている俺も殿に近いこともあって必死に走っていた。が、目の前でクラスメイトの女子が何かにつまづいた。
反射的に支えようとして手を伸ばす。しかしその瞬間、体の芯を貫くように嫌な予感が駆け抜けた。咄嗟にクラスメイトの女子を突き飛ばす。
同時に、背中に走る未知の感覚。
鋭い、冷たい、痛い、熱い──どう形容したらいいのかわからない、衝撃を伴った何か。
体が地面に叩きつけられる。何度か地面を跳ね転がり、あらゆる認識が遅れてやってくる中、俺の視界に映ったのは。
見上げるほど巨大な影。木漏れ日を鈍く反射する鋭い爪。
そして、その残像。
ああ、終わったな。
そう思った。
凶悪な爪が眼前に迫る。
なのに体は動かない。動けない。
やけに長く感じる時間の中、俺はその光景を脳裏に刻むことしかできなかった。




