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私はアイテム  作者: 月井じゅん
57/105

35.変身

登場人物


伊藤麻紀……主人公。大学1年生。法学部

伊藤由美……麻紀の母親。UGC職員

伊藤史子……麻紀の叔母。孝之の妹

青木…………児島と史子の親友

児島…………装置盗難の容疑者で伊藤教授のアシスタント

安藤…………元H大学の准教授。峰准教授の同僚。装置を盗んだ真犯人。

パーカー司令官……現在の装置所有者

 児嶋君が亡くなった後、青木君はあの日の出来事を悔い、自分を責めた。

 中山さんに会わせる顔がなかった。

 その後、青木君は中山さんに1度も連絡をしていない。

 中山さんからも連絡はなかった。

 史子(あやこ)も、中山さんを巻き込む訳にいかないと、連絡をしなかった。


 そして児嶋君が亡くなって8年後、史子(あやこ)はA国で中山さんを目撃した。


 私の夫が殺された後、パーカーを恐れて逃げるように日本に帰国した安藤が、2年後、どういう理由か再びA国へ旅立った。

 UGCから報告を受けた史子(あやこ)は、A国空港で安藤を待ち伏せ追跡した。


 安藤はホテルに到着すると、チェックイン手続きをせずにエレベータに乗り込んだ。

 メモを片手に目的の部屋を探し当てると、ドアをノックした。

 ドアが開くと安藤はにこやかな笑顔を見せ、部屋の中に入っていった。


 史子(あやこ)が様子を窺おうと、安藤の部屋を通り過ぎようとした時、ドアが開いた。

 史子(あやこ)は顔を伏せ、宿泊客のふりをした。

 安藤は、美しい女性と一緒に部屋から出てくると、腕を組んで、楽しそうに会話を交わしながらエレベータに乗り込んだ。

 女性が先にチェックインし、安藤を待っていたようだ。


 安藤にはクラブで働く恋人がいると、UGCから報告が上がっていた。

 その女性だろうか。

 化粧は少し派手で華やかさがあるが、服装は白いシャツとジーンズにスニーカというシンプルな装いで、ぴんと背中をはって歩く姿はなんとなく知性を感じさせた。


 恋人同士のように寄り添い歩く女性に、史子(あやこ)はどことなく見覚えがあった。

 2人が楽しそうに交わすその声にも、史子(あやこ)は何となく聞き覚えがあった。


 2人はオープンテラスに腰掛け、紅茶とフレンチトーストを注文した。

 史子(あやこ)も2人が見える位置に座り、ブラック・コーヒーを注文した。

 女性はバッグから携帯を取り出し、テーブルに置いた。

 その携帯に、アクリル製のキーホルダーがぶら下がっているのに史子(あやこ)は気が付いた。

 透明のアクリル製キーホルダーの中には紫陽花らしき花びらが、四葉のクローバーのように美しくはさみ込んである。


 一瞬にして史子(あやこ)は記憶を蘇らせた。

 あれは中山さんが拾った紫陽花の花びらだ。


 児嶋君、青木君、中山さんと史子(あやこ)の4人で行った、愛宕神社で拾った紫陽花の花びら。

 就職活動の祈願に皆で訪れた愛宕神社で中山さんが拾い、手先が器用な中山さんは、その日の記念にと、紫陽花のキーホルダーを作ってくれた。

 4人おそろいの思い出のキーホルダーだ。


 「まさか……あれは、中山さん……!?」


 すぐには思い出せない程に彼女は変わっていた。

 地味で化粧っ気のない静かなタイプの女性だった彼女が、いつも一つに束ねていた髪を解き、真っ黒だった髪を栗色に染め、くっきりとした目鼻立ちと美しい瞳は、メイクでさらに華やぎ、赤く濃い口紅がよく似合う魅力的な女性になっていた。

 少し派手な化粧にも関わらず、下品さはなく、どこか昔の中山さんの面影が残っていた。


 中山さんの写真を青木君に見せると、青木君は彼女が誰だか分からなかった。

 中山さんだと告げると青木君は彼女の変貌ぶりに驚いた。

 それ以上に、あの日、中山さんの言葉を真剣に受け止めなかった事を悔いた。


 2人は不安に襲われた。

 中山さんが安藤と一緒にいる理由は、復讐しかない。


 何を企んでいるのだろう。

 中山さんが安藤の恋人なら、彼女は銀座の高級クラブで働いている事になる。

 中山さんからは想像もつかない勤め先だ。

 児嶋君の死の真相を1人で探ろうとしていたのかと思うと、切なさで胸がいっぱいだった。


 史子(あやこ)と青木君は、中山さんとの接触を考えたが、青木君は安藤と面識がある。

 安藤とパーカーは我々のマークに気付いていない。

 我々の事を知られては捜査がやりにくくなり、これまでの苦労も水の泡になる。


 それと心配なのは、愛宕神社で撮った4人の写真の存在だ。

 夫はあの写真をきっかけに命を落とした。

 あの写真には青木君も児嶋君も写っている。

 もし安藤に、あの写真を見られでもしたら大変だ。

 A国で親しくしていた青木君が、児島君の友人だったと知られてしまう。

 しかし、中山さんが復讐を果たす為に安藤に近づいたのであれば、児嶋君が友人だという事は伏せているはずだ。


 中山さんの登場は史子(あやこ)と青木君を混乱させた。


 とりあえず中山さんの行動を静観する事になった。

 中山さんが安藤と帰国すると、私が彼女を監視することになった。


 この件をきっかけに私は捜査官に復帰した。

※作中にアガサ・クリスティの著作名が紛れ込んでいます(全部分ではありませんが、著作名がある部分にはあとがきで説明を加えています)。


【ブラック・コーヒー】

ポアロシリーズです。

戯曲版(会話形式)と小説版があります。

アガサ・クリスティ自身が執筆した戯曲としてはこれが初作品です。

小説化したのは、クリスティー研究者のチャールズ・オズボーンです。

研究中の原爆の方程式が入った封筒が盗まれ、科学者クロードが、部屋を暗くしている間に封筒を返すよう説得しますが、明かりが付くとクロードが殺され、空の封筒が置かれていました。

ヘイスティングとジャップ警部も登場します。

ポアロの素早い身のこなしに「日本のジュージュツですか?」と「日本」が出てきて嬉しかったり、ポアロのアクションシーンが見られて面白くもある作品です。

小中学生でも楽しめる作品と思います。


次は 39-Ⅰ 中山加奈子の告白【紫陽花あじさい殺人計画】 に1作品名が隠れています。

是非探してみて下さい。

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