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私はアイテム  作者: 月井じゅん
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27.児嶋からの手紙

※最後が途中で切れて終わっていますが、()()()()()()()()()。前話で青木が説明しています

 青木へ


 君と史子(ふみこ)が危険な目に合うかもしれない。

 H大学では気を付けろ。

 安藤准教授と海老原教授が近づいたら逃げろ。


 ぼくは足かせをつけられ、見張られ、逃げることも連絡することもできない。

 だからこの手紙を、信頼できるA君に託し、君に届けるよう頼んだ。


 ぼくはある盗難事件の容疑者だ。

 しかし、ぼくは犯人ではない。

 犯人はH大学の元准教授、クイズ番組で有名な安藤厚司だ。


 安藤はT大学からある装置を盗み、大学生3人とH大学の海老原教授を、実験台にした。


 装置は脳に人工知能を書き込み、その人物を洗脳し、意のままにコントロールすることができる。

 安藤は、装置で洗脳した者を「アイテム」と呼ぶ。

 アイテムとなった者は、まるで、ゲームの駒のように、意のままに操れるからだ。


 軍事マニアの安藤は、A国軍に装置を売って、戦争の道具にしようと企んでいる。

 本来なら、この装置は、認知症患者を助けるためにある。

 認知症患者が人間らしく生活ができるようにと開発された。


 しかし安藤によって装置は悪用された。


 ぼくが何かよからぬ動きをすれば、青木と史子(ふみこ)に危害を加えると、安藤に脅されている。

 ぼくの白いハムスター「アルジャーノン」も人質になっている。

 アルジャーノンは特別な能力を持ち、装置の力を証明する、特別なハムスターだ。

 安藤を怒らせれば、安藤はアルジャーノンに何をするか分からない。


 ぼくはこの手紙を書く前に、隠し文字を仕込んだ「洗脳計画書」を書いた。

 手紙で警察に全て打ち明けようとも思ったが、安藤に手紙が見つかれば恐ろしいことになる。

 計画書の内容は、装置を使った洗脳計画、空想世界だ。

 その中に文字が隠されている。

 真犯人の名前が隠されている。

 高校時代に君と教科書を使って遊んだ暗号のやりとりと同じだ。

 安藤は、拉致されて退屈したぼくが、バカな物語を書いてバカな遊びをしていると思ったようだ。

 最近では、安藤の警戒心がなくなり、一緒に住んでいるアイテムと話をしたりゲームをしていても無関心だ。

 安藤の目を盗み、なんとか完成した計画書をA君に託した。

 計画書は警察に届いているはずだ。

 A君なら警察に逃げることができるのだが、そうすれば、アルジャーノンが安藤に殺される。

 だからA君に公衆電話から警察に通報をしてもらった。


    M村の人々が洗脳されています。

    大学生3人が拉致され装置にかけられました。

    証拠を港区のポストに投函します。

    調べて下さい


 すでにアイテムが存在していることと、洗脳計画書の存在を知らせる内容だ。

 M村……君から聞いた、君が小さい時を過ごした、君のお父さんの実家が残る廃村が、洗脳計画の舞台だ。


 明るいお父さんは幼い君に、実家の住所【M村3ー17ー5】を「3匹のイナゴ(175)」と暗号めいた呼び方で覚えさせていた事を、ぼくに話してくれた。

M村に住むまで引っ越しが多かったお父さんは


「私達はイナゴと同じ、食べ物を求めて田んぼから田んぼへ渡り歩くイナゴだ」


と自分達をイナゴに例えて、あの実家を暗号めいて「3匹のイナゴ」と呼んでいた。

住所を聞かれた時には、お父さんは誰にでも「うちは3匹のイナゴだ」と教えていた。

ぼくは、それを笑って聞いていたのを、よく覚えている。

 あのM村を利用させてもらった。


 計画書の内容は、ありもしないウソの話だ。

 洗脳で独裁コミュニティを築く計画だ。

 計画書は、装置を悪用した場合に想定できる、最悪の事態をストーリーにした。

 村人が装置によって洗脳され、忠実なアイテムとなり、ぼくの王国が築かれていく。


 装置がどれだけ危険か、警察に理解してもらいたかった。


 計画書には、ぼくの名前を書いた。

 怪しげな封書を、郵便局が警察に届けてくれれば、ぼくの名前を見れば、警察がきっと動いてくれる。

 親友の君のところにも警察が行くかもしれない。



洗脳計画書

1M村を洗脳し私の独裁コミュニティ(王国)を築けるか検証する

洗脳者アイテムは私に忠実でなければならない

3アイテムはインフラ整備に従事、村を先進小都市に発展させる

4農業事業者アイテムに土地を耕させ、自給自足を可能にする

5アイテムの財産は全て私が管理する

6投資家アイテムに資金を運用させ利益を得る

7村周辺の土地所有者をアイテムにし、外部の者の侵入を防ぐ

8外部から次のような専門技術者を拉致、洗脳、アイテムにする

ターゲット

・独身、且つ又身寄りがない者、あるいは家族と疎遠の者

・インフラ整備に関して技術のある者

・プラント企業社員や化学機械の専門知識がある技術者

・農業従事者

・税務署職員や司法書士、行政書士、弁護士等

・土木関連、建設業者、大工など職人経験がある者

・元自衛隊員、元警察官または警備に精通した者

・コンピューター関連技術者

・飲食店経営経験者、あるいは料理人

・投資家他、金融

・ガス、水道、電気事業者、医療関係者・・・等あらゆる技術者

以上私の王国を築けるか、アイテムが私に一生を捧げるか検証する

児嶋祐樹 M村にて 二月二十日

 

0・0・二・八・十二・0・0・0・(九・二十三)・0・六・

十・十六・0・14・二十・十四・3・17・5・三・九・九


 あまりにも稚拙な内容である計画書を、警察は単なるイタズラと見るか、危険と判断するか、多少の心配はある。

 しかし警察は伊藤教授に計画書を見せるだろう。

 そして教授は計画書がぼくの字であり、内容が実現可能であると証言してくれるはずだ。

 そして君か、誰かが隠し文字を読み解く。


 しかし、警察が動かない可能性もある

 計画書が警察に届かないか、あるいはただのイタズラと警察に判断される可能性もある。


 そこで、上手くいくか分からないが、この手紙を書くことにした。

 誰かに真実を知っておいてもらいたい。

 手紙は史子にも読んでもらいたい。

 伊藤教授に手紙が届かなくても、史子の口から伊藤教授に内容が伝わるはずだ。

 伊藤教授は史子の父親だ。

 それに、ぼくが警察に「真犯人は有名人の安藤だ」と伝えても信じてもらえない可能性もある。

 君と伊藤教授が説明した方が、警察は信用するにちがいない。


 安藤のマンションに、ぼくは拉致されている。

 ぼくたちは安藤に忠実であるフリをし、安藤が油断したところで、ここから逃げるつもりだ。

 あるいは警察が突入さえしてくれれば、全て解決する。


 ぼくの白いハムスター「アルジャーノン」を助けたい。

 アルジャーノンは装置の実験台だった。

 実験で、ぼくの顔画像をアルジャーノンの脳に送り込んだところ、ぼくを認識し、ぼくの後を追い、よく懐いている。


 しかもアルジャーノンは装置にかけた副作用で記憶力が増し、日々何かを学び、とても賢い。

 まるで犬や猫のようにぼくの言葉を理解し、ぼくが声をかけると喜んでくれる。

 アルジャーノンは、ぼくの誕生日に、伊藤教授がくれた、大切な可愛い友達だ。


 安藤は、ぼくの部屋からアルジャーノンを盗んだ。

 もし、ぼくが安藤を裏切るような真似をしたら、アルジャーノンがひどい目に合う。

 アルジャーノンが少し弱っているようだ。

 心配だ。

 安藤は何をするか分からない。


 ぼくの名前で手紙を出せば君にも迷惑がかかるかもしれない、あるいは手紙を奪われてしまいかねないと思い、史子の名で君に

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