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私はアイテム  作者: 月井じゅん
31/105

24-Ⅷ 史子叔母さんの告白【3人の大学生アイテム】

登場人物紹介


伊藤麻紀……主人公。大学1年生。法学部

伊藤由美……麻紀の母親。UGC職員

伊藤孝之……麻紀の亡くなった父親

伊藤史子……麻紀の叔母。麻紀の父親の妹

伊藤教授……麻紀の祖父。装置の開発者

峰准教授……元H大学准教授。児島の父

海老原教授……H大学教授で峰の上司

児島…………伊藤教授のアシスタント

青木…………児島と史子の親友

安藤…………元H大学の准教授。峰准教授の同僚。装置を盗んだ真犯人。

パーカー司令官……現在の装置所有者


 私が不在の間、峰准教授と青木君は、安藤と常に一緒にいる大学生アイテム3人に接触しようと考え、機会を、伺っていた。

 実は、峰准教授が、3人と面識があることが分かった。

 児島君が峰准教授に真相を語った時、峰准教授は海老原教授に襲われ、大怪我を負った。

 その時、偶然近くを通りかかった学生3人が、峰准教授を介抱をし、警察と救急車を呼んだ。

 その学生3人が、大学生アイテムだった。

 その事に気付いたのは、私が軍で撮った写真を、峰准教授に見せた時だ。

 安藤と写真に写る3人に、峰准教授は見覚えがあった。

 彼らは偶然通りかかったのではない。

 安藤の指示で、児島君を連れ去りに来たのかもしれない。


 知らず知らずのうちに、すべては、ジグソーパズルのように、様々な形で繋がっていたのだ。


 アイテムに接触した事がない私達にとって、アイテムとはどういう者なのか、コントロールされた彼らに、どう接触すればいいのか、会話は成り立つのか、感情はあるのか、分からない事だらけだった。

 3人のアイテムが、パーカー司令官と安藤の手足となって動いているのは、間違いない。

 安藤から、危険な指示を受けている可能性もある。

 私達を見つけたとたん、殺すよう指示を受けているかもしれない。

 私が仕事でA国を離れている間、峰准教授と青木君は慎重に、3人と接触する機会を伺っていた。


 ある日、峰准教授と青木君は、3人のアイテムの動きを探ろうと、軍の施設周辺で待ち伏せた。

 すると3人のうちの1人が現れ、彼は1人でバスに乗り、街に出た。

 後をつけると、彼はカフェに入り、珈琲を注文した。

 峰准教授と青木君もカフェに入った。

 しばしの休憩を取っているのだろうか、

 それとも誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。


 暫くすると2人のアイテムもやって来た。

 彼は2人の入店に気付くと、珈琲カップを置いて立ち上がり、2人の方ではなくて、峰准教授と青木君のテーブルに近づいて来た。

 2人のアイテムも、峰准教授と青木君のテーブルにやって来た。


 峰准教授と青木君は焦った。


「ご無沙汰しております、峰准教授。児嶋さんのお父様ですね。そして、青木さん。はじめまして。関と申します。こちらは石塚と竹本です。この日をお待ちしておりました。大統領と黒田総理から、皆さんがA国にいらしている事は、伺っていました」


 彼らはとても丁寧に、私達に挨拶をし、頭を下げた。

 唖然とする峰准教授に、関君は続けて言った。


 「大統領と総理が、よろしくお伝えするように、とおっしゃっていました。もしも皆さんが僕達と会う機会を作るのが難しそうであれば、僕達の方から機会をつくって声をかけるようにと、指示を受けていましたので、このような形をとらせていただきました」


 関君の口調から、彼の穏やかな人柄が想像できた。

 峰准教授は面食いながらも、何とかにこやかな表情を浮かべ、言葉を返した。


 「や、やあ。関君、石塚君と……竹本君だね。やっとお会いできました。海老原教授に襲われた私を助けてくれたのは君達だね。あの時は本当にありがとうございました」


 峰准教授はそう言って立ち上がり、握手を求めた。

 3人は峰准教授と青木君と丁寧に握手を交すと、近くのイスを引き寄せ、全員が席についた。


 「お父さん、僕の力が及ばず、児嶋さんを助ける事が出来ず、申し訳ありませんでした」


 峰准教授は関の台詞に驚いた。

 そして静かに首を振った。


 「君が謝る必要はない。君達だって被害者ではないのか? しかし驚いたな。君は私が裕樹の父親だと知っていたのか」


 「はい。皆さんがここまでいらっしゃるとは、私達も驚きました。児嶋さんの手紙を青木さんに届けてしまった事を後悔しました。巻き込んでしまい申し訳ありません。史子(あやこ)さんのお兄様の件でも、力及ばず、申し訳ありませんでした。まさかパーカー司令官が、あの様な行動を起こすとは、思いもよりませんでした」


 青木君も驚きを隠せずに言った。


 「君たちはいったい……? それにしても、君があの手紙を届けてくれたのか。何が一体どうなっているんだ。あの手紙のおかげで、私達はここまで来れたんだ。感謝しています」


 峰准教授も感謝を述べ頭の下げた。

 青木君は続けて言った。


 「それに、僕は自分が今、ここにこうしていることを後悔していません。史子(ふみこ)も君たちに感謝するはずです」


 関君が、石塚君と竹本君に目をやり、3人は互いに安堵したように口元を緩めた。


 「お2人にお会いできてよかった。実は史子(あやこ)さんにお渡ししたいものがあります」


 そう言って関君は、無残な姿の携帯を、テーブルの中央にごとりと置いた。


 「これは?」


 峰准教授が手に取って尋ねた。


 「パーカー司令官から預かりました。通話記録を調べて破壊するよう命じられたのです。携帯は日本製で日本語だったため、パーカー司令官には理解できず、私に預けたのです。最後の通話は椎名さんという方で、携帯の中にはお兄さんが収めた画像や音声が残っています。パーカー司令官には、タクシーとホテルのフロント以外に通話記録はなかったと、携帯は処分したと伝えました。大統領と総理もお兄さんの件では相当なショックを受けておられます」


 「君達は黒田や大統領と連絡をとっているのですか?」


 「はい、詳しいお話は、また、場所を改めて。史子(あやこ)さんが来週帰国されるそうです」


 5人が会っている姿を、安藤やパーカーに見られてはまずいという事で、場所を改めて会うことになった。

 私の帰国を待ち、日を改め、峰准教授が勤める大学で会う約束をし、5人は解散した。


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