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97:戦争

 港町に突如現れた白い魔鳥達は、まるで自爆するかのように身体から魔力を放出し地上へと墜ちてきた。


その光線からかろうじて逃れた町の少女は、驚いたように目の前に立つ少年兵士を見つめていた。


ー彼は、確か”この前”もここへ来ていた。


 『・・どうなってるんだ?』


少年は呟くと地面に倒れた子供の姿・・・先程まで”魔鳥”だったものの姿を一瞥し、その死体に近付こうとしたものの隊に呼ばれて後ろへ戻って行く。


 『ユウキ!!何してる!』


戻るその後ろ姿を見ながら少女は呟いた。


 『もしかしてあれが・・・”雷”の勇者様?』


その向こうを見ると、通りに王国軍の獣車が停まり、軍に似合わぬ美少女が車の荷台から身を乗り出し、こちらを怪訝な顔で見つめている。


 『勇者メルルも・・・?!』


少女は、驚いたようにその美少女を見た。


城から離れたこの町でも勇者メルルは物凄い人気だった。


少女でも見惚れてしまう美しさなのだ。かといってお高くとまっても無い。むしろ腰の低い彼女は優しいと評判で、町の子供達皆の憧れだった。


 『素敵・・・。』


ほう、とため息をつく少女に気付いたのか軍の隊長らしき人物が大声で怒鳴る。


 『サッサと避難しろ!!!危ないぞ!!』


見上げれば魔鳥の放つ閃光で建物は次々に破壊され、魔鳥自身の落下により付近には更に混乱と悲鳴が産まれていた。


少女はチラリと目の前の死体を見たが、脚が震え近づくことすら出来ない。何とか這うようにして近くの建物内へ入ると、その中にはこの状況に怯え抱き合った老夫婦がいた。


 『王国軍万歳・・・王国軍万歳・・。』


夫婦はひたすら呟き祈るように目を閉じる。


そこへまた、一際大きな爆発音が響き少女は悲鳴を上げ咄嗟に老夫婦に抱きついた。


ーーー


 王国軍1番隊は国王からの出動命令を受け真っ先に現地へと向かった。外島方向からの不審船侵入に対応するように言い渡されたのだ。


敗戦国からの侵入船。それに対する国王の指示は大袈裟にも思えたが、穏やかでない国交事情は前から噂にもなっていた。そのため疑問にも感じずテサはその命令を受けた。


 『再起せぬよう、徹底的に叩け。』


しかし出来れば、国規模の戦いに新入り・・・勇生とメルルは連れて行きたくなかった、というのがテサの本心だ。


自分の子供とそう年も変わらない子達を、戦争と呼ぶべき戦いには巻き込みたくなかった。


しかし勇者を置いていくというと、隊の士気が下がるのは目に見えていた。


連れて行くのは戦力上やむを得ない。しかしこの戦いで2人を死なせない。テサは誰にも言わず心の内で決心し2人を連れてきていた。


不審船は物理網を前に進行を止めたという情報が入っていた。一晩明けたがそこから状況は変わっていないようだ。


1番隊に続き、今回はベルタ率いる3番隊と普段は予備軍として配置されることの多い5番隊に出撃指示が出された。


現2番隊は、前隊長ダリウスに代わり若いコランが隊長となったばかりで統率力に欠け、4番隊は多くの兵士と魔鳥を失い壊滅に近い状態だった。


この時点で”何か”仕掛けてきたというのは、相手に好機を得る力があるということだ。


何にせよ、(あなど)れない。



テサは太い剣を握りしめ、ゆっくりと獣車から空を見上げた。




短めですがキリが良い?のでここで一旦終わります。


前話と、関係する昔の話を少し修正しました。

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