129:城へ
戦いの終わりと共に日は落ち、漆黒に染まった闇夜を一羽の巨鳥が羽ばたいて行く。
ー明け方、その”魔鳥“に気付いた飼い鳥達が次から次に騒ぎ出し、セルビオは痛む身体を引き摺るようにして城の中庭へ出た。
ー新たな敵襲か?
だとしたら、この国はもうお終いだ。たった先刻、大きな戦に決着がついたばかりだというのに。
先程、テサからの伝達が届いた。
”外島との再戦に勝利した”と。
安堵したのも束の間、身内の裏切りや想定以上の犠牲者の数にセルビオは耳を疑った。
それでもかろうじて勝てたのは、あの勇者達の力なのかそれとも・・・。
フワリと風が舞い上がり、憂鬱な顔のセルビオの衣服がバタバタとはためく。
顔を上げたセルビオは、納得がいったようにその名を呟いた。
『人魔鳥”ヨザ”・・・そうか。』
目の前に降りた黒銀の羽を持つ魔鳥に、セルビオは尊敬の意を示すように片膝をついた。
ヨザは人の姿に戻ると、騒ぐ鳥達を見て申し訳無さそうに肩を竦めた。
『すまん。・・・ちょっと、”国王”に用があるんだが。』
『何と?』
セルビオが戸惑うように聞き返した瞬間、”勇者”勇生がスッとヨザの背後から現れた。その後ろからは見覚えの無い少年、そして少年が背負っているメルルに気付きセルビオは声を上げた。
『メルル!・・・まさか。死んでるのか?』
勇生は顔面蒼白で、答えたくないと言わんばかりに目を伏せる。メルルを背負っている方の少年ーよく見ると、見たことのあるような顔の美少年は悲しげに頷いた。
『まさか・・・そんな。』
セルビオは表情を歪め、血の気の無いメルルと勇生を見る。そしてようやく理解したように恐る恐る、ヨザに問い掛けた。
『それで、・・・用件とは?』
ヨザは、申し訳無さそうな表情のまま首を横に振り、言えないことを示す。
『国王に会わないと。』
ー直接・・・?
セルビオは考えを巡らせるようにしばらくキョロキョロと目を動かしていたが、結局結論に辿り着かなかったのか、諦めたように大きくため息をついた。
『はぁ。まあ・・・、謁見中、護衛は付くと思いますが。』
そしてそのまま、くるりと踵を返し兵舎へとヨザを招き入れた。
ー”ヨザ”は敵ではない。裏切られたとして、その時には自分もそちらに付けばよい。
『今”国王”は寝所ゆえ、私から本日の謁見を申し出ておきましょう。ーああ、恐らく』
そこでセルビオは、思い出したように声を落としボソリと呟いた。
『会えるのは処刑執行後になるでしょうな。』
頭の中で、何度あの女王を殺したことか。愛鳥を死なせた女王と側近のことを忘れる日はなかった。
セルビオは、強い憎しみを込めて”執行後”という言葉を口にした。
・・・待ち望んでいた処刑がようやく執り行われる。
『こちらの部屋をお使い下さい。』
セルビオは4人部屋にヨザ達を案内し、ドアを閉めながらふと勇生の方を見た。
ーあの”女王”戦を共に戦った勇者には、伝えておくべきか・・・?
『ユウキ。』
勇生は、ぼんやりと床を見ている。セルビオは、労るように優しく声を掛けた。
『勇者よ。女王の処刑が決まった。もし見たければ、我が隊が出る際、共に広場へ。』
勇生が肩を強張らせたのには気付かず、セルビオは静かにドアを閉め自室へ戻っていった。
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ひとまず1話、遅くなりました・・・!




