プロローグ
まえがき
以前別作品を書いておりましたが、久々に続きを書こうと思ったらアカウントとパ スワードすっかり忘れてしまい、新しく書くことにしました。
前作は「白黒金色」という作品でしたが、改めて書くにあたり、ほぼ一から書き直そうと思います。(そのため、そちらを全く読んでいなくとも問題ございません)
拙い文章で大変申し訳ありませんが、またお付き合い頂けますと幸いです。
ああ、やっと、やっと待ちに待った休みだ。
高校卒業してすぐに地元の小さな企業に就職して、馬車馬のように働き、気付けば3年。
残業代も出ないブラック企業、仕事のできない上司にへこへこ頭を下げ、お前のその砂漠のような頭に生えている数少ない命の芽をいつか摘み取ってやるから覚悟しろハゲ、と心中で呪詛を吐き続け、深夜帰宅後はベランダで転職してやる!!と叫びながら酒を煽る日々。休みだけが心の癒し。
徐々におじさんのような感性になっていることは自覚している。上司に心の中で吐く呪詛のバリエーションは年々増え続け、100を超えた。気がする。正直あんまり覚えてないので毎日新しい呪詛が生まれている気もする。
いいや、そんなことより、待ちに待った3連休である。
この休みで、今週見れなかったアニメとかドラマとかめちゃくちゃ消化したいのである。今期のアニメは豊作なのだ、ついでに今放送してる2期のアニメの1期目も見直しておさらいしたい。あといっぱい寝たいしカラオケ行きたいし美味しいもの食べたい。
時刻は早朝、6時半。いつも起きる時間に、目覚ましをセットしていないのに正確に起きてしまった。なんだか少し勿体無い気がする。この時間に起きるのが完全に癖になっているようで、目は完全に覚めてしまっていた。
しぶしぶ体を起こし、ゆっくりと伸びをした。
少し体を動かして、すっきりしようか。
朝の空気はとても澄んでいると思う。
季節は春に差し掛かった時分で、まだこの時間は少し薄暗い。
吐く息に白さは混じらなくなったが、肌寒いと感じる。
高校時代から愛用し、着古している紺色のジャージは無駄に通気性が良くて、下にシャツを着ていたけどやっぱりちょっと寒かった。
…昔は走ることが嫌いだったのに、不思議と今は苦じゃない。強制じゃなくなったからか、それとも自分のペースで走れるからか。
薄暗いアスファルトの舗装された道を、とんとん、とスニーカーの爪先でたたいてゆっくり走る。
いつもと変わらない、休日の朝だった――はずだった。
――がくん。
人気のない公園に差し掛かったところで、足を踏み外す感覚があった。ちょうど、段差が無いと思って歩いていたら、実は段差があって、がくんと膝が落ちた時のような感覚。一瞬滑ったのかと思ったが、それとは少し違う。
喉の奥から、ひゅ、と息が漏れる。
バランスを崩しながら足元を見ると、真っ暗な闇がぽっかりと口を開け、右足を飲み込んでいた。
理解できない。何が起きているのかわからない。
呆然と闇に飲まれた右足を見ていると、徐々に闇は大きく口を開け始める。
本能が警鐘を鳴らしている。
左足を踏みしめ、右足を「穴」から引き抜こうとするが、どんなに力を入れても抜けない。まるで、誰かに掴まれているみたいに。
そうこうしているうち、左足から力が抜ける。違う、力が抜けたんじゃない。これは…
――地面が、無くなった、と感じた。
風景が凄い勢いで上に流れる。
頭が真っ白になって、落ちている、と気付くのに酷く時間がかかった、ように思う。
叫び声をあげたときにはもう遅い。
眼前は真っ黒に染まり、一瞬で意識が無くなった。