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長野市役所ダンジョン課  作者: 輝井永澄
7/10

戦うべき、相手

 その頃、坂上はナナイ達からはぐれ、一人喧騒の場を離れていた。


 正確に言えばはぐれたわけではない。自ら離れたのだ。もちろん、巻き添えを喰わないためである。



「美人の課長さんは生き残って欲しいかな……デートにOKもらえてないし」



 坂上としては、標的である塚本だけなんとかなればそれでいいのだ。または、塚本が生き残っていたとしても、それはそれで良かった。そういう意味では、すでに目的は達成したとも言える。



「あとは……なるべくさりげなく戻りたいけど」



 そう言いながら、入り組んだ通路を進む。ここも、事前に調べてあった通路だ。


 その通路の角を曲がって、広い空間に出ようという時、目の前に何かが立ちはだかった。


 昨日、ナナイが倒した小悪鬼グレムリンを大きくしたような、大型の卑魔鬼レッサーデーモン――坂上の姿を見止めたその魔獣は、咆哮を上げながら飛び掛かり、坂上にその爪を突き立てようとした。



 ズドン!



 坂上に覆いかぶさるようにして襲い掛かった卑魔鬼レッサーデーモンは、中途半端な姿勢でその動きを止めた。口から、涎とも血ともつかない泡が吹き出している。


 その腹の辺り、人間でいえば鳩尾みぞおちに当たる場所に、坂上の拳がめり込んでいた。



「はぁぁっ!」



 坂上は身を翻して、続けざまに当て身を打ちこみつつ、卑魔鬼レッサーデーモンの脇を取ってそのまま、後方へと投げ飛ばす。衝撃と共に、魔獣の身体は地面に叩きつけられた。


 坂上は倒れたそれへと近づき、既におかしな方向へねじ曲がっているその首へ向け、捻り切るかのように足刀を叩きこんだ。首の部分が完全に潰れ、卑魔鬼レッサーデーモンは息絶える。



「戦うべき相手を見極める知恵さえないのは、悲しいな」



 頬に飛んだ魔獣の返り血をぬぐい、坂上は呟いた。





 イサナは少女と対峙していた。


 ミヤビ、と呼びかけられた少女は、明らかに困惑の表情を浮かべている。



「まさか……本当にミヤビ、なのか……?」


「なんなの……なんでわたしの名前を呼ぶの?」


「俺だよ! イサナだ! わからないのか!?」



 イサナ、という名前を聞いた少女は、顔色を変えた。



「お兄……ちゃん……?」



 少女――ミヤビは、目を泳がせた。イサナは今こそ、自分の認識が正しかったことを確信した。



「そうだ! 俺だよ……ッ!」



 久しぶりに会った者同士、話が弾むかと思いきや、言葉が出てこない時というのはある。ましてや、この異常な状況である。ミヤビは、イサナたちを襲ってきた。それも、魔獣と一緒に――


 なにを問い質すべきかすらわからずに困惑するイサナの前で、ミヤビは俯いていた。



「あんたがお兄ちゃんなら……」



 ミヤビは俯いたまま、絞り出すような声で言った。それと同時に、ミヤビの腰の辺りにある「翼」が開いた。



「どうして……私たちの土地を踏み荒らすの!?」



 翼に青白い電光が宿った。



「ミヤビ……ッ!?」



 ミヤビは翼を羽ばたかせた。電光が無数の矢に変じ、イサナへと襲いかかった。


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