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6オブザデッド


 引き続き、塔に挑む面々である。


 エレベーターに乗った一同はなんとなく無言だった。


 普段は世間話をするような仲なのに、なんとなく階層表示をぼんやりと眺めたままである。


 これは異世界でも現代日本でも変わらず、エレベーターというものにまつわる呪いなのかもしれない。


 エレベーターを降りた一同は、さらに上に向かって続く螺旋階段を見上げ、「まだ登るのかよ……」という気分になった。


 なぜか異世界召喚された小学5年生、正義感があるけど臆病な性格の幼女もんめは、えーもう歩きたくないなあ……。という気分で上を見上げる。


 同じように、年中サンタ服を着ている黒髪ぱっつんロング黒目の少女

にして、職業:ょぅι゛ょのイヴ(少女なのか幼女なのかどっちなのか)もまた、へたり込む。


 彼女たちはシャーリーという王女のぬいぐるみを抱きしめていた。ほのかに温かいのだ。温かいのは、体の中にほっかほっかの卵かけ御飯が詰まっているかららしいのだが、これ元ネタがなかったとしたら狂気としか言えないよ……。なんだよ武器が体の中にほっかほっかの卵かけ御飯って……。どういう発想なんだよ……。


「いいよいいよ」と手をふるのは、巫女のよさぬかベイマックス!だ。よさぬかベイマックス!は私が彼女らの面倒を見よう、とアサルトライフルと日本刀を両手にそれぞれ構えたまま言った。


 ウオウと相づちを打ったのは、黒曜。医者の飼い犬で、牙と爪をもつ狼だ。犬なのか狼なのか! とたぶんあと7時間ぐらいの頭がゆだってるわたしならそう突っ込むのだろうが、今のわたしはまだ比較的冷静なので、なるほどこれは飼い犬というのは比喩表現だな、と理解することができる。


 ともあれ、座り込んだ三人と彼女たちを見守るふたり(ひとりと一頭)は、いってらっしゃーい、と手を振った。先を急ぐ一同は気づいていなかった。エレベーターが動き出していることを。


 残った五人は下のエレベーターからやってきたゴーレムの大群と激しい戦いを繰り広げた。


 それは恐らく、先に行く面々を守るためにあえてここにとどまったのだろう。足が疲れたと言った少女たちは、疲れたフリをしていただけなのだ


 尊い犠牲を払って、一同はさらに上へと上ってゆく。




 塔の頂上が近くなっていたところで、壁のヒビが気になった大工の姫子(外見は貞子)が、スコップを手に壁をべちべちと叩く。


「こういうの見ると、放っておけないんだよね」


 そう言って補修作業をしていた姫子が壁に手をついたとき、予想以上にもろくなっていた壁はぶっ壊れてそのまま姫子は落下していった。


 こうして、塔の頂上に到着した時、人数は9人になっていた。




 塔の最上階は、紋章が刻まれた屋上だった。


 下から風がビュービューと吹き上がってくる。


「さて、あとは秘宝を持って帰るだけだけど」


 プロゲーマーの関〇太がキョロキョロしながら紋章の中央まで歩いてゆく。すると、下から光が吹き上がった。


 一瞬のまばゆい輝きの後、そこには一体の人型をした小さなゴーレムが立っていた。


 今までのゴーレムに比べれば明らかに弱そうだ。というわけで、


(コロコロ……幸運ファンブル一名)


 先制攻撃を仕掛けようとしたニートの加茂なすの。引きこもりを拗らせて猫の着包みを着ている。分厚い。中身は自主トレに励む美少女。が武器であるトラックに乗ってゴーレムに突撃をする。


 トラックでどうやって塔を上っていたのかというのはわからない。誰にもわからない。もうなにもわからない。ただひとつわかるのは、そのトラックの体当たりはゴーレムにぶつかった時点で跳ね飛ばされ、塔から落ちていったということだけだ。南無三。


 人型ゴーレムの目が光る。トラックに衝突しても傷一つついていないそれは、明らかに敵対の意志を示していた。


 残る8人は力を合わせ、ゴーレムを打ち破るのだ!


 戦闘が始まる──。



 

 まずはゴーレムに先制攻撃を仕掛けることができる。これは単純に腕力による物理攻撃か、知力による魔法攻撃となる。


 命中判定を振り、ステータス以下の数字を出せたものの攻撃がヒットするものとする。


 実験体(職業……?)の41号がそこらへんにあるものを使い、トラックの破片などを手当たり次第に投げつける。


 投げつけられたものをビームで撃ち落としている間に、異世界の女神であるサニーが回り込んだ。目から出すビームは、ゴーレムの右腕を溶かす。身長332cmあるのにヒールを履いている迫力美女だ。


 同じように何でも屋(無職)のみぐも、道端の石 (便利ですよね)を拾っては投げ、拾っては投げる。トラックでも傷つかなかったゴーレムが、道端の石でめっちゃ痛そうにしている! ダイスで成功するというのは、こういうことなのだ!


 騎士(自称)のさっちんは、モンコメ騎士団団章旗を振りかざしながらゴーレムに体当たりを仕掛けた。全身甲冑を着込んだその腕力は10。ゴーレムとの真正面のぶつかり合いにも耐えうる能力だ。


 そしてクリティカル値を出した革命家・政治家のウラジーミル・レーニンが、武器である優れた演説を使って、ゴーレムに大打撃を……大打撃を……? 与え、られるのか……? 迷いの森といい、なんなのこの政治家職の力は。まあいい! 精神攻撃かなんかだろう!


 ゴーレムはその瞳から涙を流していた。それほどに優れた演説だったに違いない。しばらく行動を停止したので、今の間に運んで落とそうとしていた瞬間、ゴーレムが全員をなぎ倒すようなビームを放った。



 幸運か体力で判定し……避けられたのは、三名である!



 前に出過ぎた41号が横薙ぎのビームを食らって真っ二つにされてしまった。プロゲーマーの関○太はプロゲーマーの反射神経で飛び退いたが、しかし第三射目に仕留められた。


 科学者にして、武器タイムマシンをもつグン太はビームを撃たれた瞬間タイムマシンに乗って過去に戻った! そこはまだ宇宙が誕生する前の空間だったので、彼は虚無に飲み込まれ、永遠にこの世界から消失してしまった。


 みぐがビームに狙われた瞬間、全身甲冑を着たさっちんが前に立ちはだかる。ビームを浴びながらも突撃するさっちんはゴーレムに組みついた。


「さあ、俺ごとやれ!」


 みぐは涙を飲みながらも、さっちんごと道端の石でぶっ叩いた。しかし死んだのはさっちんだけ。ゴーレムはまだ生きているのである! 返しのビームを食らってみぐもまた命を落とした。


 残るは──サニー、ウラジーミル・レーニン、そしてベリー・キッシュという未就学児の幼女だけだ。


 もうだめだ。女神サニーのビームも尽き始めている。ウラジーミル・レーニンの演説もそろそろ効果がない。もう手がない……。


 と思ったその時、ベリー・キッシュが前に歩み出て、ゴーレムの体に武器クレヨンで落書きを始めた。いったいなにを!? しかしベリー・キッシュはニッコリと笑ってこう言うのだ。


「これできれいになったね」


 ゴーレムはその微笑みを浴びて、先程レーニンの演説と合わせて、人の心を知った。


『コレガ、ココロカ──』


 そう言い、人のココロを理解したゴーレムはその場で眠りについた。彼に最後の一撃を入れたのは、暴力なんかではなく──未就学児の優しいクレヨンだったのだ──。




 ゴーレムの目から光が失われるとともに、広場にはひとつの輝きが落ちてきた。


 これが、古代の塔を攻略して手に入る秘宝──神槍グングニル。



 生き残った三人はグングニルを手に、帰路へとつく。


 残るは最後の地下迷宮。しかしそこが本当に恐ろしい場所であったのだ──。


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