表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/30

4オブザデッド


 さて、迷いの森チームの生き残り、14人は正しい道を歩んでゆく。


 次から次へとトレントは現れるが、しかし休憩しながらも徐々にそして確実に、14人は奥へと向かっていた。


 もちろん無傷というわけにはいかない。例えば突然の判定でファンブルを出した人が迷いの森の罠に引っかかって命を落としたりもする。


「おー、耕しがいのある土だなぁ」と黒塗りの高級なコンバインに乗っていた運転手れい(迷いの森に入ったときからずっと乗っていた)が、開けた土地に突っ込んでゆく──するとだ。


「あーれー!」とコンバインは土をかぶせただけの底なし沼に飲み込まれていった。臨終。重い物ほど早く沈んでゆく以上、コンバインとれいは二度と救出できないだろう。


 さらに森の中にぽつんとあった泉に首輪をつけた野良犬のわんこがハッハッハッと嬉しそうに近づいてゆく。そもそも殿下の招集に応えたのが野良犬ってそれただ単に広場にいただけちゃうんかという気もするが、そのわんこは泉の水を一口飲んだだけでバタッと倒れて帰らぬ犬になった。迷いの森は人の侵入を拒むのだ。


 名前に反して腕力のないアームストロング(自称王国警備員)は腕を蔦に絡まれた。しかし彼の武器は腕力! 腕力さえあればこの程度の蔦は引きちぎれるだろうが、その武器の腕力の数値は0だ。彼は腕ごと引っ張られ、テンタクルスの餌になった。



 さすがは誰も踏破したことのない迷宮だ。奥に進むにつれて危険があふれている。


 残り11名は隊列を組み直し、慎重に奥へ奥へと向かう。


「本当にこっちで合ってるのかな……」


 不安の声を秘書のはにぃが漏らす。馬の玩具の飾りであるえりー号をもつトランプ大統領(某国の大統領)が「yes we can!」と答えた。それは違う大統領だ。


「あ、見て! 紋章の刻まれた広間があるよ!」とガッルス・ガッルス・ドメスティクスが叫んだが、彼はただのニワトリなのでその言葉は誰にも

わからなかった。そしてそのニワトリも三歩歩けば何もかも忘れるので何もかも忘れた。ここはどこだろう。あっ、横道。迷いの森の道から外れたガッルス・ガッルス・ドメスティクスは永久にパーティーに戻れなかった。どこかでクリスマスのチキンにでもなっているのだろう。突然の死!


「いかんも秘宝が隠されてそうっすねえ」


 曲芸士(舌でサクランボを結ぶ芸)のダラシンがめっちゃ頭良さそうな感じの声で紋章に近づいてゆく。床に触ると紋章が光り輝いた。そして、その紋章の中から現れたのは──。


「げっ、番人!?」

「なんてこった!」

「oh NO!」


 これまでよりも遥かに巨大な超伝説級のスーパー強いトレント──命が宿ったもみの木である、クリスマスツリートレントだ!


 さあ、残る10名は力を結集させ、トレントを打ち倒し、秘宝を手に入れるのだ!




 まずはトレントに先制攻撃を仕掛けることができる。これは単純に腕力による物理攻撃か、知力による魔法攻撃となる。


 命中判定を振り、ステータス以下の数字を出せたものの攻撃がヒットするものとする。



 6人が命中だ!



 はにぃが杖で叩き、ミミ・シエスタの背負った宝箱ミミックが噛みつき攻撃を仕掛ける。イレーナの拳はツリートレントの幹をぶち抜いた。


 そして残り三人はなんといずれもクリティカルヒット。


 肉堤万太郎の鉈のような包丁が光の速さできらめき、葉をズタズタに切り裂く。トランプ大統領のわかりやすい英語(という武器)はひとつひとつの単語がはっきりしていて聞き取りやすい! トレントはその言葉に釘付けとなった! 英語が読解できるなんて自分は頭がいいのでは──!


 気を取られている間に、【鮫嵐】の魔法使いの呪文詠唱が完了した。このパーティーの中で唯一とも呼べる戦力である。トルネードに乗って移動する鮫を召喚する呼嵐の杖は、ガーネット級の魔法だ。鮫はオリハルコンよりも硬いツリーの表皮を次々と食い破った! これがクリティカルの威力だ!


 クリスマスツリートレントは体力の半分以上を一気に奪われてふらついているが、しかしその葉っぱを回転させて突っ込んできた。直撃を食らった場合絶命は避けられないだろう。



 避けるための判定は、幸運か体力だ。さあ、どうだ!


 なんと……避けられたのは、たったの3人だ。


 まず先ほど活躍したはずの肉堤万太郎が深入りしすぎたため、はっぱカッターを浴びて真っ二つに斬り裂かれた。


 次に腕力ほぼ全振りのミミ・シエスタがトレントの葉っぱにミキサーされてしまう。これにはミミックごと昇天である。


 めっちゃ頭良さそうな感じのダラシン、【鮫嵐】の魔法使い、そして馬の玩具の飾りのえりー号も葉っぱの嵐に巻き込まれ、その肉体によって赤い雨を降らせることになった。


 なんて攻撃だ。こんな化物に勝てるはずがないじゃないか!


 そう絶望に沈みそうになった一同を奮起させたのは、新たな影だった。


「アシトリィ~~~!」という奇怪な鳴き声でお馴染みのアシトリくん(どこにでもいる極普通の天然記念物)は、葉っぱで全身を裂かれながらも突撃し、その噛みつき攻撃でツリーと怯ませることに成功した。しかしそれはアシトリくんの命と引き換えの攻撃であった──。


 残りは秘書のはにぃ、委員長のから、自分のことを発症寸前のウィルス感染者だと思ってる精神異常者(気合いで押さえ込んでいると思ってる)

イレーナ、そしてトランプ大統領だ。


 トランプ大統領が前に出る。


「oh NO...いや、仕方ない。国を守るのも私の役目だからな」

「トランプ大統領!?」

「日本語、喋れたんですか!」


 トランプ大統領は振り返り、男臭い笑みを浮かべた。


「殿下のことをよろしく頼むよ。まだ国を背負って立つには若すぎるが……しかし、きっといい指導者になれるはずだ」


 トランプ大統領はわかりやすい英語を武器に、トレントに突撃した。


「You have to think anyway, so why not think big?」


 すかさずイレーヌが叫ぶ。


「今だ! トランプ大統領がトレントを押さえているうちに!」


 それぞれ杖、辞書、拳を手に、走り出す。


 こうして、三人の攻撃は瀕死のトレントを絶命させるに至ったのだった。




 クリスマスツリートレントとトランプ大統領の亡骸が光の粒となって消えてゆく中、広場にはひとつの輝きが落ちてきた。


 これが、迷いの森を攻略して手に入る秘宝──聖剣エクスカリバー。


 

 生き残った三人はエクスカリバーを手に、帰路へとつく。


 残る二箇所を攻めた人たちの無事を祈りながら──。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ