2オブザデッド
それじゃあ腹も膨れたことだし。
「王国奪還のために、今すぐ攻め込みにいこうじゃないか!」
そう言って拳を突き上げると、血気にはやる殿下をなだめるために数人の知恵者がやってきた。
『お待ち下さい、殿下』
「ハッ、あなたたちは知力10の」
車椅子に乗った探偵、水野一時がゆっくりと前に出てくる。
「私の推理では、このまま王城に攻め込んでも無残にやられるだけですね」
「なんと」
エルフの探求者、ルーティリアもその言葉に深くうなずいた。
「城に住まうアンデットたちを操るのは、強大な魔術師。我ら烏合の衆では一網打尽でしょう」
「マジか」
ひょろ男の自称哲学者、ハリキリも張り切って言った。
「そのためには、魔術師を倒すための秘宝を集めなければなるまい」
「え、デカい」
身長4メートルある知的な顔をしたトロール(大賢者)が落ち着いた声で言う。
「……」
「うさぎさん」
うさぎさんの白雪姫はうさぎさんなのでなにも言わなかった。
「……」
そして知力10はありそうな辞書が落ちていた。
とりあえず辞書を拾い、殿下はうなずく。
「つまり、秘宝を集めなければならないってことだね……。そうしなければ魔術師を倒せない、と。秘宝、秘宝か……。きっと世界中に散らばっているんだろうな」
「いや、この町のすぐ南と東と西にそれぞれあるのじゃ」
「近ぁ」
スピーディーな進行であった!
三方向には、それぞれのダンジョンが広がっていた。
南は迷いの森。
東は古代の塔。
そして西は地下迷宮である。
どれも冒険者が踏破したことがないほどの難関らしいが、しかしそれだけに眠っている秘宝は非常に強力なものなのだろう。
「それじゃあ全員を三手に分けて、ダンジョンを制覇しようか。それぞれ100人ずつぐらいかな……」
そう殿下が言ったそのときであった。
誰かが叫ぶ。
「ひいー! ゾンビだー! ゾンビが町に攻めてきたぁー!」
なんだって!
「まさか魔術師が、ここまで追っ手を差し向けて……?」
「なぜやつはそこまでして殿下を狙っているのでしょうか……」
共に落ち延びてきた王国騎 士団長(名前が王国騎士団長であることに加えて、威厳のある見た目のため、よく騎士団長と誤解されるがヒラ騎士)(原文ママ)がうめく。
殿下の脳裏に、焼け落ちてゆく王城の光景がフラッシュバックする。
もうあんな悲劇はまっぴらだ!
そうだ、自分たちを受け入れてくれたこの町を見捨てるわけにはいかない。
「よし、ゾンビを迎え撃つよ! その間に、30人ずつぐらいをランダムで振り分けるから、ダンジョンを攻略してきてくれ!」
『了解!』
こうして、魔術師を倒すための重要なアイテムを取りに行くための、栄誉ある90人が選ばれることになった。
ダンジョンといっても情報がなにもないので、完全ランダムの選出だ!
旅立っていった90人(人じゃないのも含まれているが)を見送り、残った223人はそれぞれ町から打って出た。
町に被害を出すためにはいかない。それぞれの武器(もちろん武器じゃないものばかりだが!)を手に、ゾンビの大群へと向かっていく。
あのときはただ逃げることしかできなかったけれど、今はもう違う。
なぜなら集められたこのメンバーは、王国をこの手に取り戻すために自ら集まった義勇軍なのだから。
士気が違う。意志が違う。決意が違う。覚悟が違う。
なによりも、勇気が違う──。
彼らは死ぬその瞬間まで、平和を勝ち取ることを夢見、前のめりに倒れてゆくだろう。
それはきっと、流星のような生き方だけれど、見上げる誰かの心を照らす星の輝きなのだ。
というわけで、ダンジョンに向かった90人を除いた残り223人での判定である──。
※判定方法
0から11までの12面ダイスを振る。
0は確定成功、11は確定失敗として、判定に使ったステータス以下の数字が出れば成功である。
例えば判定に体力を使う場合、体力4のキャラは、12面ダイスのうち、0,1,2,3,4のいずれかがでなければならない、という風だ。
今回、ゾンビを相手にする223人は、それぞれが無双的な活躍をするだろう。まるで逃げるしかできなかった2016年の仕返しとばかりに。
しかし、それでも運悪く致命傷を負ってしまったものがいる。
それは、12面ダイスを振って最大の数字、すなわちファンブルを出してしまった者たちだ。
町の住人を守るために散ったその22人の立派な死に様を、ここに描くとしよう──。
ゾンビは動きが遅いもののタフで力が強く、また大量にいるので周囲を囲まれると危険な相手だ。組み付かれずに遠距離から攻撃できる魔法使いが有利に戦えるだろう。
「ひっ!」
しかし、彼女は捕まってしまった。怠惰は王妃だ。どこの王妃かは知らないが、とにかく王妃だ。贅の限りを尽くしたその姿は贅の限りが尽くされていてとにかく贅だ。とにかく札束でゾンビの頬をぶっ叩いたが、ゾンビに禁欲はない。あるのは食への欲求だけだ。がぶぅ! 贅を尽くした怠惰はきっと美味しかっただろう。
ひとり目の犠牲者が出る頃には辺りは乱戦の様相を呈してきた。こうなるとゾンビは強い。
草履取りのカリオスは諦めない心の持ち主だ。ゾンビ12体に組み付かれながらも諦めなかった。その姿は絵にも書けない見苦しさだったけれど、懸命に生に手を伸ばすカリオスを誰が笑えるというのか。カリオスは噛まれて死んだ。
一般市民のミエルの武器は逃げ足だ。モブっぽい彼は「町なんて捨てて逃げんだよぉ!」とどこまでも逃げていった。逃げた先で、モンスターに出会いその一生を終えた。
NINJAの焼肉太郎は両手に炭酸ジュース(缶)を握りしめ、赤いジャージをまとい、奮闘した。しかし炭酸ジュースの角で殴る程度の攻撃で、ゾンビは倒れなかった。NINJAならもう少しいい装備はなかったのか。
味噌煮込みエビ定食は……って味噌煮込みエビ定食ぅー!? 1話で使ったキャラがこんなに早く死ぬなんて! どんな運のなさだよ! 予約客がドタキャンして、売れ残った上にオーナーや上司、同僚から強制的に買い取らされた大量の料理を武器にゾンビに立ち向かった彼は、円形脱毛症の部分を的確に噛みちぎられて死んだ。でも彼は人を守るために死んだんだ!
モンブラン・チーズケーキは職業オウムの下僕だ。タイハクオウムが常に肩の上にいて、極めてみすぼらしくやせ細っているおっさんだ。オウムにすべてを捧げているらしい。彼はオウムをかばってゾンビに噛まれて死んだ。その生命すらも最期に彼はタイハクオウムに捧げ、オウムを救ったのだ──。
さつまあげ丸はウェイター、馬番、家庭教師、etc...だ。色んな仕事をやっているらしいが、そういうのは逆に個性がなくなるので、どうかと思うのだ。武器は刀、脇差、短刀で一同の中ではすごくまともだが、ちょんまげ。はかま。ザ・サムライ。ござる。の外見らしい。キャラがとっちらかってよくわからない! 和風キャラならウェイターいらなかっただろ! 死んだ。
ぎんは調教師だ。ロリの女の子だが、その武器はなんと首輪を着けたおっさんらしい。おっさんはぎんを守るために奮闘したものの、ゾンビに噛まれて早々に命を落とし、その後ぎんを守るものはなにもいなかった。しかし彼女は手近なゾンビを捕まえると瞬く間に調教し戦わせ──その繰り返しで、28体のゾンビを調教したところで力尽き、ゾンビの津波に飲み込まれてしまった。
町の前に広がる平原での戦いは、まだまだ始まったばかりだ──。
迷いの森メンバー
(敬称略)
はにぃ
あかとな
永久機関
れい
から
ルーティリア
アームストロング
まぎしゅー
肉堤 万太郎
永瀬-ⅱ
ベン・トゥーヤ
アシトリくん
メメ太
伊切 実来火
ミーーナ
ミミ・シエスタ
加賀野 充
シューティッシュ
花粉 症之助
ダラシン
マスクドツーダⅦ世
【鮫嵐】の魔法使い
アプテノディテス一世
ジャンキー・チェン
イレーナ
トランプ大統領
えりー号
トカラゲ・ジッパーヒ
ガッルス・ガッルス・ドメスティクス
わんこ
古代の塔メンバー
(敬称略)
41号
サニー
マダム ターボ
ゆかちょ
姫子
ミ・ソ
よさぬかベイマックス!
市庭 団子
黒曜
佐波
関〇太
もんめ
しかばね
イヴ
グン太
みぐ
玲
リョウゴ
カレン・パーツェン
ヤマモト
マリー
なのかもたない
シャーリー
ラヴィニア・ウィリアムス
さっちん
てれんちゃん
ヤクルト
ベリー・キッシュ
加茂なすの
ウラジーミル・レーニン
地下迷宮メンバー
(敬称略)
ぺぺ
バード
シュン
ヘゾ爺
モルモットくん
鯉
アマリリス
観賞用サボテン
黎神 麗音
みずうめ
のくにつき
冒険の書が消えた音
水戸納豆
B-サイク
ハム・THE☆スター
春哉
転移 まきこ
王国騎 士団長
リリィ
クジラ
くろそ
夢幻聖眼
ほーぼぼ
チッボリク・マイトシー
ラミエル
まい
ジェイムズ・キューゾ
幸薄レティシア
冒険の書が爆発しました
頭良 不知




