18オブザデッド
五人目と六人目の四天王は、先ほどの四天王よりさらに強い魔力を秘めているようだ。
焼肉の伝道師の魔術師は、ペンギンの被り物をした杖を振るう。これは相手に10連ガチャを回させ、ハズレが出ると敵をまとめて焼き肉にし物理的に爆死させる、という能力だ。超低確率の当たりをひかれると自分が爆死するというデメリットはあるけれど、あまりにも強力である。
それを浴びてしまった左慈は「いやだー引きたくないー、これは福袋で回す聖晶石なんだー!」と首を振りながらガチャを回した。
「あ、星5のエレちゃん二枚出たわ」
「ぼあああああああああああああああ!」
焼肉の伝道師の魔術師は爆死した。
残る四天王は、あとひとり──!
同僚の爆死も特に気にせず、switch買った魔術師は青と赤、二本のグリップサイズの杖を操り、魔法を唱える。
「お前たちの足掻きは見事だった。だが、ここで終わりだ」
無数のファイアーボールが王国軍に放たれる。
先ほどいいところを見せたモブはそのまま火に焼かれたし、バイト戦士
の拳 滝沢もまた、逃げ場がなく焼死した。ただ、彼はバイト用のユニフォームを身に付けているクリボッチの青年とあるが、クリボッチではなかったのだ。だってわたしがこうして更新しているから、一緒、だよ!
ディッモールト可愛い雪雪雪は、狂信者見習い(ようじょ教)だ。「ようじょを、ようじょをあがめなさい!」と必死に説得するも、効果はない。聖典ごと燃やされてしまった。
ここにひとり、クリストファー・ネイビスというヒステリックなBBAがいる。実はわたしが参加メンバー表を作りながら「ああこの人はこういう場面で使おう」と役割を決めていたうちのひとりなのだが、なんやかんやあって今まで出番がなかった。ぶっちゃけ忘れていた。Excelシートに青線で記入までしていたのに、だ。去年に続いて謝りたい。ごめんね。
伝説の勇者の家の隣に住んでいる夫婦の姪をいびる係のクリストファー・ネイビスは、switch買った魔術師のファイアーボールによって骨まできっかり焦がされた。悪いやつほどよく燃えるね。
神父(似非)のなるは、坊主に袈裟を身に着けている。そりゃ神父じゃないよね! っていう感じのあれだ。これぐらいやんわりとしたボケだと突っ込む側も気楽でいいと思う。しかし彼が唱えた念仏は自らへの手向けとなった。今度はノドに深々と投げつけられた帽子が突き刺さった。
帽子は回転しながらswitch買った魔術師の手元に戻る。遠距離ではファイアーボール。近距離では帽子と、隙のない装備だ。
自慢の脚力を生かし、それでもあえての接近戦を挑むのはサーバルちゃんだ。狩りごっこで鍛えたそのツメを振るい、魔術師に上から攻撃を仕掛けた。しかし、switch買った魔術師は機敏な動きでそれを避けると、掌底をサーバルちゃんの腹に打ち込んだ。血を吐いて絶命するサーバルちゃん。まさか接近戦までできるのか。
先ほどガチャに買った左慈は運に全振りしたキャラだからこそ、殴り合いにはめっぽう弱い。職業が中の人ってなんだよ! 知らないよ! 殴られ、アメリカバイソンの着ぐるみごと内部が爆散した。
本人は風魔小太郎だと言い張るが本名はゴルドー・アイスバーグは、本人は忍者だと言い張るがどう見ても大工のオッサンだ。本人は手裏剣だと言い張るがどう見ても四角錐の底面積20cm四方の鉄塊で殴るらしい。本人が「俺さ、俺さ!」と言い張っている間に燃やされて死んだ。
いずれ骸骨はおっぱいのついたイケメンという職業らしい。一度でいいからみんなには『職業』という言葉を辞書で引いてから参加してほしかった。丸太を振り回してswitch買った魔術師を寄せ付けないようにしていたが、丸太は燃えるのでファイアーボールで本体ごと燃やされた。
防戦一方の展開のようにも見える。だが、皆は最後の四天王のスピードに目が慣れつつあった。
幽霊のQ次郎は半透明でさっきまで宙に浮いていたのだが、神父(似非)のなるが唱えた念仏の余波で成仏していた。来世では幸せになってほしい。
ねこのノラと食肉牛の米沢牛男は、ここまでずっと一緒に歩んできた歴戦の動物だ。どうやって3ミリの通路を渡ってきたんだろう……。わからないけれど、彼らは初めて魔術師に一撃を加えることができた。魔術師は米沢牛男をこんがりとウェルダムにした後、ねこを殺したので、魔術師の好感度が今すごい下がった。人を殺してもねこを殺すのはまずいのだ。
あと12人!!!
飛脚の門次郎と、死に急ぎ野郎のエレン・の家ぇぇがああが立体機動的な俊敏さで魔術師をかく乱する。炎を放つがなかなか当たらない魔術師がじれて接近戦を仕掛ける。十分に魔力の込められたパンチとキックでその命ははじけ飛んだが、ここにきて魔術師に初めて明確な隙が生まれた。
スーパーサンタ人のサンタ(名前はまだない)が魔術師の顔面に拳を叩き込む。連携攻撃が始まる。
ウェイトレス(パワータイプ)のマオがその7ある腕力でさらに魔術師の腹に拳をめり込ませた。
パワードスーツを身につけたハングリー・ラビットが魔術師の足を掴んでジャイアントスウィングで次の人に投げつける。
雅楽川美鶴は幽波紋 スパイスガールを武器に、オラオラオラオラオラと拳打を叩き込み、魔術師を打ち上げた。
遊び人のなながスリングショットで空中の魔術師に爆弾を放つ。宿屋の娘、キナコが散弾銃で追い打ちを仕掛け、臭い物研究者の一十一は端っこでシュールストレミングの缶を開けてみんなから嫌がられる。マッド・コーモンは使いにくいのでなんかすごい変なことをしている。
女騎士(くっころ騎士団団員)のスミレは空中に飛び上がり、そのはがねの剣で魔術師を一刀両断に斬り裂く。しかし浅い。
そこで探偵、水野一時が叫ぶ。「よすんだアイ、それだけは!」
JK小説家のアイは微笑んでいた。「みなさん、わたしと一緒にいてくれて、仲間だと言ってくれて、本当にありがとう──」
普通のポニーテールJKだった彼女は、胸元のボタンを押す。キュィィィィィンと光が集まり、彼女は魔術師ごと自爆した。
ああ……と一同が声を漏らす。その光は恐らく、遠く離れた本隊にも届いていただろう。命が放つ一瞬のきらめきだ。
だが、switch買った魔術師はボロボロになりながら、手足も吹っ飛んだような姿で立っていた。その眼下にはもう光がない。
「なるほど、やるな……。我らが主にもお前たちならば、もしかしたら届くやもしれん」
だが。
「命令は遂行する」
魔術師の全身が赤く光る。これは、まさか──。
「■■■に栄光あれ」
switch買った魔術師はその場に残った一同を巻き込み、爆裂した。彼自身が爆弾ゾンビと同じ機構を擁していたのだ。
死に損ないとは言え、四天王の放つの魔力は今までの比ではない。
遊撃隊はこうして全滅し──だが、彼らは立派に役目を果たしたのだろう。
四天王を四人も打ち倒したのだから。
本隊は城下を駆け抜け、王城へと至る。
悪の魔術師への道のりは、あと少しまで迫っていた。