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13オブザデッド


 魔王は破れた。もふもふを武器にした巫師のきつねが、ฅ^•ω•^ฅ的なアレで撲殺したのだ。しかしきつねもまた、魔剣によって胸を刺し貫かれていた。壮絶な死闘の末の相打ちだった。


 魔王を倒すんだから勇者の出番では……とわたしの脳裏によぎらなかったわけではないが、そういうバトルシーンを書くのはこの人数をさばいている中では無理だということがよくわかった。来年は反省を活かしてもっとうまくやりたいです。


 魔王は倒したものの、今度はその遺体に封じ込められていた闇のオーラが吹き出し、形どった。この宇宙を滅ぼすために現れた邪神である。


「これは本当は魔王はいいやつで、その体に邪神を封じ込めていたパターンだ!」


 殿下がわけのわからないことを口走り、炭焼き職人のすみーが「なるほどぉ」と普通にうなずいた。


「ここで邪神を放置していたら、世界どころか宇宙が滅ぶ! 今倒さなくては!」


 そういうことになった。



 編集者のハッケンは、王国が誇る最大手出版ギルド『KAD○KAWA』の制服姿をした人だ。出版ギルドと書いてあるところが、最低限世界観を守ろうとしていて好感をもてる。シメキリソードを武器に、邪神の尾を斬り裂く活躍を見せたが、締切を守らない作家によって憤死した。


 ミセス・十字はサンタの奥さんだ。夫であるサンタを嫉妬の炎で殺せる美女であり、両手にトンプソンM1921(マシンガン)(弾無限)を持っている。マシンガンの弾丸は邪神の腸を破壊し尽くしたが、彼女はサンタ(名前はまだない)が狙われたのをかばうために身を挺して死んだ。ちなみに今回、サンタ関係の人物はふたりいたが、もうふたりの奥さんということにしよう。重婚だ。


 うすしおは町娘だがナタと猟銃をもっているので……というか今回、ナタ使い多くない? ナタポピュラーすぎない? まあそんなこんなで逃走した邪神を星の彼方まで追い詰めて足を切り落とした。が、邪神が召喚した邪神軍団の手によって滅ぼされたのだ。


 聖夜に何かを遂げる棘田清棘は古武術を習ってる平凡な異世界転生主人公で、クッソ長い外見説明文を書いてくれた。書いてくれた以上、貼ってあげたい気持ちはすごくあるんだけど「原文ママ枠は貰ったぜ」とか書かれているので、思い通りになるのは悔しいのだ。あとでみんな活動報告を見て、その努力を見に行ってあげてほしい。邪神と相打ちになって死んだ。


 飛散してゆく邪神。こうして殿下たち王国軍は宇宙を救った。けれど別にそれは物語はまったく関係のないただの寄り道なので、彼らはアンデッド軍団を倒すためにこれからも戦うだろう!


 おしまい!


 って言えたらどれだけ楽だろうか。わたしの戦いはまだ折り返し地点を通過しただけなのだ……。だいたい25日って平日だからほとんどの人がリアルタイムで追ってくれないだろうし……。でもがんばるよ、みんなの笑顔のために……。


 それはともかく、ようやく洞窟の入口にまでやってきた。


「ここを通らなければ王国にたどり着けないんですか?」

「いや、そういうことではまったくないんだけど」


 闇金の後方係、ブリュンの言葉に殿下は首を横に振る。


「でも、もしものときはここを通れって亡き陛下が言ってたんだ。危険がいっぱいだけど、ここを通ったほうが17秒は早く王国に到着するショートカットだから、って」

「なるほど」


 一同は全員一人残らず納得した。17秒も早くつくなら、まず間違いなくこの洞窟を通るだろう。


「中はぐねぐねして、ワープゾーンだらけで、一歩道を間違えると永遠に元の場所には戻れないぐらい難解だけれど、でも17秒ショートカットするためにがんばろう」

『おー!』


 王国軍はこうして、洞窟に足を踏み入れる。ぽっかりと空いた穴はまるで一同を深淵に誘っているかのようだった。



「さて、油断はしないようにね、みんな!」


 そう声をかけるや否や、前方には横幅が3ミリしかない道が広がっていた。まるで綱渡りのように慎重に歩いてゆく。


「足は滑らせないようにね!」


 早速滑らせた。羊飼いのトーヤマは大きい石のゴーレムだ。もうだいたい古代の塔で現れたゴーレムのそのものみたな外見をしている。あまり狭い道を歩く適性がなかったようで、足を滑らせて深淵に落ちていった。最期は派手に爆発四散したいとのコメントが有ったので、深淵の底で大爆発を引き起こし、深淵を破壊し尽くした。


 続く道は一定時間ごとにマグマが吹き出してくる壁だ。タイミングを見計らって歩かなければならない。錬金術師のエクリチェアーナは「あっ」と悲鳴をあげた。持っていたニトログリセリンを落としてしまったのだ。その爆発により吹き出したマグマを浴びて骨になって溶けてしまった。ぐるぐるメガネだけが足元にぽつんと落ちていた。


 困難な道中はまだ続く。


「このワープゾーンは入ると1%の確率でどこか不思議な空間に連れて行かれるんだけど、でもまあ1%なんてめったに起こらないからね」


 殿下が悠然と歩いて行くのを、後ろからついていく王国軍。


 給仕の塩がワープゾーンに足を踏み入れる。わずかな時間のあと景色が切り替わった。その者はあたりを見回す。「ここは?」 もはや色のない世界、音のない世界。不思議な空間はわたしたちが住む世界とはまったく違う法則に支配された世界だ。塩はその世界に適応してこれからも生きていくだろう。しかし二度と王国オブザデッド世界には戻れなかった。


 だが、それはある意味では、幸せなことなのかもしれない。この後に待ち受ける理不尽な死に比べれば──。



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