12オブザデッド
チホウの町を救った殿下たちは、町長にたくさん労われていた。
「いやあ殿下たちがいなければ、この町は今頃アンデッド軍団の手に落ちていたところでしょう! 本当に、本当にありがとうございますじゃ!」
「いえ……町民を守ることができて、彼らも本望だったと思います」
迷いの森、古代の塔、地下迷宮に進んだチームから、それぞれの報告を受けていた殿下は、暗い顔でうなずく。
なんせ旅に出た90人のうち、戻ってこれたのはたったの7人だ。
秘宝は3つとも入手できたが、そのうちのひとつは町のために使ってしまった。
あまり祝い事をしているような気分ではなかったが、けれどだからこそ今は救った人のために喜ばなければならないのかもしれない。
自分たちがなんのために戦っているのか。
過去ではなく、これからのために未来のために戦っているのだと知るために──。
「よし、それじゃあ宴を開いて……一時間後に出発しよう!」
『おー!』
王国軍が拳を突き上げる。
今度は誰ひとり死者の出ない、優しいご飯の時間だった。
「さ、出発しよう!」
207人の腹も満たしたので、一同は王国に向かって歩き出す。これからいよいよ王国の攻略へと動いてゆくわけだが。
しかし忘れてはならないことがある。この世界はファンタジーなので、電車に乗って王国に到着だとか、声優のライブチケットを買って王国に行くということはできない。
そう、道中にも危険がいっぱいあるのだ。例えばモンスターに遭遇したり、とかだ!
ゴブリンが急に投石を放ってきて、当たりどころの悪かった無職の名無しが頭に石を食らって横に倒れた。
「うう、靄がかかったように印象に残らず、目を離した瞬間に顔立ちなどが思い出せなくなるだろう……」
その言葉はまるで予言のようで、周囲の者たちも「そういえば名無しっていたっけ?」っていう気分になった。ゴブリンは退治された。
さらに襲いかかるのは、野犬の群れだ。
200人オーバーの軍隊に襲い掛かってくるとか、なかなか根性のあるやつらである。
人生の迷子になっているぬ子(猫耳カチューシャを着けた黒ずくめの少女)は、鉈を振り回して野犬の頭を大切断したりしていたのだが、しかし全身を噛み噛みされて命を失った。猫と犬は仲が悪いのだ。
他にも川辺を歩いていると、突然クラーケンが現れて、何人かをさらっていったりした。
ゆるふわ愛されガール。目指せ玉の輿!のメイドあかりは、玉の輿は無理だったがクラーケンに熱烈に愛され、その触手で締め上げられて「うう、モップすら重くてもてないわたしに脱出はむーりぃー」と殺された。
もう一方の腕には、どっぷりはまりこんだ全てのルートにつながる選択肢と攻略対象のプロフィールにセリフを一字一句違わずに覚えている乙女ゲー系世界観に転生し現代的価値観により紅い目や呪い子に孤児などの暗い過去持ちのイケメンを口説き落とし逆ハーを完成させヒロインをざまあする予定で現代知識によって中世ヨーロッパ世界の農業改革や転生チートをしようとする庶民として暮らしてきたが実は優しく親バカな両親がいる貴族の令嬢だと信じている平民のパン屋の看板娘の夜雨が捕まってしまった。どっ(略)いる平民のパン屋の看板娘もまた、抵抗むなしく殺される。クラーケンに関しては宿屋の娘キナコが眉間を散弾銃で撃ち抜いて倒した。
さらに山岳地帯に差し掛かると、空からあらゆる竜の王にして、竜を統べる闇の大帝デスバハムートが舞い降りてきて、一同はピンチになった。
幸いにも、青いツナギの同性愛者っぽい空気を出すナイスGAYの破戒僧aveさんの命を賭けた活躍だったり、あるいはバトルメイドのルノーが必死に応戦してくれたおかげで、デスバハムートはその退治することができた。
「うう、殿下、どうぞお達者で……」と言い残し、ルノーは逝ってしまった。aveさんも後を追うようにして亡くなった。尊い犠牲だった。
その後もデスバハムートは次から次へとハトのように大量に現れ、そのたびに死者が出てしまった。
襲われた亡命貴族のユーズ=ペッパーは最期まで「どうして自分が亡命している間に、こんな王国の危機なんかが起きるんだ……」とうめいていたけれど、その危機に対して国を救うという決断ができたのはなかなかのもんだとわたしは思うぜ。
八百屋の顔だけは良い男、翠は武器である茄子を投げつけることでデスバハムートを三匹まで退治することができたが、投げる茄子がなくなってブレスを浴びて死んだ。あとには美味しい焼き茄子が残った。
魔法使いのゆうは、百合を模した杖を振って多くのデスバハムートを
「ああ尊い……」と尊死させたものの、魔力の使い過ぎで命を落とした。来世は観葉植物か猫になりたいらしいので、来世はナウマンゾウになりました。
デスバハムートの群れはなんとかできた一同だが、その後に現れた世界を統べる魔王には多少なりとも苦戦した。
「なぜわたしたちを邪魔するの!?」
「そこにいたから」
適当な言葉で魔王は襲い掛かってきた。最終決戦っぽいBGMが辺りに流れる。
透明人間の巳江内 透命は見えないらしいので魔王の放った魔法に巻き込まれて死んでしまった。最期まで自己主張が激しかったけれど見えないのでわからなかった。
侍のナマ・コタロウは固くすれば釘も打てるナマコを手に魔王をあと一歩というところまで追い詰めたが、しかし決死の反撃を食らってお亡くなりになった。
めっちゃ硬い甲羅をもち、高速回転装置を備えたペットである緑亀は、外見に「ただの亀」とあるが、その噛みつき攻撃は魔王の右腕を食らい尽くす。もう少し大きければ魔王も倒せていたかもしれない。踏み潰されて死んだ。
もう一話15人ペースで殺していかないと間に合わないのに、これだけやってもまだ12人しか殺せてない!!!!
一時間更新だとせいぜい10人ずつ殺していくぐらいしかできない(時間と執筆スピードの兼ね合いとして物理的に限界だ!)ので、来年からは人数が増えたらもっとひとりひとりを雑に殺していかないと……とわたしは決意を固めた。いったいなんのことかはわからないが。
魔王との戦いは、8時の回に続く!