表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

10オブザデッド


 地下迷宮の四天王、深き地の底の魔術師との戦いは、激しく続いていた。


 深き地の底の魔術師が杖を振りかざすと、一定の場所に木を生やすことができる。そこに存在しているキャラは無条件で絶命だ。凄まじい即死能力の使い手だった。


 しかし、殿下の招集に応えて現れた勇士たちもまた、一筋縄ではいかなかった。


 残るメンバーは11名。ぺぺ、ヘゾ爺、モルモットくん、アマリリス、みずうめ、B-サイク、春哉、リリィ、クジラ、くろそ、ほーぼぼだ。


 魔法戦士であるほーぼぼが前線に立ち、毒舌の後輩の春哉と、言動が武器のB-サイクが遠距離攻撃を仕掛ける。


 メインアタッカーは、炎や光属性の魔法が得意な魔法使い、アマリリスと、その助手のモルモットくん。魔法使いのくろそと、呪術士のリリィだ。


 ヒーラーであるみずうめが駆け回って傷ついた仲間を癒やし、古美術販売員のぺぺは熱心に古美術を勧めることで、深き地の底の魔術師の集中力を効果的に奪っていた。


「ふん、邪魔者共が……!」


 四天王が横薙ぎに杖を振るう。その直後、地面から現れた紙袋をかぶったゾンビたちが一斉に一同に襲いかかった。


「あらァ、抱きついてこようっていうのぉ? ダイタァン」


 オネェの司書、クジラが可動式はしごに登って華麗にゾンビを避ける。だが、避けたはずのゾンビははしごに抱きつき、そしてクジラを見上げて──爆発した!


「爆発ゾンビですか!?」


 みずうめが叫ぶ。クジラは爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた。いくらなんでも死んだ人間を生き返らせることはできない。


 深き地の底の魔術師は次々と紙袋をかぶった爆発ゾンビを生み出している。これはなんとしてでも四天王を先に倒さなければならない。


 これはもう、犠牲なくては倒せない相手だ。


 一同は一瞬のうちに、アイコンタクトを完了した。


 誰だって死にたくはない。けれど、時には命を賭けてでもやり遂げなければならないこともある。


 それが──今だ。


 どっちみち逃げようとしたところで、四天王は自分たちを生かして返す気はあるまい。


 かくして、一同はダイスを振った。


 四天王を倒すためには、すべての能力値を使う必要がある。すべての能力値を下回った人だけが、四天王を倒すチャンスを得るだろう──。


 それは今回、ただひとり──。



「しまっ」


 最初に狙われたのはやはりヒーラーのみずうめだった。彼女はゾンビの爆発に巻き込まれたクジラに気を取られている間に、ゾンビに捕まってしまった。最後に目を閉じる。どうか殿下、平和な世界を──。


「このお!!」


 怒りに焦がれ、くろそが金属バットを掲げながら突っ込む。その周囲には炎の呪文が渦巻いている。アマリリス、モルモットくんとの協力魔法だ。ゾンビは近づくこともできず爆砕されてゆく。


 が、山田まるのもうひとつの魔法──木を出現させる魔法には為す術がなかった。全身を枝に貫かれて死亡する。同じように、魔法に集中していたアマリリスと、モルモットくんもだ。


「ええい、もう、あんたなんか死んじゃえ!」


 呪術士のリリィは大凶のおみくじ棒を振るいながら深き地の底の魔術師に呪いを浴びせるが、しかし■■■が■■させた■■■■■である深き地の底の魔術師に呪いは通用しなかった。動きを止めている間に、木に押しつぶされる。


「手ぬるい」

「──かどうかは、試してみなさい」


 いつの間にか近くにいたぺぺが、白椿のかんざしを深き地の底の魔術師の手の甲に突き刺す。思わず杖を取り落とした深き地の底の魔術師は、驚愕の表情。


「くっ、キサマ」


 直接魔力を叩き込まれ、ぺぺは爆裂した。血しぶきが辺りに降り注ぐ。


「バーカバーカ!」

「へっ、アンタなんてかんざしに刺されるのがお似合いだわ!」


 毒舌を武器にしたB-サイクと春哉は広間の反対側から叫んでいる。爆裂ゾンビを向かわせる深き地の底の魔術師。その判断は的確だったが、しかし、代わりに四天王の周囲ががら空きとなった。


「ここで、トドメだ!」


 やってきたのは魔法戦士、ほーぼぼ。封印されし左目が輝く。だが、ほーぼぼはただの幸運で生き残ってこれたのを自分の実力と勘違いしてるイタい人。常に左目に眼帯をしている。かっこつけ。であるため、絶好のチャンスをものにすることができなかった。落ちていた鋸を拾って深き地の底の魔術師の左足を断ち切ったものの、魔力を叩き込まれ、爆散する。


 B-サイクと春哉もまた、大爆発に巻き込まれ、砕け散った。


「侮れない相手だったな……。有象無象の集まりにしか思えぬながら、手強い者たちだった」


 顔を上げた深き地の底の魔術師の目の前には、庭師のヘゾ爺がいた。


「な──」

「木を刈るのは、儂の仕事じゃ」


 高枝のこぎり・千吉が閃く。


 木の魔法使いに対し、特攻ダメージが入り──深き地の底の魔術師の首が飛んだ。


「余計なものは、刈り取ってしまわんとの」


 深いシワの刻まれたその顔には、悲しみが浮かんでいた。


 そう、爺ひとりだけが生き残ったことが、今はなによりも悲しかった。



 四天王の体はぐずぐずに崩れ、大地に溶けてゆく。そして、地面から光があふれてきた。


 秘宝の出現だ。恐らく四天王が闇の力で秘宝を封印していたのだろう。

 

 これが、古代の塔を攻略して手に入る秘宝──イージスの盾。



 生き残ったヘゾ爺はイージスの盾を抱え、帰路へとつく。


 こうして、3つの秘宝が揃った。いよいよ、謎の魔術師との戦いの準備が整ったのだ──。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ