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006 大体定番どころのファンタジーラノベの設定通りだったなぁ

 まずボクはこの世界のことを知ることから始めることにした。

 迷いの大森林を復興させる時だってまずはじめに行ったのは情報収集。

 情報があるのとないのとでは大違いなのは明白だ。


 今回だって最初にもっと適切な対処を行っていれば家畜が減ることを防げたはずだ。

 ボクはダンジョンについては膨大な知識を持っている。

 だがこの世界についてはほとんど知らないに等しい。

 捕らえている家畜だって生前の世界の人間と同じものであるとは限らない。

 見た目は完全に人間なんだけどね。

 他にもボクのように一部獣の特徴を残しているものもいる。

 この世界はファンタジー溢れる世界のようだし、恐らく他にも色んな種類の人間がいるのだろう。

 その中にはきっとMPをたくさん保有している者もいるはず。


 この世界の情報を知り、今後のMP確保のために役立てる。

 全てはボクの快適な生活のために。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 完全に拘束された家畜一号にはMPの他にもボクの情報収集に協力してもらうことにしよう。

 ダンジョンマスターになった瞬間に脳に焼き付けられた膨大な情報の中には、この世界の言葉や文字なども当然のようにあったので彼との意思疎通は可能だ。

 問題は精神が壊れていた場合だけど、そのときは家畜二号に協力してもらうことになる。

 でもその心配は杞憂だったようだ。


 家畜一号は最初は言うことを聞かなかったけど、粘り強く説得した結果喜んで協力してくれるようになりました。

 主にグレ君の同僚のメイドさん――アルダーデーモンのモンちゃんのおかげで。

 彼女は精神に負荷をかけるスキルをもっているらしく、適度にそのスキルを家畜一号に使ってもらったのだ。

 ただ、負荷をかけすぎると廃人になっちゃうようで、モンちゃんにはかなり負担をかけたようだけど。


 家畜一号は冒険者と呼ばれる職業についているそうだ。

 冒険者は所謂何でも屋で、庶民から貴族まで様々な依頼が舞い込む〝ギルド〟と呼ばれるところから依頼を仲介してもらっているらしい。

 彼はそんな冒険者の中でも中堅どころ。

 そんなベテランの家畜一号だけど、迷いの大森林では外層を少し超えたあたりまでしか行かないらしい。

 それ以上は魔物が強すぎて進めないそうだ。

 一番死亡率が高いのがそのあたりなので確かに彼はベテランなのだろうね。

 危険を見極め、うまく立ち回り稼いでいたそうだし。


 冒険者は吐いて捨てるほどいるらしいけど、その分死亡率も断トツに高い職業だそうな。

 一握りの才能あるものしか上にはいけず、ほとんどの冒険者が中堅どころにも届かず終わるらしい。

 そんな厳しい冒険者業界で中堅どころに長く居座っていた彼はなかなかのやり手なのだろう。

 まぁ中堅止まりといえばそれまでだけど。


 森の奥に足を踏み入れている侵入者たちがまさにその一人握りの才能をもった冒険者なのだろう。

 確かに彼らはすごく強い。

 何度も強い魔物たちを退けているし、ちゃんと生き残って貴重な森の恵を持ち帰っている。

 ただ、奥に入りすぎた侵入者は尽く死んでいるけどね。

 中心部にまでやってこれた侵入者は前ダンジョンマスターの頃から数えても誰ひとりとしていない。

 使徒たちによる大攻勢ですら中心部に辿りつくことはできなかったんだから、当然だとは思うけどね。


 その冒険者な家畜一号がいうにはこの迷いの大森林は危険な場所だが、外層だけをみれば非常に魅力あふれる場所として有名らしい。

 まぁ確かに毎日千人規模で侵入者がいたくらいだしね。

 ここで得られる森の恵は周辺の村や街には欠かせないくらいで、食料庫とも言われるくらいだったらしい。


 いくら広大だとはいえ、普通なら千人規模で毎日森の恵を収穫していれば早々に枯渇する。

 だが迷いの大森林は違った。収穫しても次の日にはまた新しい森の恵が採れるのだ。

 畑で麦をチマチマ作っているよりも森に入った方がよっぽど儲かるらしい。

 もちろん外層とはいえ、命の危険はある。だがそれでも多くの侵入者が訪れる。それが迷いの大森林。


 ……知ってたけど、改めて他人の口から聞くとすごいダンジョンだよね。


 他にもこういう場所があるのかと聞いてみると、彼は聞いたことが無いらしい。

 ただ迷宮都市と呼ばれる場所はあるみたいで、大量の魔物の素材や特産品で成り立っているところらしい。

 うちみたいな食料庫ではないけれど、たくさんの魔物がおり、頻繁に宝も見つかるために冒険者以外にも腕に覚えのある人間が集い、大きな都市となったらしい。

 ファンタジーの定番だよね。


 たまに家畜一号に奥地で採れる貴重な森の恵を食べさせてあげたりして、飴をあげつつ情報収集を続けていく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「大体定番どころのファンタジーラノベの設定通りだったなぁ」


 いつもの執務室で机に突っ伏しながらぼやいてみる。

 傍にはグレ君の他にも今回の家畜一号の件で優秀な結果を残したモンちゃんもいる。

 モンちゃんは元々この屋敷の一メイドだったけど、ボク専属のメイドに格上げしてみた。

 お給料は元々払っていないので待遇面で何か変わるわけではないけど、どうやらボク専属になったことで他の魔物たちから一目置かれる存在になったみたいだ。


 ボクに対する他の魔物の態度は絶対者へのソレだ。だけど、魔物たち同士では大体強さで上下が決まるみたい。


 でもこの屋敷で働く魔物や、ボクの専属は違うらしい。

 グレ君は元々ダンジョンマスター専属だったみたいなので変わってないけど、モンちゃんは一メイドから専属になったので特に顕著だった。

 初めて会ったのは家畜一号へ情報収集をしにいったときにだったけど、その時に着ていたメイド服と今のメイド服は明らかに品質が違うし、他の魔物たちの態度も完全に上位者へのものとなっている。


 あ、服といえばボクもぶかぶかの服はもう着ていません。

 初日が終わる頃にはもうボク専用の服が何着か出来ていて、日を追う毎に服は増えていってます。

 何やらグレ君が作らせているみたい。

 今ではどれを着るか迷っちゃうくらいには種類が豊富になっている。

 服に関してはこの世界も割り技術が進んでいるらしく、わざわざMPを消費して購入する必要はないだろう。


 グレ君は本当に優秀だよね。助かっちゃうよ。


 家畜一号からの情報収集で得られたものはかなり多い。

 彼はベテランだっただけにいろんなことをよく知っていた。

 そんな彼からの今日一番の収穫は〝奴隷〟に関することだろう。


 この世界のどの国でも大抵は奴隷制度が敷かれている。

 しかもスキルにより、精神を縛っているため反逆など一切できない代物だ。

 てっきり隷属の首輪とかそういうやばいアイテムがあるのかと思ったけれど、あるにはあるが古代の超強力なものしかなく、早々おめにかかれるものではないらしい。


 さてなぜ奴隷の情報が一番の収穫かといえば、魔力吸収の指輪は支配権をもたないものにはMP吸収の際に抵抗されるという制限があるからだ。

 そう、スキルで精神を縛る――奴隷契約ならば支配権を得られるのではないだろうか。そう思ったのだ。


 支配権とは何なのか。

 精神に負荷をかけるスキルで家畜一号は非常に従順になっているけど、MPを吸い出すときには抵抗された。

 彼は抵抗など一切していない、と恐怖で色んな物を垂れ流しながら泣き叫んでいた。

 完全に心が折れていても支配したことにはならないらしい。


 でも残念ながら奴隷契約が出来るスキルを持った魔物はまたもやいなかった。

 まぁ基本的に迷いの大森林の防衛のための戦闘能力優先の魔物ばかり生み出していたしね。

 渦だって当然系統は似たようなものだ。


 侵入者がほとんどいなくなった現在の迷いの大森林ではSPの収入がほとんどない。

 新たに奴隷契約のスキルをもつ魔物を呼び出すのは無理だ。


 だが別に魔物が持っていなくても、持っているやつのところまで行けばいいのだ。

 奴隷制度はどこの国でもあるそうだし、奴隷の販売も行われている。

 なら別にSPを消費して魔物を呼び出す必要もない。

 結局奴隷にするために人間は確保しなきゃいけないんだし。


 お金なら貴重な森の恵を売り払えばいくらでも得られるだろう。

 それに家畜一号からの情報収集をしていくうちに、だんだんとこの世界の人間の街に興味が出てきた。


 というのも、基本的には中世くらいの文明レベルだけど、一部は現代日本並に洗練された文化や品があるらしいのだ。

 例えば食事。

 ボクにとっては食事はただの嗜好品だけど、美味しいものは食べたい。

 例えば魔道具。

 日本にはなかったエネルギー体――魔石を燃料にして動く道具で、照明どころか冷蔵庫などもあるらしい。

 うちの屋敷の照明にも使われているみたいだけど、もっと色んな魔道具をみてみたい。


 ちなみに魔石からMPは吸い出せない。

 この魔力吸収の指輪は生命体からしかMPを吸い出せないみたいだからね。


 MPは集めるのが大変だけど、この世界のお金ならそれほど苦労しないはず。

 ならばこの世界の物品で代替が利くものはこちらで用立てるのが一番だろう。


 もう少し、周辺の街や村、国について情報収集を重ねたら、一度近くの街まで行ってみるとしようか。



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