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014 産めよ増やせよ、MPたくさん!

 家畜一号が奴隷を孕ませた。

 産めよ増やせよ、MPたくさん!

 というわけで、出産許可をボクは出したわけだけど、この世界は日本と違って医療設備も大したものがない。

 母体が出産と同時に力尽きるなんてこともよくあることらしいし、さらには幼少期は何かと死にやすい。怪我だったり病気だったりその理由は様々だけど、子供は弱い存在なのだから守らなければいけない。


 迷いの村では衛生環境にはとても気を遣っている。けれど怪我や病気に関しては街で購入してきた薬やポーションの備蓄で対処させている程度だ。

 治療ができる回復系のスキル持ちはレアで奴隷になんて滅多にならない。なったとしてもすぐに貴族とかに売られてしまう。

 そんな回復系のスキルを持っていたら、冒険者になるような奇特な人間はまずいない。

 街で治療院を開くなり、貴族に仕えたりする方が圧倒的に安全にお金を稼げるから。

 同様に魔物でも回復系スキルを持つものはコストが非常にかかる。

 呼び出せないわけではないが、一年間溜めたSPでも全然足りないのだから困ったものだ。

 まぁちょくちょく生産系スキルを持つ魔物を呼び出しているのが原因だけど。


 なので、今後は回復系のスキル持ちを入手することを目標の一つとする。

 でも他にもやることはたくさんある。


 何しろ迷いの村には子育て経験者がいない。

 長くMPを吸い出せるように比較的若い奴隷を優先していたのが仇となったかも。

 子育て経験豊富な奴隷を購入するのも一つの手ではある。というか実行するけど、他の奴隷にも経験してもらうことにした。


 家畜一号に色々案を出させたところ、蓄魔結晶を森の外に持ち出せないのかという質問を受けて閃いた。

 今は昔と違って神魔通販で色々な物を買える余裕がある。

 その中には蓄魔結晶も含まれているわけで、蓄魔結晶はマスター登録しておけば遠隔地でMPを吸い出しても溜めておけるし、容量もそれなりに大きい。

 支配権がない者からMPを吸い出す時は抵抗があるが、それはそれ。MPが吸い出せることには変わりない。

 蓄魔結晶の場合はMPを渡す方が量を調節できるし、街とかでMPを買ったらいいんじゃない?


 今まで奴隷を購入するか森で冒険者を捕獲するか、という選択肢ばかりだったので実に目から鱗である。

 でもMPを購入しているお店なんて見たこともない。実際に経験豊富な家畜一号も過分にして知らないという。


 しかし、人間は誰でもMPは持っている。

 スキルを使用する際の燃料となるMPだが、街の中では早々使う機会はないらしい。職人さんレベルになると別らしいけど。

 つまり、今まで余らせていたものがお金になるのだ。たぶんこれ、すごく成功すると思う。


 街の中にお店という拠点を用意できれば、孤児院などに奴隷を派遣して子供のお世話を経験させることも比較的容易だ。

 家畜一号の話では孤児院はどの街でもあまり良く思われていないらしい。

 苦労しているだろうから、ボランティアは大歓迎だろう


 ついでにMP豊富な子供を引き取れたら言うことはない。というかこれが一番の狙いだったりするけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 MP買取屋の出店のために家畜一号は粉骨砕身、非常に働いてくれた。

 テストケースとして一番近いニーリウスでの出店としたが、店舗の確保や店員としての奴隷の選定など、家畜一号があっという間に準備を済ませてしまった。


 未来のパパとして張り切っているのだろうね。微笑ましい。

 MP買取屋の結果如何で、自分の子供の今後に関わるのだからそりゃ張り切るだろうけどね。


 出店準備中にも奴隷商などを回ってもらい、回復系スキル持ちを購入するための準備も進めてもらっている。

 まぁこれは望み薄なため期待はまったくしてないけど。

 どこかでSPを一気に稼ぐなりして、回復系のスキル持ちを呼び出した方が現実的だろう。

 問題はどうやってSPを一気に稼ぐか、だけど。


 まぁそんな感じでMP買取屋はあっという間にオープンした。

 貴重な森の恵を売って得ている資金は結構莫大なので、運転資金は豊富だ。

 初日は宣伝が足りていなかったので、全然客がこなかったそうだが、少しずつ口コミで広がり、二週間も経たないうちに毎日客が途切れることがなくなるくらいには繁盛していた。


 そりゃ今まで使っていなかったMPがお小遣い程度とはいえ金になるんだから誰だってやってくる。

 MP保有量が多い人間ならお小遣いどころではすまないほどの額が毎日転がり込んでくるのだ。もうウハウハだろう。

 ボクも思った以上にMPが集まっているようでウハウハだ。

 テストケースとしては成功といっていいだろうね。


 今までにないお店ということで、オープン後も商業ギルドなどから怪しまれていたみたいだけど、そこは家畜一号がうまく動いてくれた。

 貴重な森の恵を何度も売りに来てくれるお得意様な彼が、森の恵の鮮度を保つために手に入れた魔道具にMPが大量にいる、と説明したのだ。

 ここで難癖をつけるようであれば、今後この街には森の恵を卸さないだけだ。

 MP保有量の多い奴隷を大量購入しているのはあちらさんも知っているので割りと納得してくれたみたいだけどね。


 今までは奴隷商にばかりお金が動いていたが、小遣い程度とはいえ毎日住民にお金が渡っている。その経済効果というものはなかなか馬鹿にできない。

 小遣い程度という逆に少ない金額だからこそ住民はすぐに消費してしまっても気にならないみたいだ。

 露店で焼串を一本買って帰っただけでも消えてしまうが、それが一人ではなく毎日たくさんの住民が行えば十分に経済活動となりうる。


 使っていなかったMPがお金になるのだから住民の受けは当然いいし、やっと気づいた商業ギルドからは称賛の声も届きはじめているらしい。

 さらには今まであまり良く思われていなかった孤児院への奴隷の派遣も開始した。

 最初は子供たちの面倒をみるだけだったが、そのうちMPと引き換えに炊き出しなども始まった。

 ほぼスラムといっていい場所にあった孤児院を中心として、腹が膨れたことにより窃盗や追い剥ぎなどの犯罪に走る必要がなくなった者たちが増え、治安も日を追う毎によくなっている。

 さらには奴隷たちの護衛として一緒に派遣している変身系スキルをもつ魔物たちが、腹が膨れた程度では犯罪をやめない者たちや奴隷に危害を加えかねない者たちを潰して回っている。

 孤児院に派遣された奴隷や護衛の魔物も家畜一号の一派と認知されているため、彼の名前はニーリウスでは知らない者はいないほどになっていたりするがまぁそれはどうでもいいよね。ボク、家畜一号の名前……覚えてないし。


 こうしてテストケースとしてのニーリウスでのMP買取屋は大成功という結論に達した。

 これからも続けていくが、他の街でも同様のことを行なうつもりだ。

 だってMPがガッポガッポと入ってくるんだもの!

 奴隷を購入するよりよっぽど効率がいいよ、この方法。


 まぁでも奴隷を購入し続けるのをやめるつもりはない。

 MP集めの方法は複数あった方がいいからね。


 こうして迷いの大森林周辺の街でMP買取屋が次々とオープンし、各街の孤児院に奴隷たちが派遣され、孤児院を中心とした治安がよくなっていった。


 しかし各街にまで勢力を伸ばしたことにより、森の恵の売却だけでは足が出るのは明白。

 頻繁に森の恵を持ち込んでは値段が下がっていってしまう。

 そこで内政系ラノベでは定番ともいえる商売に手を出してみることにした。

 そう、リバーシやチェス、トランプといった娯楽道具だ。


 神魔通販で日本製の高クオリティの見本は簡単に用意できるので、迷いの村でさっそく作らせてみた。

 最初はなかなかうまくいかなかったけれど、日本の工場のように作業を細分化し、ひたすら行わせれば嫌でも習熟するというもの。

 さすがに日本製のクオリティは無理なので、生産系の魔物に奴隷たちでも作れるような物を設計させて作らせた。


 今や迷いの村に残っている奴隷たちは娯楽道具ばかり作っているほど。

 無論MPを捧げるのに支障がないように管理はしているけどね。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 迷いの村で大量生産されている娯楽道具は、各街で今や知らぬ者などいないMP買取屋で販売されている。

 元々娯楽の少ない世界でリバーシなどの娯楽道具はとにかく受けた。

 家畜一号の名声のおかげでMP買取屋で販売されている者が正規品で、すぐに真似された類似品は非正規品という認識が出来ており、販売数は圧倒的なほど差が出ているみたい。


 あまりの人気にニーリウスを含めたいくつかの街を治める領主からお呼びがかかるほどだった。

 もちろん対応したのは家畜一号だけど。

 MP買取屋も娯楽道具の販売主も全部家畜一号の名義だからね。


 領主への献上品は日本製の高クオリティな娯楽道具にしたので、販売されている物とは比較にならない出来だ。

 そのおかげもあって家畜一号は領主の覚えもめでたいらしい。よかったね。

 是非とも家臣にと誘われたそうだが、当然教育が隅々まで浸透している家畜一号は断った。

 後々に禍根を残さないどころか、どうやったのか知らないけどさらに気に入られたらしい。まぁ問題ないなら別にどうでもいいよ?


 こうして領主のお墨付きまでもらって帰ってきた家畜一号は、迷いの大森林周辺では知らぬ者がいないほどになっているみたいだ。


 そして、妊娠発覚からあっという間に月日は流れ、家畜一号は無事パパとなりました。


 領主の覚えめでたい家畜一号は回復系スキル持ちの奴隷を譲ってもらったり、孤児院関係で知り合った助産師の助けもあり、母子ともに健康だ。

 無論両方とも迷いの村へ連れてきたので教育済み。

 特に回復系のスキル持ちは奴隷とはいえ、領主からの鈴みたいなものだったので念入りに行ったけどね。


 孤児院で子育てのノウハウを学んだ奴隷たちもいるし、回復系スキル持ちも手に入った。

 今後も増やしていく予定だけど、子供一人に対して行なう準備としては十分すぎるくらいだろうね。


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