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012 あ、でも侵入者たちには毎日やってた。てへ。

 屋敷に戻ってきてから早二週間。

 MPは順調に増えている……けどその分色々購入しているせいであまり溜まってはいない。


 奴隷たちの生活は家畜一号を監督役として面倒をみさせているのもあって、特に問題はないみたいだ。

 お土産の二人の教育もすぐに済んで、家畜一号の補佐をさせている。

 もちろん毎日MPを吸い上げてるけどね。


 今日も朝一のお風呂と尻尾のケアを終えれば奴隷たちの住居に向かう。

 とはいっても、移動用に転移陣を設置したのでグレ君に乗っていればすぐにつく。


「おはようございます、お嬢様」

「「おはようございます、お嬢様」」


 転移が終わるとそこには片膝をついて頭を垂らしながら挨拶する家畜一号の姿が。

 続いて一斉に奴隷たちとお土産の二人も土下座をして挨拶をしてくる。


 特に強制したりしていないのだけど、家畜一号がそういう教育を施しているようだ。

 聞けば奴隷が主人に対する行動としては一般的らしい。

 挨拶のたびにいちいち土下座するわけではなく、その日の最初の挨拶だかららしいけどね。

 家畜一号は一応奴隷たちの監督役だし、奴隷でもないので片膝立ちらしい。

 まぁ正直どうでもいいんだけどね?


 挨拶のあとはMPの吸収だ。

 一人一人ボクの前までやってきて平伏し、手のひらを上に向けて差し出す。

 あとはMP吸収の指輪を接触させてMPを吸収して、はい次。

 毎日やっているせいか、みんなも慣れてきてスムーズに移動が行われている。


 ボクが奴隷たちに望むのはたった一つ。

 毎日たっぷりのMP。それ以外は望まない、強制しない。


 MPは一日あれば回復する。でも怪我をしたり、病気にかかってしまうと回復量が落ちるし、死んでしまったら回復もくそもない。

 恐怖やストレスなどの精神的な負荷でもこの世界の人間は簡単に死んでしまう。いや、この世界だけじゃないか。日本だってそれは同じだ。自殺大国だしね、日本は。


 そんなわけで、精神的な負荷もあまりかからず、怪我も病気もしないような生活が必要なのだ。

 そのためにボクは奴隷を購入しにニーリウスに行く前から準備を進めていた。

 それがこれ、人間牧場――迷いの村。

 この世界で恐らく最大級となるダンジョン――迷いの大森林の中心部から少し外れた位置に作った小さな村。

 迷いの大森林の特徴とも言うべき、感覚を狂わせる機能が最大の力を発揮する森の中心部に加え、凶悪無比な魔物が跳梁跋扈するこの場所には無論、村なんてものは一秒足りとて存在できない。

 でも迷いの大森林の主であるボクが作ったのなら話は別。

 感覚を狂わせる機能はこの村に於いてのみ無効化され、凶悪無比な魔物たちは侵入者を殲滅する敵ではなく、味方であり、さらには守護者として機能する。

 まぁここまで辿り着ける者なんて早々いないので、守護する機会はほぼないけれど。


 迷いの村には数軒のログハウスと井戸、畑、入浴施設があるだけだ。

 各施設は建築系のスキルを持つ魔物を召喚して作らせておいた。

 SPを消費して魔物を呼び出す能力は、何も戦闘系の魔物ばかり呼べるわけではなく、屋敷もこの建築系もスキルを持つ魔物の中でも最上位に位置するものを呼び出して建てたみたい。

 でも数軒のログハウス程度を作るのに最上位の魔物なんて呼び出すだけSPの無駄なので、最低位の魔物で済ませている。

 とはいっても戦闘系のスキルよりもこういった生産系とでもいうべきスキルを持っている魔物の方がコストがかかる。

 一体の生産系スキルを有する魔物と同コストで、そこそこ強い戦闘系の魔物を数体呼び出せるのだから贅沢だ。

 もちろんだが、彼らに戦闘能力はない。そのかわりの建築系スキルなのだから。


 迷いの大森林には建材に適した材木がいくらでもある。

 切り倒しても何もしなければ次の日には芽が生え、数週間で元に戻ってしまう。

 草花に至っては次の日には元通りだ。


 釘などの鉄材も迷いの大森林では比較的容易に採れるし、その他材料も不足なく揃うのだからこの森はすごい。

 まぁ必要な材料を素材から作り出せるスキルを持ったものがいるのが前提だけど。


 SPの関係上一体しか呼び出せなかったというのに、さすがは基本性能が人間とは違う魔物なだけあり、ボクがニーリウスから戻ってきたときにはすでに村として機能するだけの設備が揃っていた。

 与えた仕事を無事成し遂げた彼は今は村で随時必要になるものを作っていたり、屋敷で必要になるものを作っていたりしている。まぁまだまだ奴隷は増やす予定なので引き続き住居の製作はしてもらうけど。

 ちなみに屋敷自体は補修はまったく必要ないほど頑丈だし、綺麗だ。

 これで築数百年というのだから驚きだよね。


 上水道は井戸があるけれど、下水道に関しては形だけ作っておいてニーリウスで購入してきた魔道具を設置してある。

 入浴施設に関してはこの世界で生活水準がかなり高くないと入れないらしいけど、知ったことではない。

 何せMPを吸収するときに指輪とはいえ、接触する必要があるのだ。

 なら綺麗にさせておくのは当然でしょう?

 それに清潔にさせておけば病気なんかもある程度呼ぼうできるしね。


 まぁでもお風呂は井戸から水を汲んで、お湯を沸かす必要がある原始的なものなので結構大変みたいだけどね。

 でもこの村は迷いの大森林の中にあるので、畑に野菜を植えればすぐに育つし、収穫量もかなり多い。

 その分雑草の生える量も多いけど、植えれば植えるだけ収穫できるのだから他の地の畑とは比べることすら烏滸がましい。

 連作障害も気候の影響も病気すら無視する強靭な畑なのだ。


 なので基本的にこの村のお仕事は畑仕事とお風呂がメインとなっている。

 家畜一号とお土産二人は元冒険者ということもあって、肉を調達する係をしている。

 迷いの大森林外層にはたくさんの侵入者がやってくるけど、やってくるのは何も人間だけじゃない。

 野生動物たちも豊富な森の恵を求めてやってくるのだ。

 でも外層とはいえ森の中には魔物がいるし、競争相手の人間もいる。

 かといって外層より奥は人間が少ない代わりに、だんだんと強くなっていく魔物に捕食されるだけ。

 賢い野生動物たちは外層の森の恵と、弱い人間を餌としているみたい。

 魔物の肉はどうやら臭くて食べられたものじゃないらしい。食べたことがないので知らないけど。


 こうして外層には肉が集まってくる。

 無論野生動物を狩れる人間から見れば彼らも森の恵の一つである。

 ただ罠猟は迷いの大森林ではあまり効率的ではない。何せ魔物がよくかかって破壊してしまうのだ。

 だから冒険者が野生動物たちを追いかけて狩っている光景は外層ではよくあることであり、家畜一号たちが同じことをしていても怪しまれることはない。

 まぁ怪しまれたところで何も実害はないのだけど。


 こうして迷いの村に奴隷たちが住み始めて二週間。

 彼らは順調にボクにMPを捧げ続けている。


 あ、そうそう。家畜一号は奴隷たちの監督役であると同時に命令権も与えているので、溜まっていたものなんかも奴隷で処理する許可を出してある。

 彼は有能だからね。これくらいの飴は与えてあげないと。

 でも毎朝のMP吸収の際に問題が発生したら全ての責任は彼が負うことになる。

 罰の恐ろしさは身にしみてわかっているから彼もかなり必死に奴隷たちの品質管理をしている。

 魔力計測器の貸し出しを懇願されたりするくらいには、ね。

 あれで毎日しっかりMPを測定して問題が出ないようにしているみたい。

 その調子で頑張ってね、家畜一号。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 二週間の間に発生した問題などは家畜一号から随時報告を挙げさせているけれど、割りと細々した問題は発生している。

 ただそのほとんどが家畜一号一人で対処出来る程度のものだった。

 奴隷の人数が増えればそのうち対処できなくなるかもしれないが、そうなったら監督役を増やせばいいだけだ。


 外層を調査に来ていた人間たちも、調べ終わったのかだいぶ減っているみたいだし、侵入者の数も日を追う毎に増えている。

 外層より奥にまで進む数はまだそこまで増えていないけれど、調査隊からの結果を聞けば徐々に戻っていくだろう。

 すでに以前の迷いの大森林と同じ環境になっているのだ。

 調査隊の結果なんて「異常なし。だが、要警戒」程度にしかならないだろう。


 ボクと同じダンジョンマスターである他の使徒たちも前ダンジョンマスターのような暴挙にでなければ基本的に同族を襲ったりはしない。

 ボクもそんなつもりは毛頭ない。何せボクが望むのは快適な生活だ。

 血で血を洗う闘争の日々なんて御免被ります。


 あ、でも侵入者たちには毎日やってた。てへ。


 そんなわけでそろそろ奴隷を増やすための準備を行なうことにしよう。

 まずは値段が落ちないように販売する街を変えて森の恵を売りに行かせる。

 この役目はMPが一番少なく、有能な人物。つまりは家畜一号にやらせる。

 奴隷に行かせてもいいけど、MPがもったいない。

 どの街に行くにしても往復で最低四日日以上かかるのだ。

 ならMPが一番少ない家畜一号が適任だ。色々とトラブルにも対応できる優秀なやつだし。

 当然お目付け役として誰かしらはつける。

 ただ今回はボクの乗り物であるグレ君やお世話係筆頭のモンちゃんはつけられない。ボクが困っちゃうもの。


 なので新たに屋敷のグレーターデーモンから一人選んでみた。


「じゃあよろしくね、ター君」


 ター君はグレ君と同じ肌の色に巻き角。でも好青年に見えるグレ君と違ってター君は甘いマスクの王子様系イケメンだ。

 彼もグレーターデーモンなのでグレ君並に強い。

 その辺の盗賊程度では相手にすらならないし、お土産二人のような強い冒険者でも問題にしない。

 ター君の基本的な役目は家畜一号の監視と護衛。

 大丈夫だとは思うけど、家畜一号はボクに支配権がないのだから完全には信用できない。

 心は完全に折ってあるんだけどね。


 護衛も、ニーリウスでの帰りに盗賊たちが情報を得ていたように、他の街で森の恵を売って大金を得れば同じことが起こるだろう。

 お土産の二人のような棚ぼたもあるかもしれないので、ター君にはちょっと期待していたりする。

 まぁ出来ればMPを吸収する際に抵抗のない奴隷の方がいいので、声に出して命令はしないけどね。

 おまけで手に入ったらラッキー程度の気持ちだ。


 しかしこうなると、家畜一号のようなMPが少なくても有能な人間を確保しておくのもいいかもしれない。

 今度侵入者から適当なのを見繕ってみようかな。

 でも家畜一号は当たりの部類だと思うから早々手に入るとも思えないんだよねぇ。


 まぁやるだけやっておこう。

 あの程度の侵入者なら強い魔物なら確保は苦労しないしね。



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