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011 フラグだったのかな?

 ニーリウスから迷いの大森林まで二日ほど。

 しかも今回は奴隷たちの馬車もあるし、荷物も結構な量を積んでいる。行きほどの早さではつかないだろう。

 まぁでも別に急いでるわけでもないからいいんだけどね。

 今回は暇つぶし用のラノベも一冊だけじゃないし、道中が暇で暇でしょうがなくなるようなこともないだろう。


 まぁトラブルがなければ、だけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「フラグだったのかな?」


 ニーリウスへ向かう道中は特にトラブルもなかったというのに、帰りは半日経たないうちにさっそくトラブルに見舞われました。

 えぇ、よくあるアレです、アレ。盗賊です。


 でもまぁうちには中堅どころの冒険者をやっていた家畜一号とグレーターデーモンのグレ君。さらにはアルダーデーモンのモンちゃんがいるわけです。

 なんと言いますか……一方的?


 チンピラ相手の時は手加減して殺さないようにしていた家畜一号も、盗賊相手では容赦などしないようです。

 屋敷にあった立派な装飾の入ったショートソードなど、装備品一式を貸し与えていたのでバッタバッタと斬り殺してます。

 グレ君もモンちゃんも出番ないかなーこれは。


 ちなみにあの盗賊を捕獲して人間牧場に招待するという案は少し考えて却下しました。

 家畜一号が「見るからに魔力がなさそうです」とか言うもんで。

 というか家畜一号、君見ただけで保有魔力量わかるの? 初耳なんだけど?


 ガタガタ震えて怯え始めた家畜一号だったけど、正確な量はわからないし勘に頼る不確かなものだと必死に弁明していた。

 まぁ魔力測定器は買ってきたから今更そんな能力はいらないけどね。


 ボクたち一行の中で唯一武装している家畜一号が怯えていたので何やら盗賊たちは勘違いしていたけど、結果はご覧の通りに彼らは皆殺し。


 まだまだ森とは距離があるので生かして連れて行くのは大変だし、MPも大してもってないって話なのだからこれでいいでしょう。

 道中襲ってくるものは全部皆殺しで先を急ぐことにしました。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 結局あれから三度も盗賊に襲われている。

 家畜一号曰く、「大金を得た情報が漏れたのでしょう」とのこと。

 まぁ別に秘密にしてもいないしね。

 でもこの調子だと、夜襲とかもありそうだねぇ。面倒くさい。


「グレ君、ちょっとその辺一通り掃除してきてくれない?」


 せっかく買った奴隷たちが死んじゃうと勿体ないので、グレ君に掃除をお願いするとさっそく変身を解いて向かってくれた。

 これで安心だね。

 グレーターデーモンは迷いの大森林でもかなり強い部類の魔物だ。

 家畜一号に蹂躙されるような盗賊じゃ束になっても敵わない。


 グレ君が戻ってきたのはお願いしてから二時間くらいあとだった。

 何やら血だらけの死体を二つ持って帰ってきたけど、お土産のつもりなのかな?


「グレ君、これどうしたの?」

「お嬢様、こいつら生きているようです。それに魔力もかなりあると思います」

「おぉ! じゃあMP吸っちゃおう! ナイスお土産だよ、グレ君!」


 どうやらグレ君がお土産に持って帰ったのは死体じゃなかったみたいだ。

 家畜一号の見立てでもMPをたくさん持っているみたいだし、さすがだね。

 やっぱりグレ君は優秀だ。


 お土産から吸収できたMPは抵抗されても二人合わせて約六千!

 びっくりするくらい多かったので、このまま殺してしまうのはもったいない。

 奴隷にできたら抵抗もされずにもっとMPを吸い出せるんだけど、ニーリウスに戻っても正当な理由がなければ奴隷にするのは難しい。

 闇奴隷商に持っていってもふっかけられるだけという話なので、迷いの大森林につれて帰って教育することにした。

 このままだと死んじゃうので家畜一号に治療をさせた上で拘束しておいた。

 MPも吸えるだけ吸い出しておいたし、スキルを使って逃げるのも困難だろう。

 でも一応モンちゃんに見張りをお願いしておいた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 翌朝、お土産の二人はモンちゃんに殴られて顎の骨がぐちゃぐちゃになった状態だったらしく、家畜一号が応急処置を施していた。

 ついでにボクはMPを吸い出しておいた。美味しいです。

 もちろん奴隷たちのMPもぎりぎりまで吸い出してあります。


 奴隷たちの食事は馬車に積んであるので一定時間ごとに設けている休憩時間のときなどに摂らせている。

 トイレなどももちろん休憩時間に済ませるように言ってある。

 盗賊たちを皆殺しにしている光景は彼らも見ていたし、そもそもが命令には絶対服従な奴隷たちだから従順だ。

 彼らに関しては特にトラブルもなく順調だね。


 グレ君が掃除をしてくれたおかげで本日は盗賊に襲われることもなく、順調に進んでいる。

 迷いの大森林からの帰りなのか、荷馬車なんかとも何台かすれ違っていたみたいだ。

 やっと迷いの大森林も元に戻り始めているようで一安心だね。

 これでSPを溜めることができる。

 ある程度溜まったら奴隷契約ができる魔物を呼び出したいな。

 お土産の二人のように、今後突発的に人間牧場の住人が増える可能性は大いにある。

 というか奴隷契約ができる魔物を呼び出せたら積極的に冒険者を生け捕りにしていきたい。

 奴隷を買ってきてもいいけど、お土産の二人のようにMPが多い奴隷は早々手に入らないみたいだしね。

 ちなみにお土産の二人は冒険者だったらしい。


 ギルドで貰える認識タグを二人はつけていて、それぞれ家畜一号よりもランクが上だったみたい。

 迷いの大森林でも奥地に入っていけそうなほどの人間らしい。

 そんな冒険者を怪我一つせずに捕獲してくるグレ君はやっぱりすごいね。


 迷いの大森林が近づいてくると森の恵を採りに来ている侵入者たちがちらほらとみえてくるようになった。

 賑わっているようで大変よろしい。いや実際はみんな慎重に行動しているようだけど。


 ボクたちはそんな侵入者たちを無視して森の中に入っていく。

 当然馬車が森の中に入っていけば怪しいどころじゃない。

 迷いの大森林は広大な面積を誇っているけど、馬車が通れるような道はない。

 でも大丈夫。

 何せここはボクのダンジョンだ。ちょちょいと隠蔽したり、認識を誤魔化すことなんてお手の物さ。

 そうこうするうちに転移陣まで辿りつき、一気に屋敷に転移する。


「はーやっと帰ってきたー」


 馬車を降りると背伸びをして身体の凝りを解す。

 疲労はないけど、精神的には疲れた。

 これからのことはグレ君や家畜一号に話してあるので彼らに任せておけば大丈夫だろう。

 ボクはモンちゃんと一緒にお風呂に直行だ。

 何せ昨日はお風呂に入れなかったからね!


 ニーリウスの宿のお風呂とは比べる意味もないくらいに大きな屋敷のお風呂でまったりする。

 モンちゃん率いるメイド部隊が丁寧にボクの身体や髪や尻尾を洗ってくれるのでボクは何もする必要がない。

 ぼへーっとしている間にも日本製のお風呂セットで隅々まで磨かれて、巨大な湯船に浸かって旅の疲れを癒やす。


 やっぱりお風呂はいい……。

 それに余裕が出てきたらモンちゃんたちにも日本製のお風呂セットを使わせてあげたい。

 奴隷ももっと増やして人間牧場を充実させたい。


 これからやるべきことを色々と考えていれば、すっかり逆上せてしまった。

 ダンジョンマスターになってから病気をしない身体になったけれど、お風呂に浸かり過ぎたら逆上せる。まぁすぐに治るんだけどね。


 モンちゃんたちメイド部隊に甲斐甲斐しくお世話されて、着替えもお手入れもボクがやることはない。

 最初は慣れなかったけど、今では任せっきり。

 ボクも怠惰になってしまったものだ。まぁ移動をグレ君に頼っている時点で今更な気がするけどね。


 いつもの執務室で、留守中に問題がなかったか色々と情報を呼び出して確認してみたけど、特に何もなかったみたい。

 せいぜいが調査隊が何組か新たにきていたりしただけだ。

 中心部に辿り着けそうな侵入者もいない。それどころか中層付近にすらほとんど侵入者は見当たらない。

 当分は森の恵の値段が高いままだろうね。

 また近いうちに売りにいってお金を確保しておきたいところだ。

 まぁ奴隷を買うならまだしも、森の恵の売却だけならボクが行く必要はない。

 売る場所もニーリウスだけというわけじゃない。


 この迷いの大森林は広大なだけに様々な国に跨って存在している。

 ニーリウスが一番近いだけで、少し距離が離れているだけで街という規模の場所はそこそこある。村規模なら倍以上だ。

 まぁ村では奴隷商が店を構えることはまずないので行く価値はないけど。


 あ、でも森の恵で生計を立てていた村は結構な数あるはずなので、あの事件のせいで森が危険な場所となってしまって生活が成り立たなくなった、なんてところも結構あるんじゃないだろうか。

 つまりもう少し待ってれば身売りして奴隷になる人間が増えるかも?

 そうなれば供給が増えて値段も下がる可能性がある。


 奴隷契約のできる魔物がいれば直接村にいって買い付けるんだけどなぁ。


 まぁいないものはしょうがない。

 しばらくはのんびりして、人間牧場の様子をみようかな。

 最初の頃のような失敗はおかしたくない。

 一気に数を増やす前にちゃんとノウハウを学ばないとね。


 ボクの人間牧場計画はまだまだ始まったばかりさ!



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