迷ひ家
使い方がよくわからないので取あえず書いて使ってみるべ!と書いた短編です。
それは奇妙な客であった。
彼の周りだけ空気の色が違う、いやはたして彼なのか彼女なのか?
ふらりと入りこんだ路地の奥、目立たないこじんまりとしたその店は
年輪を感じさせる扉の奥に趣味のよい調度品で居心地のいい空間を作り出していた。
-なかなか落ち着いたいい店じゃないか
会社でちょっとしたトラブルに巻き込まれ、気分治しにちょっと一杯ひっかけて帰ろうと立ち寄った見知らぬ店の奥に彼はいた。
人が居る気配は感じなかった、が、何杯かグラスを重ねた時ふと気がつけば
彼はいた。
私の後に入ってきた客はいない、いなかったはずだ。
たぶん気が付かなかっただけで先客としてそこにいたのだろう。
少し回ってきた酔いも手伝い、少々大胆になっていた私は彼を(彼女を?)
観察し始めた。
店の奥は少し暗がりになっており顔は良く見えない。
が、なにかしら奇妙な違和感がそこにあった。
闇が濃いい、空気が冷たく冴え静寂という言葉がふさわしい。
-場違いだ、、
そう、場違いという言葉がふと浮かんだ、その言葉が一番ふさわしい。
なぜだろう、時が違う。
彼と私の間に隔絶された時があるように感じた。
一見ごく普通の男に見えるのに、目を凝らせば全く異質のものがいるかのように。
ふっと、彼がこちらを見る。
闇に黄金の眼が光った。
-眼が光る?
人の眼は光らない、気のせいだと思うより「ああ、やはりな」と
なぜか思った。
そこで私の意識は途切れた。
「やれやれ今日くらいは邪魔されずにいたかったのに。
この店、迷い込む客が多すぎるよマスター。」
「すみませんなぁ、どうも悪戯が好きなものでね。」
「ふん、人間が好きなんだろ?」
「ふふふ」
悪態をつく青年にグラスをふきながら壮年のマスターが苦笑する。
「やはり、今日?」
グラスをふく手を止めどこか寂しげに青年に問う
「、、うん。迷ったけどねぇ、、。」
青年は袖をまくりあげ腕を見せる
「ほら、、正直きつくってさ。」
青白いと言っていいその腕は爛れ透き通りかけている。
「俺も好きだったな、、、妖かし、畏れ、水神、、いろいろ呼ばれたけど
昔は楽しかった、、。」
すうっと懐かしげに眼を細め青年は微笑んだ。
「まぁ、感の鋭いやつは今でも居るみたいだけど、、。」
眠りこけている男に眼をやる。
「マスターは向こうには行かないの?道はいつまで繋がってるか
わかんないよ?」
「ええ、私は行きませんよ。」
「いいの?この世界にこのまま居たらいずれ、、、」
消滅してしまうかもしれない、影も形もなく、、と続く言葉を濁す。
「ええ。」
「そっか、、」寂しげなそれでいて優しい笑顔で青年が微笑む。
「よし、これも何かの縁だ、そいつにお守りをやろう。
俺が向こうに行ってもそいつの寿命くらいは効力が持つだろう。」
突然にかっと悪戯そうな笑顔を浮かべ青年は男に歩みよる。
「ああ、ちょっと、迷い込んだ客に土産を渡すのは私の、、」
慌てるマスターを押しとどめ、たまにはいいじゃんと人ならざる者が笑いあう。
闇が闇で無くなり、人の手の入らぬ土地が無くなり
全てがめまぐるしく変わる、、。
闇の隣人は住処を無くし、自らの次元に立ち戻る
それが時の流れ、だが神の住まわぬ地に安息は果たしてあるや否や、、。
-あれ?、、確かカウンターバーで飲んでいたはずじぁあ、、
自室で目覚めた私は狐につままれたかのように釈然としなかった。
昨日のあれは夢だったのか?
-あれ?なんだ??
ただ、、手には透き通った湖畔のように蒼い綺麗な鱗が1枚残されていた。
よくある話ですね、、ひねりもないし漫画ならボツだわ(笑