森の王
あるところに者の王と呼ばれる鹿がいた。
ピィァッ、ピィァッ。
鹿の声が響く森の中、
森の王とうたわれる牡鹿と、その妻の間に息子が産まれた。
小鹿は次期森の王と為るべく厳しい父に教えられて育ち、優しき母親の愛に包まれて育った。
小鹿はその幼き日々の生活の中で、同年代の雌鹿に出会った。
彼らは未だ生殖行為が可能な年齢では無かったが、惹かれ合い仲良く戯れていた。
そんな彼らも成長し、雌鹿は細く締まった脚を持つ美しい姿に成長した。
そんな彼女を他の牡鹿達も放っては置かなかった。
しかし、他の牡鹿がちょっかいを出そうとすると、雄々しい角を携えた牡鹿がそれを許しはしなかった。
流石に、森の王者を継ぐにふさわしい曾ての小鹿の前で雌鹿に前肢を出そうとするものはいなかった。
そして春、そんな彼らにも親になるときが来た。
彼らの間に小鹿が産まれたのである。
曾ての森の王の息子であった小鹿は、
森の王となり息子をもうけた。
牡鹿には、厳しかった父鹿の気持ちが今完全に理解できた。
その息子も同じように彼の後を継ぐ筈だった。
その息子の小鹿は、ある時牡鹿と離れてしまった。
迷子になってしまったのである。
「ピィァッ、ピィァッ。」
そう鳴きながら両親を探していると、
突如脚を取られてしまった。
最初、窪みに脚をはめたのだと小鹿は思ったが、直ぐに違うとわかった。
小鹿の脚からは鋭い痛みが少し遅れてやって来た。
小鹿は人間の罠に引っ掛かってしまったのである。
「ピィァッッ‼ ピィァッッ‼」
助けて。助けて。お父さん、お母さん。
必死に小鹿は助けを求めた。
すると何かが木の葉を踏み分けて近付いてくる音がした。
「ピィァッッ‼」
お父さんかお母さんが来てくれた。
そう思って小鹿は鳴いた。
しかし、それに応えたのはーーーーーーーーー
ターンッッ‼
一発の銃声だった。
猟師が銃を撃ったのである。
哀れに一発で小鹿は絶命した。
森の中だけで生きているものたちの中では、小鹿は父親やその父親と同じように未来の森の王になれたのかもしれない。
しかし、森の外からやってくる人間こそが、森で一番強い森の王なのである。
王は偉大なる栄光によって支配を敷く。
けれど王は一本の矢に倒れる。