氷皇の過去と語り部《初》
入場門は開かれた。
両者は入場をした。
リオンが入場した時、会場は異常な歓声に包まれた。まるで祭のように。
一方、レンの入場は・・・・・・・・・・
異常な程に静まりかえっていた。まるで男子生徒がつまらないギャグで教室が静まり帰ったように・・・・・・・・・・
「帰ろ・・・・・・・・・・」
レンはそう言ってUターンしようとすると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「茨葉ぁ!応援してるぞぉ!」
熊メガネであった。その低い声は変に会場に響いた。
「俺もいるぞーレン」
雪であった。レンは逃げたかったが、逃げたら殺されると思い、この寂しい応援の中、レンはため息をついた。ランク戦の開幕は刻一刻と迫っていた。
両者は立合い線に立った。
「構え!」
審判はそう叫び指でカウントを始めた。
レンには作戦があった。それは・・・・・
「ランク戦開始!」
審判はそう言ってその場から消えた。
その瞬間、リオンは魔法を発動させた。
「氷装!」
するとリオンの腕に氷のランスが付いた。そして即座に攻撃をしてきた。
レンは少しニヤけると作戦を開始した。それは
「氷装!」
猿真似である。レンの手に氷のツメが付いた。
二人は交戦を始めた。初めは両者互角だった・・・・・・・・・・・・・・・だが、
所詮は素人、素人が玄人に勝てるはずがなかった。
リオンはレンの一瞬のスキをつき、吹き飛ばした。するとリオンは魔法を唱えた。
「氷壁」
するとレンが飛ばされてる方向に、氷の
壁ができた。
ゴンっ!という音とともにレンは倒れ込んだ。レンは、すぐに起き上がった。だが、しかし遅かった。既に上下左右前後に氷の壁が出来ていたのだ。
「何かおかしなことをすれば・・・・・・・・・・発動させる。」
一気に歓声は大きくなった。だが
レンにはその歓声も、リオンの忠告も耳に入っていなかった。そのとき、レンはあることを思い出していた。
《人は魔法、呪式を必ず使える。しかし、どちらか一つしか使えない。》
そしてレンは思った。魔法と呪式、混ぜるとどうなるのかと、レンは魔法の基本となる魔力を右手に、呪式の基本となる呪力を左手に溜めた。そして
両手を音の出るくらいの勢いで手を合わせた。無論、それにリオンは気づいた。
「諦めの悪い奴・・・・・・・・・・」
そう言うと、リオンは手を握り絞めるようにして唱えた。
「氷牢」
六つの氷の壁が押し固まっていった。まるで、一つのブロックのように、氷壁はだんだんレンを入れたまま小さくなっていった。中の空間は変わらないのだろう。
そしてブロックは、手のひらサイズにまで小さくなった。
「僕の・・・・・・・・・・勝ちだ!」
リオンはそう叫んだ。またしても会場は歓声に包まれた。会場にいる人間はリオンの勝ちを確信したのだろう。
「レン・・・・・・・・・・」
「茨葉・・・・・・・・・・」
雪や熊メガネも確信していた。だが、次の瞬間、会場が闇に覆われた。だが、それはすぐに消えた。だが・・・・・・・・・・
そこにはいるはずのない人間がいた。そいつは不気味な笑いをしながらリオンに話かけた。
「とりあえず、第二ラウンドかな?」
先程、氷牢に閉じ込められたレンであった。
「何故、お前がここに!?」
リオンは驚いていた。氷牢は破れた痕跡がなかった。なのに、何故そこにいるのか、疑問だったが、リオンは開き直った。
「もう一度、氷牢に入れてやる!」
そう言って攻撃を開始した。
「多重氷装!」
そう叫ぶと髪に氷のランスが付いた。
「あー、無茶苦茶だな。」
そうレンは言うと素人臭さが抜けた動きをしだした。そして、ものの見事に全てのランスを壊した。しかも、最低限の動きで、
「な・・・・・何故だ!?貴様、先程までの動きと違うのだ!」
「うん、そりゃ・・・・・・・・・・ね?」
そう言うとレンは霧を出した。どす黒い霧だった。
「仕方ない、俺の能力を教えよう。」
霧はどんどん深まってきた。
リオンは疑問に思った。
魔法ではないのか?呪式ではないのか?と、
「ついでに言っておくが、俺はレンではないよ?」
そう言っている間に、霧は深まり続け、闇になった。
「俺の能力は『語り手』、まぁ気楽にしてよ」
とても軽い態度で喋りだした。
レンではない何かが、リオンの記憶を語り出した。