残念過ぎる挑発
「じゃあ魔法、呪式基本の講座を始めるぞ 」
雪はそう言って教卓から声をあげていた。
何故、こうなったか。それはレンの一連の行動にあった。
15分前・・・・・
レンが無造作に放った『光城』により、事は発展した。『光城』を見た生徒が群がっているのを教員が確認し、それを調べに来ていた。奇跡はレンを裏切った。何故なら調べに来た教員は、レンの担任である教員であったのだから。通称『熊メガネ』、体格は中肉中背、年齢は40歳後半で、大きなメガネが特徴的な教員である。しかし、彼はメガネを外すと、顔は筋肉で強張り、体が二倍、筋肉で膨れ上がるのだ。
何故、メガネを外すとこんなになってしまうのか、諸説あるが有力なのは、学生時代、筋肉ムキムキ過ぎて女子に嫌われ、彼女が出来なかったのが原因という説である。とりあえず、とても恐ろしい教員である。
熊メガネは、レンが犯人とわかると即座にメガネを外し、レンの近くまで来た。
「レン、お前、何をしたかわかるか?」
「はい?」
レンは首をかしげた。すると熊メガネはレンの襟首を掴み、軽々と持ち上げた。
「レン、『光城』はな、パフォーマンスでもあるが、別の意味もある。それは決闘前の朝、光城を使うということは相手を見下しているという意味があるんだぞ!」
熊メガネはレンを振りながら力強く振った。
「ちょ、先生!レンがおちかけてます!」
雪はレンの状態をみて、即座に熊メガネに伝えた。
レンは、泡が吹き出しそうな状態であった。
「ん?ああ、すまん。とにかくだ。お前の今日のランク戦、初めての出場だから考慮しようと思ったが、そうもいかなくなった。だからレン、お前の今日のランク戦の相手は、一年で総合順位3位、魔法順位2位の相手と戦ってもらう。いいな?」
そう言って熊メガネは右手で床を叩いて起き上がった。叩いた床には綺麗な手形の穴が空いていた。
雪と音音はレンを起こし、教室へと向かった。
そして現在に至る。
ランク戦を受ける人は一日の授業を免除され、練習に集中できるのだ。
しかし、レンは魔法と呪式のことは、さっぱりわからないため、雪と音音が教えているのだ。
「とりあえず魔法と呪式の違い・・・・・・・・・・めんどいからパス」
そんなこんなで授業は始まった。レンは順調に魔法、呪式を覚えていった。
ランク戦開始1時間前、レン達は対戦相手を確認していた。
「切芭リオン、氷系魔法の使い手、別名、氷河の貴公子か・・・・・、そのルックスでファンは急増している・・・・・・・・・・か」
雪が丁寧に声に出して呼んでいた。
「へぇ、じゃあ俺はいささか、貴公子に与える餌な訳ね。」
レンはそういいながら『猿でもわかる、魔法、呪式入門』を呼んでいた。
「ふてくされるなよ、というか自業自得だろ?」
雪は笑いながら言った。ついでに音音は対戦相手が貴公子とわかると即座に対戦会場へと走って行った。多分貴公子のファンなのだろう。
「とりま、会場に行くか。応援してるぞ、レン。」
そう言って雪は待合室を出た。レンは首を数回回し、立ち上がった。そして、待合室から出、対戦会場へと向かった。
ランク戦は原則として、短時間の対戦者同士の会話時間がある。多分心理戦なのだろう。
レンは初めて、対戦相手のリオンにあった。とても綺麗な金髪の、モデルのような体型をした人だった。
「初めまして、切芭リオンだ。今回は災難だったな。ヘタレ君。」
リオンは挨拶と挑発をしてきた。
「どうも、ヘタレの茨葉 蓮です。よろしくお願いします。」
レンは挑発に乗ることなく、挨拶を済ませた。
「余り長く話をしたくないから僕からは一つ質問させて貰おう。君は、僕との試合での勝率は何パーセントだと思っている?」
リオンは煽るようにレンに質問してきた。
レンは顔色を変えず、たんたんと答えた。
「そうですね・・・・・・・・・・ざっと0%ですかね。」
リオンはとても驚いた顔でレンを見ていた。
「へぇ、以外と謙虚だね。」
リオンはあざ笑うかのように言った。
「何言ってるのですか。俺が言ったのは・・・・・あんたの勝てる確率だよ。」
レンはまるでロボットのようにたんたんと話した。
「な・・・・・貴様・・・・・朝の時のような挑発といい、恥をしれ!」
リオンは大分動揺していた。だがレンはそんなことを無視して
「じゃあ試合を始めましょうか。」
と言ってせっせと入場口へと歩いて行った。
「貴様、覚えていろよ!」
そう言ってリオンは入場口へと急いだ。
レンは入場口に立った時に結構重要なことを思い出した。それは・・・・・・・・・・
「あ・・・・・・・・・・れ?ヤバイ・・・・・・・・・・魔法も呪式もなんて言って発動するか忘れた・・・・・。」
レンは今更になって、あの挑発を悔やんだ。