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俺を襲った不幸は俺を地獄へと突き落とした。


しかし俺は誰を恨んでよいのかもわからない。


不幸はあの日、2人で下校しているときに起こった。



「ねぇってば一樹~もう許してよ。私が悪かったから許してよ・・・」

俺にちょっとだけ涙ぐみながら謝ってくるのは幼馴染で同級生の 篠原美月しのはらみつきだ。

「許さない」

俺、 新崎一樹しんざきいつきはそう答えた

「でも先生に追いかけられてたんだからしょうがないじゃない」

んなこと知るかよ・・・ 

数時間前のことだ



数時間前


俺は学校の屋上で寝ていた。ほかのやつらは授業中だろう。

1時間目からずっと屋上で寝ている。いつものことだ。

ガチャッ

鉄製の重いドアの開く音がした。

見回りの教師か?それにしてはくるのが早い。

携帯を見ながらそう思った俺はそ~っとドアのほうを見る。

「なんだ美月かよ、脅かすなよ、見回りかと思っ・・・え?」

こっちに走ってくる。

「一樹っ」

俺のほうまで来ると俺の後ろに隠れてしまう美月

いやな予感しかしないんだが・・・と思ったときだ。

「篠原~いるのはわかってんだぞーでてこーい!」

叫んでいるのは体育のセクハラ教師だ。

(やばい・・・俺見つかるとすごくやばい・・・逃げるか!)

あいつはエロい上にウザく話し出したら止まらない。

あいつの視界の影からゆっくり逃げようとしていると三月が

「ちょっとっ助けてくれないの!?」

(バカっ声がでかいっ)

と思ったときにはすでに遅い。お約束だ。

「そこか!・・・新崎お前なにやってるんだ?」

あーサイヤクだ。

「あーそのー・・・寝てました。」

その後1時間も俺はセクハラ教師に怒られた。

・・・美月は逃げていた。



「お前が来なかったらバレなかったんだよ、だから許さん」

「そんなぁ許してよ一樹~」

明日になれば許してやるか、などと思っていた。

今思えばこの時許していればよかった。

「もう!一樹なんか知らない!先帰る!」

「はーいはい、また明日な~」

美月を先に帰らせず一緒に帰ればよかった。



許さず先に帰らせてしまった代償は・・・重すぎた。








「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

悲鳴だった。それは俺がよく知る人物の悲鳴。

美月の声、悲鳴だった。

「嘘だろ・・・」

俺は駆け出していた。

いつも美月と2人で下校している道を駆ける。

(何だよこれは・・・)

アスファルトに道の上に黒く輝く直径2mほどの円状の魔方陣。

そこに美月はいた。捕らわれていた。体が魔方陣に埋まっておりもう肩より上と右腕しか見えていなかった。

「美月!!!」

俺は叫んで魔方陣の中に飛び込み美月の右手をつかむ。

(どうなってんだよこれは・・・)

「今助けてやる!」

(どうすればいい、どうすれば・・・)

俺にはただ引っ張ることしかできなかった。しかし魔方陣の中に美月はますます沈んで入った

もう顔と右腕しか出ていない美月は俺にこういった

「もういい、一樹、ご・・・」

しかし何かを言いかけていた美月は魔方陣の中に沈み顔も見えず右手も沈んでいく。

離すものか。離してしまったら美月は消えてしまう・・・

だがついに握っていた右手も魔方陣の中に沈み込んだ。そして魔方陣がさらに光魔方陣の外に波紋のように何かが広がっていく。10秒ほどすると魔方陣は消え去り俺はアスファルトの上にしゃがみこんでいた。

「美月・・・?どこに行ったんだよ。返事してくれよ・・・美月ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

俺は叫んだ。泣き叫んだ。

周りに人が集まってきた。何事かと思っているのだろう。うちの一人が叫んだ

「救急車だっ!誰か電話してくれ!!!」

一樹の体はかまいたちに斬られたかのように斬れていた。

血が流れ出していたが一樹はそんなこときずかず泣き叫んでいた。



目を覚ますと白い天井が見える。

「どこだ、ここ?」

体を起こそうとする。すると体に激痛が走る。

(ぐっ・・何だよの痛みは。)

何とか体を起こして自分の体を見る。包帯が巻かれていた。

周りを見渡す。俺はベットの上に寝かされており腕には点滴の針が刺さっていた。

(病院なのか?でも何でこんなとこにいるんだ。)

と思ったときだった。看護婦が部屋に入ってきた

「あっ新崎さんからだ起こしちゃだめですよ!今先生を呼んできますからっ。」

と言うと看護婦さんは部屋をでていった。



先生が来て脈拍とかを測った後黒いスーツを着た男の人が入ってきた。

「警察の西垣と言うものです。話を聞きたいのだががいいかな?」

(なぜ警察なんてものが来ているんだ?)

「はい。話って何ですか?ていうか何で俺こんなところにいるんですか?」

西垣さんは驚いた表情でこう言った。

「君は学校の帰り道に何者かに襲われたんじゃないのかい?体にはいくつもの傷があって君はしゃがみこんで叫んでいたと言うことなんだが。」

そういわれて思い出した。

(美月。美月は!?)

「美月はどこですか!?」

「落ち着け!美月とは誰かね。君と一緒にいたのかい?」

「俺と美月が2人で帰っててちょっと言い争ってそれで美月が先に行って、突然叫び声が聞こえて、それで俺が走って言ったときにはなんか黒い魔方陣のようなのものに美月が吸い込まれていって・・・それで美月を俺が助けようとしたけど・・・」

西垣がポカンとしていた。いま一樹が言ったことが信じられないのだ。当たり前だ、ここに来るまでに一樹の学校での関係等を調べたが美月と言う名前は出なかった。2人で帰るほどの中なら名前が出てきてもおかしくない。いや、出てこなければおかしいのだ。

それ以前に魔方陣とかそんなものが出てくるというのがおかしかった。

「君は記憶が混乱しているようだ。本か何かで読んだんじゃないのか?その内容は」

「本当なんです!美月が・・・」

「もういいよ。警察のほうで調べてみる。医者からの説明だとかまいたちに斬られたような斬り跡だったらしいし今日は風が強かった」

西垣はそう言うと病室から出て行った

(そんな・・・いや、俺でもほかのやつからこんなこと聞いてもおかしいと思うか。どうにかしてあの魔方陣のことを調べないと)

そう思いながら

俺は2週間ほどの入院生活を過ごした。







傷もふさがり退院した俺は美月の家に行った。


「何だよこれ・・・」

表札のに書かれている文字が篠原ではなかった。

(まさかラノベとかでよくある存在自体がなくなるってやつか・・・?)

念のためいますんでいる人に篠原と言う人を知らないかと聞いたが知らないようだった。


それならばと思い向かったのは学校だ。

退院した日なので学校には行っていない。しかし誰かいるだろうとは思った。

学校について向かった先は職員室だ。担任を捕まえて美月を知っているか。と言った。

案の定美月のことは知らなかった。



わかっていたこととはいえ俺は更なる地獄へと突き落とされた気分だった

(美月どこにいるんだよ・・・)

おそらく美月はこの知地球にはいないだろう。あの魔方陣は魔法とかそういう類のものに見えた。

と言うことであの魔方陣を俺は調べることにした。インターネット、歴史の教師、そして図書館。俺の知識じゃそれくらいしか思いつかなかった。歴史の教師は何の役にも立たなかったがネットと図書館は大いに役に立った。

昔のことやら神話やらのことを中心に図書館の本は片っ端から読み漁った。ちなみに3週間は図書館に篭った。当然学校はサボりだ。


図書館で調べた中本にこのような神話があった。


戦乱の中で黒く光る円が突如出現し何事もなく消え去る。しかし何人かの兵はあいつがいないと騒ぎ立てた。円に飲まれたんだ、とその兵士達は全身に傷跡ができていた、と言うものだ。

俺はこれを見つけたときにまさかと思った。

(何事もなかったのではなく人が何人か魔方陣に飲まれたとしてもきずかない可能性がある、現に美月が飲まれたとき周りには何人か人がいた。でもそいつらは 魔方陣の中には入らなかった それに美月が消えた後波紋のように黒い何かが広がっていった。あれは魔方陣の中にまでは及ばなかった。波紋は広がり最終的には地球を一周する。あれが記憶改変のできる何かだったとすれば説明は一応つく気がする。何人かの兵が覚えていたと言うのも仲間を助けようと近寄って言ったやつの可能性があるじゃないか)

考えれば考えるほど浮かんでくる推測。そしてその神話の本の最後のほうのページに信じられない記述を発見した。


戦乱は続いていたがその中で黒い円がまた突如出現した。そこには見たことない鉄の鎧を着た人物が立っていた。そいつは片方の軍に味方をしたちまち負けていた戦局を建て直しそのまま相手の国を占拠した、と言うものだ。しかしその後にこうも記述されていた。

その勇者はこの国のものだと言いさらには騎士団長だったと言った。そして自分は未知の世界でモンスターと戦い1つの国を救い向こうでいきなり黒い円にとらわれきずいたときにはここにいたのだと。しかし勇者のことは誰も覚えておらず勇者として生涯を終えた、と。

(これじゃ美月が帰ってきても覚えているのは俺だけ・・・いくらなんでも美月がかわいそうだ・・・どうすればいい。どうにかして俺が向こうに行けないか・・・)


そして俺は魔方陣の事を調べた。特に召喚系のものをだ。そして3つ見つけた。異世界に行く魔方陣と言うものを。どれも古い本に書かれているものだった。



しかし正直言って俺はこれで異世界に行けるとは考えていなかった。







案の定調べた魔法陣で異世界に行くことなんてできなかった。行けるわけがない。わかっていた。そんなことはわかっていた。それでも、諦めることなんてできなかった。


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退院してから4週間・・・1ヶ月が過ぎた。


本当に大切なものは失ってからそう気づく。本当のことだと思った。


美月と一緒にいた日常、そこには色があった。


10歳のときに両親が死んだ。あの時から俺の日常に色は無くなっていた。


そこに色をつけてくれたのが美月だった。


どん底の日々から俺を救い出してくれたのが美月だった。


どんなに追い払っても俺についてきて励ましてくれた。ずっと隣にいてくれた。


そんなことにいまさら気がつくなんて、俺はバカだ。


だから、諦めることなんてできなかった。


俺を救ってくれた美月を、今度は俺が救い出してみせる。


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なのに、俺は何してんだよ。




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俺は今、外に出ていた。散歩だ。


部屋の中にこもっていても何もできないし、こもってばかりじゃ美月に怒られちまう。


「そろそろ帰るか。」


俺は家が家に帰ろうと思って歩いていたときだった。


交差点で1人の女子高生を見かけた。てか見覚えがある。クラスメイトだ。


まぁどうでもいいと思った。


そのときだ、1台の大型トラックが突っ込んできた。クラスメイトはイヤホンをしているようで気がついていない。大型トラックの運転手は・・・わからないが気がついていないのだろう。それどころかトラックはふらついている。おそらく居眠りしているのだろう。


どうでもいいとか思えなかった


無我夢中で走った。そして、クラスメイトを突き飛ばした


「きゃッ」


クラスメイトの声が聞こえた。


その瞬間、ものすごい衝撃に襲われた。


体が浮いている。そして、アスファルトにたたきつけられた。


「なにすんです・・・か・・・?」


クラスメイトの声が聞こえた。俺から3.4mほどはなれたところにいるようで怪我はしていないようだった。


「大丈夫ですか!?」


クラスメイトが駆け寄ってくる、トラックからもおっさんが出てきた。


あれ・・・よく見たら美月が親友だって言ってた・・・


「新崎君・・・ですよね!?いま救急車を呼びますからっ」


遠くからそんな声が聞こえる。近くに見えているのに。遠くから聞こえる。


(なにやってんだよ・・・俺、死んじまう・・・まだ美月を、助けられてないのに・・・でも・・・許してくれるよな・・・美月・・・   ごめんな、美つ・・・き・・・)


俺の意識は途切れた。

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