壊れた世界。
四肢欠損などが苦手な人は注意。
そこの露店には少女が置いてあった。
両手両足が欠落したその少女は虚空を眺めていた。
その瞳を覗きこめばその瞳に自分の姿が映り込む。
少女の視界に入ったというのに少女はなんの反応も示さない。
胡乱な視線を投げかけてくる店主を無視して、少女を見つめる。
どうして店主はこの少女をここに置いているのだろうか?
それが気になったので問いかけると。
「あ?知らねえよ。ただ、そいつがそこに居ればあんたみたいに気になった奴が店に来てくれるだろ」
なるほど、この少女と店主は関係ないらしい。
なので彼女を連れて行っていいかと訊ねると渋い顔をされたので適当に商品を買った。
店主は渡した金額に目を丸くしたが、すぐににやりと笑うと「まいどあり」とだけ告げた。
少女を抱き上げて私はその場を後にする。
抱き上げた少女はとても軽い。
手から伝わる温もりだけが彼女が生きていると感じさせる。
なぜ、私がこんなことをしたのか。
慈善行為?
違う。これは利己的な行動だ。
私が、私の為に、私だけの行動だ。
私が壊れた少女の瞳を覗きこんだとき、その瞳に映った私の表情は。
醜悪な笑みを浮かべて歪んでいた。
壊れた少女を見て、満たされる私も壊れていて。
そんな壊れた者が跋扈する世界もまた壊れているのだろう。
なんて救いのない世界。
そして私は少女を壊した。