表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/62

その時に聞こえたのは君の歌④

 流星は、成瀬の大きな背中に目をやり、「でも」と声を張った。

「どうして、ぼくなんかを覚えていたんですか。ぼくはあなたと違って、全然目立つタイプじゃないですけど」

 成瀬が首だけを、こちらに向けた。

「そうでもないよ」

 彼の視線が自分の足元に向けられていると気づき、流星は自転車を押す腕に、力を込めた。

「まだ、足の調子は悪いんだね」

 とっさに、完全にもたれかかるようにしていた自転車から、身を起こした。

「どうして知っているんですか」

 ごめん、と前置いてから、成瀬は「地元だって言ったろ」と、やけに決まり悪そうにつぶやいた。

 地元、と流星は繰り返す。

「なら……それなら、知っていても、おかしくないですよね。ぼくの事故のこと」

 言いながら、流星は片足立ちになった。

 成瀬の目が、再び地面すれすれまで落ちる。

「まぁ、その、原因も、ね」

 まるで聞き逃して欲しいのかと思うほど、成瀬の声は小さかった。


 流星は中学時代、事故にあった。

 それも、ただの不注意で起こった事故ではない。

 当時、踏み切りで大騒ぎをしていた複数の中学生グループの姿を、たくさんの人が目撃していた。

 学生同士のケンカなどまるで珍しくもなかったが、たまたま通過したワンマン電車に流星がわずかに接触したことで、事は大きくなった。

 電車は駅を前にして減速していた上に、騒ぎに気づいていた運転手も、かなり早い段階で急ブレーキをかけていた。

 それでも、流星のほかにもうひとりケガをした人物が入院し、その後亡くなっていることから、当時はそれなりにニュースになったものだ。

 事故なのか、それとも故意か。

 流星、という一風変わった名前も、人びとの記憶に残りやすい一因だったのかも知れない。

 もちろん、未成年である流星の名前は伏せられていたはずだが、人の噂話を止める術はない。あの頃、どこへ行くにも、流星は好奇の目にさらされたものだ。

 だからこそ、同年代の成瀬が流星を覚えていても不思議ではない。

「くるぶしだよな、痛めたの。ずいぶんリハビリがんばったんじゃねえの?」

 背中を向けたまま、成瀬は流星をねぎらった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ