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流れる星のように④

 教師陣の机上に載っている大型ノートパソコンには、どれも同じテプラシールが貼ってある。教育委員会の支給品だろう。

 実習生の分までは用意されていないので、流星たちは共用のデスクトップを使うことになるのだが、それでも今は、まだその段階ではない。

 校長や教頭、教務の先生が頭を寄せて相談しているのに耳をすますと、どうやら昨日の朝会での一件は、流星が考えていたよりも、ずっと深刻で重大な問題に発展しているらしい。

「信用問題」という単語が、何度も耳に飛び込んできた。

 教科書をパラパラめくる。

 今、クラスではどこを勉強していて、流星が受け持つのはどの単元なのか。

 なるべく早く知りたいものだが、指導教諭の森野の態度を見るに、それは難しいかも知れない。

「まさか二週間、一度も教室に入れてもらえないなんてことは……」

 もしそうなったら、大学の単位はどうなるのか。こんな状態で、実習したと言えるのだろうか。難しい顔の末永校長を見ていると、不安に押しつぶされそうになる。

 教科書を一通り読み終わったあと、席を立った。

 職員室の引き戸に手をかけても、だれも流星を止める者はない。思い切って、ろう下に出た。

 流星の記憶が確かならば、この上の階に図書室があったはずだ。

 階段を上ると、ワークスペースの一画にパーテーションの扉が並んでいた。そのひとつひとつにはガラス戸が付いていて、折り紙で作った「四つ葉のクローバー」の切り絵が貼られている。

 陽だまり特有の、なんとも形容しがたい甘ったるい香りが辺りを包んでいる。

 そのまま、吸い寄せられるように引き戸を開けた。

「……だと思うのよ」

「でも……」

 向かい合っておしゃべりをしていたふたりが、一斉にパッと振り返った。ひとりは、司書の職員で、もうひとりは女生徒だった。

「実習生の北島です」

 あっ、と驚いた顔を隠しもしない司書は、「昨日の」と口の中でつぶやいた。

「少し中を見せてもらってもいいでしょうか」

 どうぞ、と気軽に許可をくれた司書は、女生徒に目配せをした。

「あゆちゃん。先生はちょっと席を外すわね」

 あゆ、と呼ばれた生徒の片まゆが、抗議のために吊りあがる。

「……んー、だめ。図書館だより、印刷しないと間に合わないのよ」

 司書はなだめるように笑い、すぐに戻ります、と今度は流星に声をかけた。

 壁掛け時計が、かちかち進み、やがて四時間目の終了を告げた。



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