流れる星のように①
最悪の日の続きは、やはり最悪から始まった。
自転車を押して校門をくぐると、男子生徒の集団がだらだら前を歩いているのが見えてきた。
「おはようございまーす」
あいさつしてくる女子生徒らに軽く会釈しながら、流星はどんどんその集団に近づいていった。
流星が追いつく程なのだから、彼らがどれだけ遅いのか分かろうものだ。
一連の騒動が収拾するまで、今は極力生徒に関わるべきでない、と判断を下された流星は、初日は保健室で過ごした。
見舞い、と称してやってきた末永校長は、流星の顔を見るなり「失格」の烙印を押した。
「生徒の前で動揺してはいけません」
呆れたように言い放ち、指導を受けることになっていた教師の受け持ちクラスへの立ち入りすらも禁止された。
なんでも、そのクラスに、例のお騒がせ男も在籍しているのが理由だという。
――『今が大事な時期なのに』
なるべく目立たないようにすること、と念を押されていたこともあり、流星はその集団を追い越すことが出来ずに後ろから付いていった。
自然と、彼らの会話が耳に入ってくる。
「もうこれ以上は無理だよ」
弱々しい声音が、集団の中からもれ聞こえてきた。
「は? なんで? おまえなら、もっと持ってこれるだろ?」
頭を寄せた集団の中で、猫なで声が反論する。
「オレさぁ、おまえががんばってくれないと、困っちゃうんだよねぇ。買いたいもん、あるんだよ。な?」
「でも……」
最初の男がもう一度声を上げ、びくっと肩を震わせて振り返った。
近づき過ぎた。
足を止めた集団が、一斉に流星に視線を注ぐ。素知らぬ顔で「おはよう」などと口の中でつぶやいてから、流星は彼らを追い越した。
小石をじゃりじゃり踏みしめながら、意識を背後に集中させる。
「警戒されたかな」
どうしてこうも問題ばかり起こるのか、と流星は大きなため息をついた。