第?話
「ラウの木に巣を作っているイザベラスという鳥が見える?…あの鳥はサチマタと呼ばれる木の樹液を好み、それしか口にしないの…」
リオは追い討ちをかけるかのように言った。
「つまり、この木はサチマタの木…先祖は騙されて、生涯この木を育てさせられたんです」
「騙された?」
ルドルフが訪ねた。
「本と一緒に先祖の日記も読んだんです。…あなたは前半のラウの木の成長部分しか読んでいなかったようですが、後半は悲惨なことが書かれていました」
ルドルフはリオの胸倉から手を離して俯きだした。
「家族を虐殺して罪人になったこと、罪滅ぼしに王がラウの木の護衛を任したこと…これは僕の憶測ですが、王は重大な木…つまり神の木と偽って、あなたの先祖に永遠に木の護衛をさせたんではないでしょうか?…それは死刑よりも辛い罪滅ぼし」
「…そんな」
「そして代々、王の命令により受け継がれるようになり…あなたも、また」
「うわぁぁぁぁぁ!」
ルドルフは痺れを切らしたかのように森の奥へと走り出した。
「ルドルフさん!」
「リオ!」
アンジェラは、ルドルフの後を追おうとするリオの右腕を強く掴んだ。
「アンジェラ…行かせてくれ!ルドルフさんを自由にさせたいんだ、目を覚まさせてやりたいんだ!」
その一言にアンジェラは掴んでいた力を緩めた。
「私も同じ気持ちだよ…リオ」
それを聞いたリオはアンジェラの腕をしっかりと握りしめた。
「行こう!アンジェラ」
二人はルドルフの後を追った。暗い森の中、口もないのに鳴くシメフクロウの群れは…まるで哀歌を歌っているように悲しみに包まれていた。




