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第43話 稼働開始! アビス解体工場と悲鳴を上げるエリート達

「おいそこの筋肉! ペダル踏む足が止まってるぞ! 第3防壁のコンベアの電圧が落ちてる、気合い入れて回せ!」

「ひぃぃぃっ! わ、分かってます! うおおおおっ!!」


要塞内部の動力エリア。国家の最高戦力であるはずの『特務監査部隊』の屈強な男たちが、エアロバイク型の魔力ジェネレーターを必死に漕いでいた。

 汗だくになりながらペダルを回す彼らの姿には、もはや国を背負うエリートの威厳の欠片もない。


「ちょっと、なんで特務部隊が自転車発電させられてるのよ!?」

「文句を言ってる暇があったら手を動かせ、エリート君。次から次へと建材モンスターが納品されてきて、仕分けが追いつかないんだ」


ケントから渡された軍手と安全靴を身につけた東雲霞しののめかすみは、目の前のベルトコンベアを流れてくる『物体』を見て、再び発狂しそうになった。


「Sランク魔獣『タイタン・ボア』の巨大な牙……同じくSランク『キラー・マンティス』の不可視の鎌……なんで、こんな国宝級の素材が、スーパーのレジ打ちみたいな速度で流れてくるのよぉぉぉっ!!」


外部モニターには、数万のスタンピードが要塞に群がる絶望的な光景が映し出されている。

しかし、要塞の防衛網に触れた魔獣たちは、次の瞬間にはただの『梱包済みの素材』へと加工されていたのだ。


「よし、次の群れが来るぞ。構造解析、開始」


ケントの瞳の奥で、一級建築士のチートスキル【構造把握】が発動する。

モニター越しの魔獣たちの姿が、ケントの脳内で『青い立体設計図』へと変換されていく。どんなに分厚い装甲を持った魔獣であろうと、手抜き工事の欠陥住宅と同じで、必ず結合部に『急所』が存在する。


「よし、あいつら関節の処理がガラ空きだな。第2防壁の『全自動・素材殻剥き機』、スイッチオン!」

ケントが手元のコンソールを、愛用の金槌でトンッと叩く。

スキル【超速クラフト】が発動し、防壁の巨大な仕掛けが一瞬で最適解へと組み替わる。


――ガゴォォォォンッ!!


「ギィャァァァァッ!?」


大地を揺らす重低音とともに、巨大な仕掛けがゴリゴリと容赦なく噛み合う。

高層ビルすら更地にするような圧倒的なパワーが、魔獣の強靭な装甲を『ただの卵の殻』のようにあっさりと剥ぎ取っていく。

続けて、自動制御された無数のマジックアームが、まるでリンゴの皮を剥くような滑らかさで魔石と高級建材をピカピカに仕分けし、次々とコンテナへ流していく。


『これもう防衛戦じゃなくて、ただの工場見学やんww』

『Aランク魔獣が、全自動のリンゴの皮むき機みたいに処理されていく……』

『ゲームのドロップアイテムみたいに一瞬で箱詰めされてて草』

『特務部隊のお兄さんたちの自転車発電で動いてると思うと涙が出る』

『おっさんの目には魔物じゃなくて「歩く無料建材」にしか見えてないのほんと好きww』


ルミナの配信ドローンがその狂気の光景を全世界に垂れ流す中、霞はガクッと膝から崩れ落ちた。


「私の……私が今まで国費を使って研究してきた魔導工学の常識が……全部、このおっさんのDIYに破壊されていく……っ」

「おいエリート君、手が止まってるぞ。これはただの解体現場だ、ボーッとしないで素材をコンテナに仕分けろ。命の保証はするって約束しただろ」

「あんたの常識がおかしいのよ!!」


泣き叫びながらも、霞は流れてくるSランク素材を必死にコンテナへ放り込んでいく。


「ふむ、ラインは順調だな」


ケントは現場監督として、完璧に稼働する要塞の処理能力に満足げに頷いた。

 ブラック企業時代、終わりの見えない図面修正と理不尽なパワハラに追われていた地獄に比べれば、向こうから勝手に最高級の素材が歩いてきてくれる今の状況は、完全に『ボーナスタイム』でしかない。


「よし、この調子でガンガン納品していくぞ。エリート君たち、安心しろ! ここからの時間は『深夜残業』扱いだ! 法定割増賃金(1.5倍)に加えて、特別ボーナスの『特S級ジェラート』を支給する! 俺の現場は労基を絶対に守るから安心して働け!」

「こんな極限状態スタンピードで労働基準法を遵守するのね!? どんだけホワイトなのよぉぉっ!!」


阿鼻叫喚のスタンピードは、一級建築士の狂った采配により、極めて平和で異常な『生産ライン』として順調に稼働し続けていた。

次回(第44話)は、本日【21:10】に更新予定です!


次回、災害級の大氾濫スタンピードすらただの「残業ボーナスタイム」へ!?

止まらない全自動解体ラインと、狂った現場監督による最高にブラックな防衛戦が続きます。


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