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狼たちの聖域 〜最凶ヤンキー校に舞い降りた天使〜  作者: あやん


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壊れた信頼と、二人の騎士(ナイト)

1. 導火線に火がついた日

きっかけは、些細なことだった。

ゆうがクラスの別の男子と楽しそうに消しゴムの貸し借りをしていたのを見て、獅子堂の独占欲が爆発したのだ。


「……ゆう。なぜ俺以外の男と笑う。あんな奴の消しゴムなど捨てろ。俺が世界中の文房具を買い占めてやる」


あまりに冷酷で、強引な獅子堂の言葉。

「……そんなの、おかしいよ! 獅子堂くん、最近ひどすぎるよ……っ!」

初めてゆうが声を荒らげて反論した。獅子堂の瞳に、見たこともない暗い情熱が宿る。

「……黙れ。お前は俺の言うことだけ聞いていればいいんだ」


無理やり腕を引かれ、誰もいない部室へと連れ込まれそうになったその時——。


2. 「行かないで、助けて……っ!」

「……ひっ、離して! 怖い、獅子堂くん……っ!!」


ゆうの悲鳴に近い声が響く。

たまたま通りかかった阿久津と羽柴が、血相を変えて駆けつけた。


カシラ! 何やってんすか、そんなに強く腕を……!」

「離してください、獅子堂さん。ゆう君が泣いてるじゃないですか」

二人が割って入ろうとしたが、獅子堂は二人を射殺さんばかりの眼光で睨みつけた。

「……どけ。これは俺とこいつの問題だ。二人きりで『教育』してやる」


その瞬間、ゆうは獅子堂の手を振り払い、ガタガタと震えながら阿久津の背中に隠れた。そして、阿久津の太い腕をぎゅっと掴み、羽柴の服の裾に縋り付いた。


「……お願い、行かないで! 怖い……二人きりにしないで……っ!!」

3. 反旗を翻す右腕と左腕

ゆうの体温と、絶望的な震えが二人に伝わる。

目の前には、自分たちが命を預けた最強の主。逆らえばタダでは済まない。


だが、阿久津はグッと足を踏ん張り、ゆうを背負うようにして獅子堂の前に立ちふさがった。


「……頭。……悪いっすが、これ以上は通せねぇ」

「阿久津、貴様……!」

羽柴も、いつもの柔和な笑みを完全に消し、冷徹な瞳で獅子堂を見据える。

「……今のあなたは、冷静じゃない。今のあなたにゆう君を渡したら……何が起きるか想像がつきます。これ以上、ゆう君に嫌われたいんですか?」


「……っ!!」

獅子堂の動きが止まる。

『嫌われる』という言葉が、鋭い刃となって彼の胸をえぐった。


4. 獅子堂の絶望、ゆうの避難

「……ゆう。俺は、ただ……」

獅子堂が手を伸ばそうとするが、ゆうは阿久津の背後に顔を埋めて、ヒィッと息を呑んでさらに身を縮めた。


その「拒絶」が、獅子堂には何よりの死刑宣告だった。


「……連れて行け」

絞り出すような獅子堂の声。

「……俺の視界から、消せ。……俺が、自分を抑えられなくなる前に……っ」


獅子堂はその場に立ち尽くし、拳を血が滲むほど握りしめた。

阿久津はゆうを軽々と抱き上げると、「……失礼します」と短く告げ、羽柴と共にその場を離れた。

「……大丈夫だよ、ゆう君。僕たちがついてるからね」

羽柴の優しい声に、ゆうは声を上げて泣きじゃくる。

その泣き声が遠ざかるのを、獅子堂は一人、暗い廊下で聞き続けていた。

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