ボタンと、戦場の焼きそばパン
1. 守護の第2ボタン
ある日の放課後。ゆうが自分の学ランの胸元を見て、しょんぼりしていた。
「あ、あれ……ボタンがひとつ、なくなっちゃった……。どこかで落としちゃったのかな」
「……何だと?」
隣にいた獅子堂が、世界が終わるかのような深刻な顔で反応する。
「ゆう、お前の胸元が無防備(※ボタンが一つないだけ)なのは看過できん。……これを使え」
獅子堂は迷いなく、自分の学ランの『第2ボタン』をブチィッ! と引きちぎった。
「えぇっ!? 獅子堂くん、壊れちゃうよ! 裁縫セット持ってるから、僕が縫い付けてあげる……!」
ゆうが家庭科バッグから小さな針を取り出した瞬間、獅子堂の顔面が蒼白になった。
「ま、待てっ……! ゆう、その……銀色に光る鋭利なものは何だ!?」
「えっ、針だよ?」
「ダメだ、危険すぎる! お前のその白桃のような指先に穴が開いたらどうする! 阿久津、今すぐ防刃手袋を持ってこい!!」
「そんなもんねーよ! 針くらい自分で刺させろよ、主婦か!」
阿久津のツッコミも虚しく、結局、獅子堂が「俺が動くから、ゆうは針を持って固定していろ。俺が自分から刺さりに行く(?)」という謎の共同作業で、なんとかボタンは移植されたのだった。
2. 決戦の購買部
翌日の昼休み。ゆうが珍しく、自分から拳を握りしめて宣言した。
「あのね、僕、今日は自分で『焼きそばパン』を買ってみたいの! いつも獅子堂くんに甘えてばかりじゃダメだもん!」
「……ダメだ。あそこは人間が立ち入る場所ではない。修羅の巣窟だ」
獅子堂が即座に反対するが、ゆうの「頑張ってみたい」という潤んだ瞳に負け、渋々許可を出した。ただし、条件がある。
「阿久津、羽柴。……完全防備で尾行だ。ゆうの半径5メートル以内に近づく不届き者は、すべて『排除』しろ」
3. SPたちの隠密行動
購買部への廊下。ゆうがトコトコ歩く背後で、壁に張り付き、抜き足差し足で追う三人の大男。
「……おい羽柴、前の角に一年が溜まってる。先に散らしてこい」
「了解。……君たち、ここは通行止めだよ。……死にたくなければね(黒笑)」
ゆうが購買部の喧騒(という名の奪い合い)に到着した時、そこには獅子堂の放った殺気と阿久津たちの事前工作により、「不自然なほど左右に分かれて道を作るヤンキーたち」の姿があった。
「え、えっと……焼きそばパン、一つください……」
ゆうが恐る恐る手を伸ばすと、パン屋のおばちゃんの後ろから、変装した(つもりの)獅子堂がヌッと現れた。
「……はい、これだ。……おまけに唐揚げも入れておいた。……あ、お代はいい。……お前が頑張った『ご褒美』だ」
「……あ、ありがとうございます……?(なんだか獅子堂くんに似てるなぁ……)」
4. 勝利のランチ
無事に焼きそばパンを手に入れ、ホクホク顔で戻ってきたゆう。
「見て見て! 買えたよ! お店の人、とっても優しかったぁ」
「……そうか。よかったな、ゆう」
さっきまで変装していた獅子堂が、何食わぬ顔で(だが、着替えが間に合わず少し服が乱れたまま)出迎える。
「……なぁ羽柴。あの頭、あんなに必死にパン差し出して……将来、パン屋に転職するんじゃねーか?」
「ふふ、ゆう君専用のパン屋さんなら、喜んでやりそうだね」
第2ボタンを胸に、獅子堂(の変装)から買ったパンを頬張るゆう。
その幸せそうな顔を守るためなら、獅子堂は明日、購買部ごと買い占める勢いなのだった。




