重すぎる愛の三段重
1. 登校風景、すでに過保護
翌朝。校門の前では、すでに阿久津と羽柴が「登校指導(という名のゆうくん待ち)」をしていた。
そこへ、獅子堂の黒塗りの車が止まる。
「おはよう、ゆう」
「……お、おはよう、獅子堂くん。あ、阿久津さんと羽柴さんも……」
ゆうが車から降りると、右手には風呂敷に包まれた豪華な重箱があった。
「……あの、これ、獅子堂くんが持たせてくれたんだけど……重くて……」
「持て。阿久津」
「うっす。……重っ!? 頭、これ何人前入ってるんすか」
獅子堂は涼しい顔で「ゆうが倒れないための最低限の栄養だ」と宣う。
2. 屋上、ひだまりのランチタイム
お昼休み。喧嘩の怒号が響く校舎内を避け、四人は特別に許可された(獅子堂が占拠している)屋上へ。
「……さあ、ゆう。開けてみろ」
獅子堂に促され、ゆうがおずおずと風呂敷を解く。
「……わぁっ!! すごい……!」
そこには、色とりどりの料理が並んでいた。
一の重: 出汁巻き卵(焼き印入り)、鯛の西京焼き。
二の重: 飾り切りの煮物(花びらの形)、特製ローストビーフ。
三の重: ツヤツヤの南魚沼産コシヒカリ(ゆうくんの好きな具が中に入った小むすび)。
「……獅子堂くん、これ、本当に一人で作ったの?」
「ああ。夜明け前から出汁を引いた。……口に合うか不安だが」
初恋に全力投球すぎるトップ。阿久津と羽柴は「……これ、料亭の仕出しレベルだろ」「愛が重すぎて胃もたれしそう……」と戦々恐々。
3. 「あーん」の儀式
ゆうが恐る恐る、出汁巻き卵を箸で掴もうとしたが、手がぷるぷると震えて落としそうになる。
それを見た獅子堂が、すかさず箸を奪った。
「……ゆう。俺が食わせてやる」
「えっ!? は、恥ずかしいよ……っ!」
「いいから。……ほら、あーんしろ」
獅子堂の瞳は、茶室で一服点てる時のような真剣そのもの。断れる雰囲気ではない。
ゆうは真っ赤になりながら、小さな口を開けた。
「……はふ。……おいひい……っ」
「そうか。……なら、全部食え。一粒残らずだ」
獅子堂の口角が、ほんのわずかに上がる。
その「純愛」すぎる光景に、横で自分のコンビニパンを齧っていた阿久津が遠い目をした。
「……なぁ羽柴。俺ら、ヤンキー学校の屋上にいるんだよな? 少女漫画のロケ地じゃないよな?」
4. デザートは甘い独占欲
食後、ゆうが満足そうにお腹をさすっていると、獅子堂が懐から小さな包みを取り出した。
「デザートだ。お前のために取り寄せた最高級の苺だ」
「わぁ、ありがとう! 阿久津さんたちも食べる……?」
ゆうが無垢な笑顔で二人に差し出そうとした瞬間。
ギュッ。
獅子堂が背後からゆうを羽交い締め(抱擁)にした。
「……ダメだ。これはゆうのために用意したものだ。他の奴にはやらん」
「し、獅子堂くん、苦しいよぅ……っ」
「……すまん。……だが、俺が作ったものを食べて、俺の隣で笑うのは、お前だけでいい」
家元の血を引く気高さと、ヤンキーの強引さ。その両方が混ざり合った獅子堂の「執着」に、ゆうくんは抗う術もなく、さらに懐かされていくのだった。




