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狼たちの聖域 〜最凶ヤンキー校に舞い降りた天使〜  作者: あやん


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3/16

3分間の迷子と、小さな指先

1. 獅子堂、不在の3分間

「ゆう、ここで座って待っていろ。……阿久津、羽柴。一瞬でも目を離すなよ」

「分かってますって、カシラ。早く行ってきなよ」


獅子堂が担任(というか、もはや生活指導)に呼ばれ、応接室を出た。

ゆうはソファの端っこで、借りてきた猫のように小さくなっている。


「……あの、えっと……」

「ん? どうした、ゆう君。喉乾いた?」

阿久津が強面を少しでも和らげようと(逆効果で凄味が増しているが)、身を乗り出す。


「……お、お手洗い、に……」

「ああ! そうだよな。羽柴、案内してやれ」

「了解。さ、行こうか。……あ、おっと電話だ。ごめん、ゆう君、角を曲がってすぐ右だよ。すぐ追いつくからね」


羽柴が電話に出た一瞬。ゆうは言われた通りに角を曲がった。

……が。


2. 修羅の廊下で子猫、固まる

「……あれ? 右って……どっち……?」

極度の緊張でパニックになったゆうの目の前には、**「落書きだらけの壁」と「割れた窓」と「怒鳴り合う不良たち」**が延々と続くディストピアな廊下。


「ひっ……あ、うぅ……っ」

怖くて動けない。涙が溢れて視界がにじむ。

その時、向こうからドカドカと足音が近づいてきた。


「おい、一年! 何突っ立ってんだコラァ!」

「……っ! ご、ごめんなさいぃ……っ!」


ゆうが床にへたり込んで頭を抱えた、その時。


「——おい。……うちの『姫』をビビらせてんのは、どこのどいつだぁ?」


3. 救世主(保父さん)たちの降臨

低い、地を這うような声。

顔を上げると、そこには阿久津と羽柴が立っていた。

さっきまでの「優しいお兄さん」の面影は一切ない。般若のような顔で不良を睨み殺している。


「あ、阿久津さん……羽柴さん……」

不良たちが脱兎のごとく逃げ出した後、二人は慌ててゆうに駆け寄った。


「ごめんごめん! 怖かったよね。……怪我はない?」

羽柴が膝をついて、ゆうの涙を指で拭う。


「……う、うわぁぁぁん! 怖かったぁ……!」

我慢の限界だったゆうは、思わず目の前にいた阿久津の学ランの裾を、ぎゅっと握りしめた。


「……っ!!」

阿久津に電流が走る。

今まで、自分の服を掴む奴といえば「命乞いをする敵」か「喧嘩を売る馬鹿」だけだった。

こんなに弱々しく、頼るように、一生懸命に握られたのは初めてだった。


「……あー、もう。……よしよし。もう大丈夫だからな」

阿久津は不器用な手つきで、ゆうの背中をトントンと叩く。

「……阿久津、ずるい。僕も裾、掴まれたい」

「うるせぇ羽柴、今は俺の番だ」


4. 獅子堂、帰還

応接室に戻ると、そこには衝撃の光景が広がっていた。

ソファで、阿久津の袖を離さないまま、安心しきってウトウトしているゆう。

そして、その隣で「尊い……」という顔でスマホのカメラを構える羽柴。


「……。阿久津、代われ」

獅子堂が静かに、だが絶対的な威圧感で告げる。


「えー、カシラ。今やっと懐いてくれたところなんすよ」

「……代われと言っている。……ゆうの『初めてのなつき』を、俺がいない間に済ませるとは……万死に値するぞ」


獅子堂は、眠っているゆうを壊れ物を抱くように自分の方へ引き寄せた。

ゆうは夢うつつの中で、獅子堂の香木のような落ち着く香りを嗅ぎ、その胸板にトスッと頭を預ける。


「……ししどう、くん……」

「……。ああ、俺だ。……もうどこへも行かせない」


獅子堂の独占欲に火がついた瞬間だった。

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