三人の保護者
1. ゆうくん、包丁禁止令
入学初日の昼休み。ゆうは震える手で、コンビニの小さなおにぎりを開けようとしていた。
「……あ、あの、獅子堂くん。僕、明日から自分でお弁当作ってこようかなって……節約したいし……」
その言葉を聞いた瞬間、獅子堂の眉間が険しくなる。
「……。ゆう、お前、包丁を使うつもりか?」
「えっ、あ、はい。一応……」
「ダメだ。却下する。お前のその白くて細い指に、万が一にも傷がついたら……俺は自分を許せない」
獅子堂は真剣な顔でゆうの両手を包み込み、そのまま「明日からは俺が作る。お前は座って待っていろ」と言い放った。
「えぇっ!? し、獅子堂くんが作るの!?」
「ああ。茶道の家元は料理も嗜む。……お前に栄養のあるものを食わせたいんだ」
2. 恐怖の「お掃除(喧嘩)」タイム
放課後、校門を出ようとしたところで、他校のガラが悪い連中が待ち伏せていた。
「おいおい、盛トワのトップがガキ連れて歩いてんじゃねえよ!」
ゆうは「ひっ……!」と短い悲鳴を上げて、獅子堂の背中に隠れる。涙目でガタガタと震えるゆう。
その時、獅子堂が静かに合図を送った。
「……阿久津、羽柴。あとは任せる。**『例の処置』**をしろ」
「ウィッス、頭。……おい、ゆう君。こっちおいで」
現れたのは、獅子堂の側近の二人だった。
右腕・阿久津: 剃り込みの入った強面だが、実は一番の苦労人。
左腕・羽柴: 糸目で常に微笑んでいるが、中身は一番ドS。
「ひいいいっ、ごめんなさい……!」
怯えるゆうの背後に羽柴が回り込み、その綺麗な指でゆうの耳をそっと塞いだ。
さらに、阿久津が前に立ち、自分の大きな身体でゆうの視界を完全に遮る。
「いいかい、ゆう君。今からお兄さんたちが『害虫駆除』をするからね。目も耳も閉じちゃってな。 終わったら、獅子堂さんが美味しいお茶を淹れてくれるから」
羽柴の優しい声が、耳を塞ぐ手の隙間から聞こえる。
直後、背後で「ギャアアア!」「待て、獅子堂ぉぉ!」という凄まじい絶叫と、鈍い打撃音が響いたが……羽柴が耳をぎゅっと押さえてくれているおかげで、ゆうには**「トントン、ポカポカ」というリズムの良い音**にしか聞こえなかった。
3. 放課後、秘密のティータイム
数分後。
「……はい、もう見ていいよ。終わったから」
阿久津が横にどくと、そこには誰もいなかった(正確には、獅子堂が全て片付けた後だった)。
獅子堂は息一つ乱さず、ゆうの手を引いて応接室(実質的な番長室)へと向かう。
そこには、アンティークなソファと、手入れの行き届いた茶道具が並んでいた。
「……ゆう、まだ震えているな」
「だ、だって……さっきの人たち、怖くて……」
「そうか。……来い」
獅子堂はゆうを自分の膝の上に座らせると、後ろから包み込むように抱きしめた。
そして、慣れた手つきで抹茶を点て始める。
「これは、俺が今朝、お前のために選んだ茶葉だ。……落ち着くまで、こうしていろ」
獅子堂の胸の鼓動が背中に伝わり、ゆうは少しずつ強張っていた体が解けていくのを感じた。
横では、阿久津と羽柴が「……完全にパパとママだな、俺ら」「しーっ、頭の邪魔すんなよ」と小声で囁き合いながら、ゆうのために高級なマカロンを皿に並べていた。




