盛トワの天使(エンジェル)と、貢ぎ物の列
1. 登校、異様な空気
九条の事件から一夜明け。ゆうが獅子堂の車から降り、校門をくぐった瞬間——。
「……っ! 瀬戸さんだ……! 無事だったんだな……!」
廊下の左右に陣取っていたヤンキーたちが、一斉に背筋を伸ばした。
「おはよう、ゆう君。……体調はどうかな?」
羽柴が爽やかに(でも背後に殺気を纏って)隣を歩き、阿久津が周囲を威嚇しながら進む。
そして最後尾には、一歩下がってゆうの安全を絶対的に守る獅子堂の姿。
2. 「ゆう様」への献上セレモニー
教室に着くまでの間、次々に不良たち
が物陰から現れた。
「あ、あの……! 瀬戸……いや、ゆう様! これ、昨日の件のお見舞いっす!」
差し出されたのは、コンビニの高級なプリン。
「こ、こっちは俺の地元で有名な、甘いパンっす! 食べてください!」
「ゆう様、足元に石が落ちてたんで退かしておきました! どうかご安全に!」
「……えっ、あ、ありがとう……? でも『様』なんて恥ずかしいよぅ……」
ゆうが困り顔で小首をかしげると、周囲のヤンキーたちは「ぐはぁっ……!」「尊死……」「浄化される……」と、バタバタとその場に膝をついた。
彼らにとって、ゆうくんはもはや「恋愛対象」を超えて、拝むべき「盛トワのオアシス」と化していた。
3. 獅子堂の複雑な親心(?)
「……おい。お前ら、ゆうを困らせるな。……あと、そのプリンは成分表示を確認してから俺が毒味する」
獅子堂が割って入り、次々と貢ぎ物を回収していく。
「ししどうくん、みんな優しいね。僕、この学校に来てよかったかも……」
ゆうが無邪気に笑うと、獅子堂の胸がキュッと締め付けられた。
(……あいつら、呼び方まで変えやがって。……だが、ゆうが笑っているなら、少しくらいの接触(※貢ぎ物のみ)は許してやるか……)
4. 昼休みの「聖域」
昼休み。屋上へ向かう階段には、阿久津の指示で「ゆう様、お昼寝中につき私語厳禁」の張り紙が出されていた。
階段の下では、普段は大声で喧嘩している連中が、ヒソヒソ声で喋っている。
「おい、静かにしろよ。ゆう様が起きちまうだろ」
「わりぃ。……つーか、ゆう様が笑うと、この汚ぇ校舎がキラキラして見えるのは俺だけか?」
その頃、屋上では。
「……ゆう。プリンを食べるか? それとも、俺が剥いた梨がいいか?」
獅子堂が至れり尽くせりの世話を焼き、阿久津と羽柴が「……もはや信者だな、あいつら」「まぁ、平和でいいんじゃない?」と、のどかな景色を眺めていた。




