最強の膝枕と、動けない石像
1. ぽかぽか陽気の図書室
盛トワ工業の図書室。ここは普段、サボり魔のたまり場だが、獅子堂が「ゆうの昼寝場所」として静粛を命じて以来、図書館並みの静けさを保っていた。
「……ふわぁ。獅子堂くん、なんだか眠くなっちゃった……」
獅子堂特製の栄養満点弁当を完食したゆうが、目をこすりながらトロンとした表情を見せる。
「そうか。……なら、ここで寝ろ。俺がついていてやる」
獅子堂はソファに腰を下ろし、自分の逞しい太腿をポンポンと叩いた。
2. 子猫の着地、獅子堂の硬直
「……えへへ。ありがとう……」
ゆうは疑うこともなく、獅子堂の膝に頭を乗せた。
柔らかい髪が獅子堂のズボン越しに触れ、ゆうの小さな吐息が太腿に伝わる。
「……っ!!」
獅子堂の背筋に電流が走る。
(……柔らかい。……温かい。……そして、信じられないほど、いい匂いがする……)
数分後、ゆうの寝息が規則正しくなり、完全に夢の中へ。
その瞬間、獅子堂は「石像」になった。
ゆうを起こさないよう、まばたきの回数すら減らし、呼吸も極限まで静かに。指先一つ、眉間一ミリすら動かさない。
3. 苦労人コンビ、見参
「よぉ、様子見に来たぞ——って、なんだこれ」
阿久津と羽柴が図書室を覗くと、そこには「彫刻のように固まったまま、眼光だけが鋭い獅子堂」がいた。
「……(しーっ!)」
獅子堂が口の前に指を立てる(その動作すら、時速1センチの超スローモーション)。
「あー……。膝枕で寝ちゃったのか」
阿久津が呆れたように近づこうとすると、獅子堂が目力だけで「近寄るな、風が起きる」と威嚇してくる。
「獅子堂さん、足、痺れませんか? もう30分は経ってますよ」
羽柴がスマホで時間を計りながら尋ねるが、獅子堂は震える声で小声で答えた。
「……痺れるだと? ……これは、ゆうの重みを感じる『至福の時間』だ。……例えこのまま足が壊死しようとも、俺は……一歩も動かん……!」
4. 限界の攻防
「重みっつったって、ゆう君、綿菓子みたいに軽いじゃないっすか。……お、ゆう君が動いたぞ」
阿久津の言葉通り、ゆうが寝返りを打ち、獅子堂のお腹のあたりにぎゅっと抱きついた。
「ぐふっ……(吐血)」
獅子堂の理性が、尊さのあまりオーバーヒートして鼻血が出そうになる。
「獅子堂さん、鼻血はダメですよ! ゆう君の服が汚れちゃう!」
羽柴が素早くティッシュを構える。
「……阿久津。……俺を、殴れ。意識が飛びそうだ……っ」
「そんなことで俺を共犯者にすんなよ!」
結局、ゆうが「……んぅ、よく寝たぁ」とパチリと目を開けるまで、獅子堂は一時間以上、彫刻のポーズを崩さなかった。
立ち上がろうとした獅子堂が、案の定、感覚のなくなった足でガクンと膝をつき、慌てて阿久津と羽柴が両脇を抱えて支えるハメに。
「獅子堂くん、大丈夫……? 足、痛いの?」
心配そうに覗き込むゆうに、獅子堂は真っ青な顔で「……いいや、絶好調だ。……むしろ、翼が生えたような気分だ」と強がってみせるのだった。




