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狼たちの聖域 〜最凶ヤンキー校に舞い降りた天使〜  作者: あやん


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半径2メートルのジレンマと、苦労人の架け橋

1. 獅子堂、物理距離を測りすぎる

「……獅子堂くん?」

「……。気にするな、ゆう。そこが良い」


仲直りした翌日の廊下。ゆうは困惑していた。

獅子堂が、常に「半径2メートル」の正確な距離を保って後ろをついてくるのだ。

以前のように肩を抱いたり、手を引いたりしない。まるで、ゆうという聖域に触れてはいけないと自分に呪いをかけているかのようだった。

「あの、獅子堂くん。教科書、一緒に見よう……?」

「……いや、お前のパーソナルスペースを侵すわけにはいかない。俺はここ(隣の席のさらに隣)から、視力5.0を駆使して読むから構わん」


「そんなの無理だよぅ……っ!」


2. 挙動不審な最強のトップ

休み時間。ゆうが机で消しゴムを落とした。

獅子堂がマッハの速度で動いたが、指先がゆうに触れそうになった瞬間、「ハッ!」と息を呑んで手を引っ込めた。


「……っ。すまん、ゆう。今、触れそうになった……。俺のこの汚れた手が……お前の純潔な指に……っ」

「汚れてないよ! 獅子堂くん、今日どうしちゃったの……?」

獅子堂はそのまま、床に落ちた消しゴムを「捧げ物」のように両手で捧げ持ち、震えながら机に置いた。

その様子を遠巻きに見ていたヤンキーたちはヒソヒソと囁き合う。

「おい、カシラ……何かの儀式か?」

「いや、あれは極限の『寸止め』だぞ……」


3. 保育士二人の、ため息と出動

その光景を見ていた阿久津と羽柴は、同時に深い溜息をついた。


「……なぁ羽柴。あの馬鹿、極端すぎねーか? 昨日の誓いを『物理的な接触禁止』だと勘違いしてやがるぞ」

あるじのためというより、もはやゆう君が可哀想だね。あんなに寂しそうな顔してるのに」


二人は顔を見合わせると、同時に立ち上がった。すべてはゆうくんの笑顔のために。

「よぉ、ゆう君。獅子堂の奴、最近『肩凝り』がひどくてさ。ちょっと揉んでやってくれないか?」

阿久津が、ゆうの背中をポンと押して獅子堂の方へ追いやる。


「えっ、肩凝り!? 大丈夫かな……」

ゆうが心配そうに獅子堂に近づき、その大きな肩にそっと触れた。


「……っ!? ゆう……っ、お前、今、俺に……触れ……っ(昇天)」


4. 結ばれた手、繋いだ安心

「獅子堂さん、落ち着いて。死ぬのはまだ早いですよ」

羽柴が冷ややかにツッコミを入れつつ、獅子堂の震える手を無理やり取って、ゆうの小さな手と重ね合わせた。


「ほら。ゆう君は、こうして欲しいんですよ。ねぇ?」


ゆうは、重ねられた獅子堂の掌をぎゅっと握りしめて、見上げる。

「……獅子堂くん。離れてる方が、僕、寂しいよ……?」

その一言で、獅子堂の「距離感バリア」は粉々に砕け散った。

「……ゆう……っ! すまん、俺が愚かだった……!!」


結局、獅子堂はゆうを抱きしめたい衝動を必死に抑えつつも、繋いだ手だけは絶対に離そうとしなかった。

その後ろで、阿久津が「……これでやっと飯が食える」と弁当を広げ、羽柴が「次は『抱きしめてもいい距離』のレクチャーですね」と手帳にメモする。


盛トワ工業の平和(?)は、今日もこの二人の胃痛の上に成り立っているのだった。

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