朝の光と、三人の騎士の誓い
1. 健気な子猫のひとりごと
翌朝。阿久津の部屋で目を覚ましたゆうは、隣に獅子堂がいないことに気づき、シーツをぎゅっと握りしめた。
「……ししどうくん、怒ってるよね……。僕が、わがまま言ったから……」
そこへ、焼きたてのトーストとスープを持った阿久津と羽柴が入ってくる。
「おはよう、ゆう君。よく眠れた?」
羽柴が優しく髪を撫でるが、ゆうの表情は暗いまま。
「……あの、阿久津さん……。獅子堂くん、どこ……? 僕のこと、嫌いになっちゃったかな……」
阿久津と羽柴は顔を見合わせた。
「まさか! あの頭がそんなことあるわけねーだろ。……ゆう君、昨日のこと、怖かっただろ? 獅子堂さんのこと、嫌いになっちゃったか?」
阿久津の問いに、ゆうは少しの間をおいて、ゆっくり、小さく首を横に振った。
「……ううん。怖かった、けど……嫌いじゃない。僕が、怒らせちゃうようなことしたから……ごめんなさい……」
2. 保育士コンビ、キレる(獅子堂に対して)
「……っ! なんでお前が謝るんだよ!!」
阿久津が思わず叫び、ゆうがビクッとする。
「あ、ごめん! 怒ってねぇよ。……おい羽柴、聞いたか。この天使、自分が悪いって言ってんぞ。あの馬鹿(獅子堂)に聞かせてやりてぇ」
「そうだね。……獅子堂さん、いつまで廊下で置物になってるんですか。入ってきてください」
羽柴がドアを開けると、そこには一晩中そこにいたであろう、隈のひどい獅子堂が立っていた。
3. 目線を合わせて、真実の誓い
獅子堂は部屋に入るなり、ゆうのベッドの横で静かに膝をついた。
最凶のヤンキーが、自分を一番小さく見せるようにして、ゆうの顔をじっと見上げる。
「……ゆう。まず、これだけは言わせてくれ。お前は、一ミリも悪くない」
「えっ……?」
「お前を怖がらせたのは、俺の弱さだ。お前の自由を奪おうとした俺が、全面的に悪い。……お前に謝らせるなんて、俺は男失格だ」
獅子堂の声は震えていた。
彼はゆうの手を、今度は力を入れず、壊れ物に触れるようにそっと包み込む。
「……昨日のような真似は、二度としない。……もし俺がまたお前を泣かせたら、阿久津と羽柴にこの首を撥ねさせても構わない。……だから、お願いだ。俺を、お前の傍にいさせてくれ」
4. どさくさ紛れの……?
「……ししどうくん……。……うん、僕も、一緒にいたい……」
ゆうがポロッと涙をこぼして微笑むと、獅子堂の瞳に一気に光が戻る。
「……っ。ゆう……。愛してる、お前を一生幸せに——」
「はいはいストップ!!」
阿久津が獅子堂の口をガバッと塞ぐ。
「どさくさに紛れて重い告白すんな! ゆう君はまだキャパオーバーなんだよ!」
「そうですよ、獅子堂さん。今は『仲直りの握手』で我慢してください。……ね、ゆう君?」
羽柴が苦笑いしながら割って入る。
ゆうは、獅子堂の大きな手と、自分を守ってくれた二人の手を見て、ようやくいつもの柔らかい笑顔を見せた。
「……うん。みんな、ありがとう!」
獅子堂は「……ちっ、邪魔が入ったか」と側近二人を睨みつつも、ゆうの笑顔が見られた安堵で、その場に力なく座り込むのだった。




