サバイバルは「逆」デスゲーム(ウタほたるのカケラ〈US〉出張版【サイズS】第6iS片)
こういう設定、好きかも。
そこは、日頃の訓練の成果を見せる場でありつつも、残酷なデスゲームでもあった。各地から貰われてきた、身寄りのないこどもであった少年たちは、この村で充分な食事と清潔な生活環境を与えてもらえるかわりに、厳しい訓練を受けさせられたのだ。
そして、月に一度の「選考」にかけられる。
容姿や仕草の美しさから、マナーや言葉遣い、夜の営みまで。
そこでは訓練で培われたものが試され、ひとつ合格したものたちは、またつぎのものを試されるという、勝ち抜き方式。さいごまで残ったひとりが今月の「花婿」として、「選考」に適うことになるのだった。
「花婿」——それは、この村の奥の洞窟に棲む、妖しい邪妖への生贄。美しい女に化けながらも、蛇か蟲を正体にもつ、怪しいいきもの。
逆らえば、彼女は村に禍いをもたらすか、あるいは村人を引き裂いて殺し尽くしてしまう。
だが、供物として若い男を毎月ひとり差し出すのなら、その魔力で村が栄えることを約束してくれた。
そんな事情は当人たちにも漏れ聞こえていて。
勝ち残ることこそ、破滅へと向かう「逆」デスゲームのような、生き残「らない」ための「選考」。少年たちはその趣旨を理解しつつも、全力をもって、勝ち抜きにかかる。
ほかのだれかを身替わりにするくらいなら、自らを人柱に——なんて、自己犠牲精神からではない。
こうした場では、いかなる事情があっても手抜きなどせずに、全力を尽くすように訓練されていたからだ。
たとえ、迎える「最高」の結果が、おのれにとっては「最悪」なものになるとわかっていても。
「選考」を勝ち抜いて生き残らないものと、「選考」を負け抜けて生きながらえたもの、どちらがこのサバイバルを制したのだかは、だれも答えてやることはできないけれど。
邪妖の「花婿」として捧げられた少年は、ひとりも村へは帰ってこなかったことだけは確かであった。




