幼馴染の彼を誘惑する方法
学校の休憩時間、教室の中はいつも通りにぎやかだ。 私は机を囲む女子たちの会話に相づちを打ちながら、穏やかに笑う。
「ねぇどう思う、上野さん? あり得ないよねそんなの!」
「そうですよね、そういうことは確実に言ってもらわないと困りますよね」
「やっぱり、わかってくれると思ってた!」
クラスメイトの表情がほころぶーーよし完璧! 私は“みんなの上野明美”を演じることに、もう慣れてしまっていた。 その時ふと、視線を感じて顔を上げると、彼ーー青木幸太郎と目が合った。
私は嬉しくなった。 彼はすぐに、慌てて目を逸らすけど、私にはわかるーーあの人の瞳には、私しか映ってないことを。
私は思わず、嬉しくてにやけそうになる。 でも、それと同時に苛立ちを覚えた。 どうしてそんなにすぐに顔を背けるの? なぜいつも私に対して“普通のクラスメイト”みたいな対応をするの?
ーーところで貴方の近くにいる、その女何? ねぇ、答えてよコウちゃんーー
「うぅ~ん⋯⋯ごめん聞いてなかった。 何?」
「もう翠ったら寝ぼけちゃって! 待っていても、伝わらないって話しよ!」
「ごめん香澄、考えごとしてたから⋯⋯そうだよね、なるほど! 参考になる! ありがとう」
「え?⋯⋯翠どうしたの? てかアンタ、全然寝ぼけてないじゃん!」
クラスメイトの翠と香澄の話しを微笑みながら聴いていた、私は思ったーー待っていても駄目だと。
その日の放課後、私は彼の家に忍び込んだ。 ーーと言っても彼の家の合鍵は彼の家族からずっと前に貰っていた。 彼の部屋に入り、ベッドに潜り込む。 この香り……やっぱり安心する。 ここに来る前に家でシャワーを浴びたから体は綺麗だから問題ない。 私は彼が帰ってくるまで、のんびりお昼寝をした。
やがて玄関の音がして、彼が帰ってきた。 そして私に気付いた彼がジト目で私に言う。
「年頃の女性が誰もいない家に侵入して男の部屋に潜んでいるってどう言うことなの?」
「お昼寝だよ~」
私は笑ってごまかす。 ーーだって、あなたが悪いのよ。 彼がクラスの女の子と楽しそうに話してるのを見て、私の頭の中がぐちゃぐちゃになった。
“貴方の隣は、私だけでいいのに”ーーあの女のいる位置が私の場所なのだからーー
「ねぇ、休憩時間に仲良く話してたあの女、誰かな?」
「はあ、そんなのどうでもいいだろう⋯⋯お前には」
はぁ、やっぱり彼は私の気持ちをわかってない。 だから言ってあげる。
「さっきの答えはね⋯⋯好きな幼馴染の家に私と彼しかいない状態で、これから二人の戦いが始まるところだよ~」
彼が驚いた顔をした瞬間、私は笑いながら彼に飛びかかった。 あの距離のなさ、驚き、そして照れ。
全部、私だけのものだーーああ、どうして私はこんなにこの人が好きなんだろう。
それなのに、彼は“何もわかってない”。 だから確実に貴方に言ってあげるーー
「ねぇコウちゃん、あまり嫉妬させないで欲しいな~。 じゃないと私、我慢できないよ?」
「⋯⋯お、お前は全然我慢してない、じゃあないか⋯⋯殺気ダダ漏れだったぞ!」
「あれれ~、気付いてた? じゃあわかるよね、コウちゃん⋯⋯」
「はい、わかります」
「よしよし、偉いねコウちゃん。 じゃあこっちにおいで~」
私は彼をまるでペットのように躾けたのだったーー
翌朝。
彼のクラスメイトが、私に話しかけてきた。 昨日彼と仲良くしてたあの女だ。
その彼女の話によると、「青木くんが上野さんに興味あるらしいのでこれから一緒に話そう」と言って来た。
私は思わず、にやけそうな表情を堪えて、優しく彼女の提案に応じた。
「ねぇ上野さんも、青木くんっておもしろいと思うよね」
「はい、私もそう思います」
いつものように、完璧な笑顔で答える。 でも、胸の奥では小さく呟いている。
ほんとはね、私だけが知ってるの。あの人が意地悪でそしてとても優しいんだってことをーー
「そうでしたか、青木さんは照れ屋さん、なんですね⋯⋯大丈夫です、こちらを向いてください!」
「わかったから! ⋯⋯お前、手の握力強すぎだろ!」
彼の顔が見たくて、つい首を強く握ってしまう。 驚いてこちらを見る彼につい、昨日と同じ表情をしてしまう私だった。




