第5話
メテオラは結局、それからしばらくマグお姉ちゃんに見つめられたあとで、恥ずかしさに我慢しきれなくなってしまい、帽子のつばをもう一度下げて自分の顔をマグお姉ちゃんから再び隠してしまいました。
だけど今度はマグお姉ちゃんは無理にメテオラの帽子のつばを上げようとはせずに、そんなメテオラの行動を見てふふっと笑い、それからメテオラの頭を帽子の上から一度撫でたあとで空っぽになったお皿を持って椅子から立ち上がると、それから再び台所まで歩いて行きました。
そこでマグお姉ちゃんは桶に汲んだ水を使って、空になったお皿の洗い物を始める。マグお姉ちゃんは洗い物をしながら、嬉しそうに鼻歌を歌っています。
メテオラは椅子に座ったまま帽子のつばをちょっとだけ上げて、洗い物をするマグお姉ちゃんの後ろ姿をそこからしばらくの間、じっと眺めていました。
そんなことをしていると、ふとメテオラの頭の中にもしかしてお母さんってこんな感じがするのかな? という疑問が湧き上がってきました。
メテオラの両親はお父さんとお母さんの二人とも、もうこの世界には存在していないません。
九年前に(ちょうどメテオラが生まれた年だ)アスファロットという名前の魔法使いが引き起こしたとても大きな厄災によって、当時の魔法使いたちが住んでいた森がすべて燃えてしまい、そのときに燃えてしまった森と一緒にメテオラの両親は魔法使いの魂が還る場所とされている『根源の海』に、生まれたばかりのメテオラを残して旅立っていってしまったのです。
そうやって両親を失い孤児になってしまったメテオラを拾って育ててくれたのが、燃え盛る森の中で生き残っている魔法使いの子供たちを必死で探しまわっていた、顔を炭だらけにしている、当時の小さなマグお姉ちゃんでした。