第1話 あなたが僕を見てくれるから、僕は頑張ることできるんです。お姉ちゃん。
君の寝顔
もし、願いが叶うとしたら、君はなにを願う?
魔法使いという種族について
その一、魔法使いは空を飛んで一生を終える種族である。
その二、魔法使いの魔法とは空を自由に飛ぶことである。
その三、魔法使いはその生涯をかけて自身の魔法使いの研究をする。
その四、魔法使いは森とともに生き、森とともに死する種族である。
その五、魔法使いが死ぬと、その魂は根元の海と呼ばれる場所に還っていく。
その六、魔法使いは魔法樹という大樹を信仰する。
その七、魔法使いは他種族と交流を持ってはならない。
二人の始まりの朝
あなたが僕を見てくれるから、僕は頑張ることできるんです。お姉ちゃん。
とんとん、と玄関のドアを叩く音がしました。
メテオラはその音を聞いて目を覚ますとむっくりとベットから起き上がって、それからベット脇に置いてある森の草や木のつるを編んで作った手作りのスリッパをはくと、まだ少し眠たい目をこすりながらよたよたとした足取りで玄関のドアの前まで移動して、そこから早朝の訪問者に声をかけました。
「えっと……、どなたですか?」
「私よ。声でわかるでしょ?」
確かにわかりました。声の主はメテオラの隣の家に住んでいるメテオラの保護者であり、また魔法学校の先生でもあるマグお姉ちゃんでした。メテオラはその声を聞いて玄関のドアを開けます。するとそこには上から下までぴしっと魔法使いの正装に身を包んで魔法学校に向かう準備を完璧に整えたいつも通り凛々しい顔つきのマグお姉ちゃんが立っていました。
それだけでなくマグお姉ちゃんは右手には自分の背丈と同じ長さの魔法の杖を持っています。その姿はどこからどう見ても文句のつけようのない魔法使いのお手本のような格好でした。
頭にかぶっているとんがり帽子も、着ている上質な布を使ったローブも、その下の裾の長いスカートも、足元の革靴も、肩にかけてるカバンも、全部が全部完璧でした。
そんなマグお姉ちゃんの服装はすべて黒で統一されています。それはマグお姉ちゃんだけではなく森で暮らしているすべての魔法使いが皆がそうでした。黒は魔法使いの色なのです。
「おはよう、メテオラ。今日もよく眠れた?」マグお姉ちゃんはメテオラにそう質問しました。
「はい、よく眠れました」メテオラはいつものように、マグお姉ちゃんにそう返事を返します。
すると、マグお姉ちゃんは満足そうにうなずいてから、メテオラの寝起きでぼさぼさの頭を優しい手つきでそっと撫でてくれました。それからマグお姉ちゃんは家の中に移動します。メテオラは玄関のドアを閉めると、そんなマグお姉ちゃんのあとについてとことこと歩いていきました。