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憑かれたい彼女  作者: 橘しづき
笑う写真
24/39

アルバム



 取り憑かれるのが夢という変人(でも美少女)の星野美琴に気に入られてしまった視える僕、大山研一はどこにでもいる地味なメガネくんだ。


 星野美琴とは同じファミレスでバイトをしており、やたら僕に構う姿にバイト仲間は「なぜあの美少女が冴えないメガネを」と思っているのがひしひしと伝わってきていた。


 どうやら彼女のオカルトマニアはみんな知らないらしい。彼女は「手が届かない美少女」という最高の地位を確立している。







「じゃあ、かんぱ〜い!」


 仲間の掛け声で僕らは持っているグラスを持ち上げた。僕も持っている烏龍茶を控えめに周りの人たちと当てると、ちびちびとそれを飲み込んだ。


 賑やかな声とタバコの煙。家の近くにある居酒屋にバイト仲間たちで集まっていた。どうやら不定期にこうやって飲み会をしているらしい。そこそこ仲のいい仲間たちで、バイト先に恵まれている方だと思う。


 僕はまだバイトを始めてそんなに経っていないので、飲み会の参加は初めてだった。緊張と楽しい気持ちでワクワクしながら、目の前に置かれたお通しを食べようと割り箸を持つ。隣に座っていたノックがこっそり耳打ちしてきた。


「大山、お前の手柄で今回星野も参加してくれたじゃん! まじありがとう!」


 彼は僕よりバイト勤めは長いので、飲み会も何度か参加しているらしい。明るくムードメーカーなのでこういう場に向いている人だ。


「あ、いや僕の手柄ってわけじゃ」


「だって星野、いつも誘っても絶対飲み会なんて来ないもん」


 ノックが肩をすくめて言う。ちらりと一番端に座っている子を見た。ジュースを片手に黙って座っている人形のような子、それが星野さんだ。早いことにもう原田さんを始めとした男たちが絡んでいる。星野さんは口数少なく、でも微笑みながら交わしているようだった。


 今回飲み会が開かれると言うことですぐに参加希望を出した僕だが、その際ノックから言われた。「大山、星野誘ってみてくれない?」と。


 よくわからないまま星野さんを誘いに行くと、「大山くんがいくならいく」という言葉をいただき参加が決定した。


 彼女は今まで一度もこういう会に参加したことがないらしかった。なので初参加に男どもは色めきだってるわけだ。


 ノックはニヤニヤと笑いながらいう。


「で、星野に告られたりしたの?」


「す、するわけないじゃないか!」


「えーだって星野がやたら大山に懐いてるじゃん。手を出すなら早くしないと、あんな可愛い子放っとくとか正気かよって」


 僕ははあとため息をついた。言ってやりたい、星野さんが僕にまとわりつくのは全てはオカルト絡みだ。あの子は可愛いけど全てがぶっ飛んだとんでもない子なんだ。ああ勿体無い。


 そう真実を言ってしまえば、僕も視えることを言わなくてはいけなくなる。だから結局黙るしかないのだ。この能力は誰にも言わずに生きてきたのだから。


 そのまま飲み会は盛り上がって続いた。次々運び込まれる料理に舌鼓を打ち、普段あまり話さない仲間とも会話を交わし親睦を深める。次第にお酒を飲んでいる人たちはアルコールが周り酔っ払い出してくる。シラフの僕は普段と変わらぬテンションで楽しんでいた。


 会が始まって二時間が経とうとする頃、料理も全て終わりダラダラとした空気に変わってきた頃。トイレに立ったノックをぼうっと待っていると、突然頭上から声がした。


「大山くん、お疲れ様」


 涼しげで綺麗なその声に聞き覚えがある。見上げると、やっぱり星野さんだった。彼女はジュースを片手に僕に微笑みかける。


「あ、お疲れ様星野さん」


「みんな結構酔っ払ってるね」


 星野さんの言葉を聞いて周りを見渡すと、確かにだいぶ出来上がってる。顔も赤いし半分寝てるような人もいる。あれ、あの人たちって星野さんに散々かまってた人たちじゃ……?


「隣いい?」


「あ、う、うん」


 美少女に隣いい? だなんて。男なら背筋を伸ばさずにはいられない状況だ。星野さんはゆっくりノックの席に座った。


「星野さんあんまりこういうとこ来ないって聞いたよ」


「うん初めて。あまり得意じゃないの。こういうところにくるより一人でいる方が楽しいっていうか」


 突っ込まなくてもわかる。一人で心霊スポットに行ったりやばいコレクションを眺めたり、そういう時間が有意義だと言いたいんだこの人は。僕は目を座らせて見る。


 星野さんはそんな視線に気づいていないのか、ジュースを一口飲むと続ける。


「大山くんは好きなの? 飲み会とか」


「え、うんまあ普通に。そんなに誘われないけど」


「ふうん。まあたまにくるぶんには」


 そう言いかけた時だ。少し離れたところにいる仲間の一人が、スマホを掲げてこちらに向けた。そして赤い顔で言う。


「はーい撮りますー、三、二、一!!」


 突然のことなので驚きながらもとりあえず無難にピースしてみた。星野さんは特に何もポーズを取らず微笑んでいるだけだ。それが最高に絵になるこの顔は羨ましすぎると思った。


 僕たちを撮り終えると、また別の人を撮りにカメラを向けた。僕はふうと息をつくと、突然隣の星野さんが言った。


「写真、か」


「え?」


「大山くん、心霊写真って見たことある?」


 でた、オカルト話。彼女が僕のそばに来る理由はそれなのだ。こう言う話をしたくてたまらないらしい。


 僕はなるべく無難に答えた。


「あーテレビとかで、ね」


「たまにやってるわよね。でも思わない? なんか心霊写真って、古いものが多いの。ここ最近撮られたような綺麗な画質のものってあまり見ないのよね。コレクションでたくさん持ってるんだけど」


 僕は無言で烏龍茶を飲んだ。


 その答えは簡単だ。画質が良くなりすぎているんだ。


 僕もテレビなどでそういう写真は見たことぐらいはある。女の顔がみえる、足が消える、赤い光が入っている……いろんな種類があるが、僕はそのほとんどは「ヤラセ」であると思っている。はたまた気のせい、だ。


 上手く言えないが、写真を見たときに感じるのだ。ああ、人工的に作られたなあ、と。昔の荒い色で浮かび上がる顔は不気味ではあるが、今の写真は本当に美しい。鮮明に映る霊だなんて何だか不自然だし、合成も作りにくくなってるんだと思う。


 が、こんな夢のない話、あまり星野さんにすべきじゃないか……いや、あえてするべき? そしたら心霊写真収集なんて悪趣味なことをやめてくれるだろうか。


 僕は思い切って彼女に向き直る。


「あのさ、それは」


「で、いくつか持ってきたのコレクション。ちょっと大山くん見てみてくれない?」


 星野さんがにっこり笑って鞄から小さなアルバムをとりだした。茶色でおしゃれなアルバムで、まさかこのアルバムも自分が生まれたとき、心霊写真だけが詰め込まれるなんて想像もしてなかっただろうなと不憫に思う。


 周りから見れば可愛い女の子が何か洒落たアルバムを見せている。中身は旅行行った時の写真か、ペットの写真かとでも思ってるに違いない。


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