第二部「破滅を照らす者:断罪の天秤」その8
目次
第23章「Last Briefing」
第24章「後ろと正面に」
第25章「茶番劇」
第26章「狼煙に潜む怒り」
第27章「この身を賭けて」
あとがき
第23章「Last Briefing」
「う…うわぁ…」
「お城なだけあって…とっても壁が高いっすね。」
【流輝と春喜は、星次に言われた通りに安全を確保しながら先へ進み、城壁の目の前に立っていた。すると、1分も経たないうちにジョゼフィーヌと星次が軽く走りながら彼らの元に辿り着いた。】
「皆さん!お待たせしました!」
「あっ!2人も無事にここに来られて良かった…ってか星次さんの足はもう治ったんですか!?」
「あぁ、こいつのスナイパーライフルの『魔弾』のおかげでな。」
「流輝君が足を捻った時にジョゼフィーヌさんが撃ってくれてた、血のやつっすよね。」
「はい!その通りです!」
「じゃあ安心ですね!」
「では…城内への侵入を開始する前に、もう一度ブリーフィングを行います。」
【彼女はそう言いうと、レッグポーチから黒紙を取り出して地面に広げた。すると、紙に書かれていた城の地図がホログラムの様に宙に映し出された。】
「私たちの現在地はこの緑の矢印の根元…正確には、北東側の城壁です。」
「確か、ここからあんたの『異能』とこいつの『魔武具』を使って城壁を越えた後に…あの爺さんの言った通りなら第三の門で『テミス』と殺り合う事になるんだよな?」
「その後はこの青い矢印の通りに進んで、『レイ』さんを倒すだけっすね。」
「その通りです!城内へ侵入した後も、これまでと同様の順で1列になって進みましょう。」
「ジョゼフィーヌさん、星次さん、俺、春喜さんの順でしたっけ…?」
「はい!皆さんが作戦の内容を覚えている様で安心しました!」
「じゃあ…作戦の確認は終わりですよね?とりあえず…作戦通りにお城の中に入るのは賛成なんですけど…」
【流輝はそこで言葉を切ると、目の前にそびえ立つ城壁を眺めながら不安そうに質問した。】
「こんな高さの壁を越えて…本当に中に入れるんですか…?」
【彼のその言葉を聞いたジョゼフィーヌは、城壁を見上げた。】
この城壁の高さは…
約15mから20mといったところだろう。
そして、私の『影の霧《Trans Figuration》』の有効範囲は最低でも50m以上はある。
後は…
「流輝さん!」
「な…何ですか?」
「この城壁の高さまで『彗星』を飛ばすことは可能ですか?」
「えぇっと…た…たぶん出来ると思います!」
「それなら充分です!ですが…2つ問題があります。」
「何だ?」
「それは…『影の霧《Trans Figuration》』の発動条件です。」
「発動条件…確か、あんたの『異能』は『自分の視界に位置を交換する物が映っている』…だったか?」
「簡潔に説明するとそうなりますね!そして、それに加えて『短時間の連続使用は、2回までが限界』となっており、数分間のクールタイムが必要になります。」
「なるほど…それじゃあ、もう1つの問題は…?」
【流輝の質問を聞いた春喜は、難なくスラリと答えた。】
「ジョゼフィーヌさんは1番最後にしか城に入れないって事っすよね?」
「あぁ…!確かにそうだな…」
「えっ?どういう事ですか…?」
「私が初めにこの城壁を越えてしまうと、私が皆さんを上から見下ろす形になります。そのため、城壁の内側に物を置いたとしても…物理的に私の視野の広さが足りないので、『皆さんの位置と城壁内の物体の位置を交換する事が不可能』になってしまいます…」
「ん…?あぁ!そういう事ですね!!だからジョゼフィーヌさんが1番最後に城壁を越えないと行けないんですね!」
「…っつー事は…城壁を初めに越える2人は、後続が来るまで安全確保をしないといけねぇって訳だが…」
【星次はそこで言葉を切ると、春喜と流輝を見ながら言った。】
「誰と誰が行くんだ?」
「私に…考えがあります。ですが…この作戦は、私と春喜さんの身を危険に…」
「僕は良いっすよ。ジョゼフィーヌさんが大丈夫なら。」
【春喜は彼女が全てを言い終えないうちに、彼女の目を見て答えた。】
「…ありがとうございます!」
「それで…ジョゼフィーヌさんの作戦って…?」
【流輝のその質問に、彼女は不敵な微笑みを浮かべながら言った。】
「勝敗の決まったギャンブルをしましょう…!」
第24章「後ろと正面に」
「はっ…俺の『天国と地獄《Eden & Hell》』で八百長をする事になるとはな…やっぱり、あんたはギャンブラーにむいてるんじゃねぇか?」
「ふふっ!私の様に、傭兵や兵士等の命を賭ける様な職業に就く方は、リスクヘッジを管理する能力が自然に身に付くので…リスクとリターンを考慮するのは得意分野です!」
【彼女の言葉を聞いた彼らは、同時に似た様な発言をした。】
「あんたが言うと説得力あるな。」
「ジョゼさんがそういうと重みが違うっすね。」
「ジョゼフィーヌさんが言うと納得できますね!」
【その様子を見た彼女は、少し笑いながら彼らに話した。】
「ふふふっ…チームワークも完璧ですね!では皆さん…城壁の前に立っていただけますか?」
「あぁ。」
「は…はい!」
「OKっす。」
「それでは流輝さん…私が右腕を下ろすと同時に『彗星』を投げて頂けますか?」
「…分かりました!」
「ありがとうございます!それでは…」
【彼女はそこで言葉を切ると急いで彼らとは逆の方向に走り、彼らと城壁が視界に収まる位置に立った。そして彼女は右腕を上にあげながら、左腕の内側に着けた腕時計を見た。】
現在時刻は6時44分54秒…
「突入まで、5…4…3…2…1!」
「行け!『彗星』!!」
【彼女がカウントダウンを終えると同時に右腕を振り下ろすと同時に、流輝がそれに合わせて『彗星』を城壁の上まで投げた。】
【太陽の光を受けてより白く輝く短剣と、城壁の前に立つ彼らを見つめながら、ジョゼフィーヌは『異能』の名を叫んだ。】
「『影の霧《Trans Figuration》』!」
今、最後までここに立つ私に出来ることは…
彼らの幸運を祈ることのみだ…
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「おおっ…と…びっくりしたっすね。」
初めてジョゼさんの魔法で瞬間移動したけど、本当に一瞬で入れ替わっちゃうんだね…
でも流輝君が投げたナイフの位置がちょっと高かったから膝にきちゃったかな…
それに…
「これはちょっと…大分まずいかも知れないっすね。」
【城内に初めに入った春喜は、そこで見張りをしていた6人の教団員と目が合っていた。】
「お前は誰だ!」
「一体どうやって侵入してきたのだ!!」
「他の防衛部隊の伝達は!?」
「いや、無かったぞ!」
「総員構え!射撃部隊は前へ!魔法部隊は詠唱準備!隊長…命令を!!」
【黒いローブを纏った5人の教団員はそれぞれが自らの配置につき、その中の1人が、黒いローブに白い仮面の様な物を着けた教団員に指示を仰いだ。すると、その教団員は両手を春喜に向けて数秒間だけ何かブツブツと唱えると、彼らに告げた。】
「敵の魔術脅威度はBだ。対応はAルートで続行。侵入者との対話の結果を待て。ただし…警戒は最大限にしろ。これより対話を開始する。」
「はっ!総員、現状形態を維持!」
【白い画面を着けた教団員は春喜の前へと歩みを進め、彼に質問した。】
「貴様…名前は?」
「名前を聞く前に名乗る方が礼儀が良いっすよ。
「ふん…他人の敷地に入る前には、正面から扉をノックするべきじゃないかね?まぁいい…仲間は居るのか?」
うーん…どうしよっかなー…
そうだ。
「僕と同じ感じで、少しづつ時間をずらしながら別の所から入って来るっすよ。何人居るかは教えないっすけど。」
「…ほう?」
「嘘をつくんじゃあ…!!」
「待て。念の為に…増援を呼ぶのは止めろ。この男は突然ここに現れたのだ…それに、今ここに居るのはこの男のみ…私達だけで充分だろう。」
まぁ…本当は1人だけじゃないんすけどね。
【彼がそう考えていると突然、彼の真後ろで小さな足音のような物が鳴るのとほぼ同時に、1本の細い棒のようなものが彼の背中をなぞった。】
「ぷっ…」
「何がおかしい?」
流輝君はやっぱり、緊張したり焦ったりすると…
ちょっぴり天然になるみたいだね。
【彼は背中をなぞる何かの感触にくすぐったさを感じながらも、それが伝えようとしている事を感じ取ろうとした。】
線が横に2本…
それの中心、それも縦に1本…
後はまた、その下に1本…
途切れたって事はこれで1文字かな。
次は、十字型に線を2本…
後は、その十字の右下に横線が2本…
これが途切れて、2文字。
「なぜ笑っているんだと聞いているのだが?」
「仲間が居るって良いなぁって思ったんすよね。」
「何を言っている?貴様は今1人だぞ。」
「1人じゃないっすよ。」
だって…
流輝君が『きた』みたいだからね。
【彼のその思考に応えるかのように、聞き馴染みのある声が白い仮面を着けた教団員の後ろから聞こえた。】
「ぜ…ぜぜぜ…全員…うご…うごぐぉごごくんじゃ…動くなぞ!!??あっ…噛んじゃった…動くんじゃないぞ!!」
第25章「茶番劇」
「勝敗の決まったギャンブル…?何をするつもりだ?」
「ギャンブルの話に移る前に…城内に侵入して頂く方と、作戦内容を発表します!」
「城壁に入るやつらは…さっきの話の感じからして、1人目はコイツだろ?後1人は…」
「流輝さんに侵入して頂きたいのですが…よろしいでしょうか?」
「えっ!?俺ぇ…で…す…ねぇ…っと…分かりました!」
「躊躇いながら躊躇ってないっすね。」
「と…とにかく!俺はどうしたら良いですか?」
「まず…春喜さんに城内に侵入して頂いた後に、流輝さんには春喜さんの後ろに『彗星』を投げて頂き…私の『影の霧《Trans Figuration》』で流輝さんと『彗星』の位置を入れ替えます。」
「コイツを壁にするのか。」
「春喜さんには…正確には壁、というよりもデコイの役割を果たして頂きます。」
「えっと…じゃあ俺は?」
「春喜さんの後ろに移動した瞬間…流輝さんには『幻影』を使用して頂きます。もっとも…無詠唱のまま、地面に着地して流輝さんの足が春喜さんの後ろから見えてしまう前がベストですが…」
「や…やってみます!そ…その後は…?」
「もしも、城内を防衛している敵兵と接敵した場合は…春喜さんにはその敵を引き付けて頂き、その間に流輝さんには…」
「人質を取ってもらう…って訳か?」
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「ぜ…ぜぜぜ…全員…うご…うごぐぉごごくんじゃ…動くなぞ!!??あっ…噛んじゃった…動くんじゃないぞ!!」
【彼は声を震わせながら有り触れた脅し文句を放ち、『彗星』を教団員の首に当てていた。】
さ…作戦通りにはいけたけど…
こっからどうしたら良いんだァーッ!?
「なっ…!?一体いつから…!!」
「そういえば流輝君。」
「な…何ですか?」
「僕の後ろに来たことを伝えるんだったら、指文字よりも肩叩くとかの方が良いっすよ。」
「あ…た…確かに…」
『幻影』を使ってたからめっちゃくちゃテンパってた…!!
「す…すいません…」
「全然良いっすよ。」
【2人のやり取りを見ていた教団員達は、全員が怒りをあらわにした。】
「ふざけるな!」
「いきなり侵入してきてごちゃごちゃと!」
「今すぐに隊長を放せ!!」
「そ…そーんな態度で良いんですか〜?アアー俺の手が震えてたらこの刃がこの人のクビキッチャウカモナー!アアーアブナイナー!もしかしたら?武器を今すぐに城の外に投げてくれたりしたら?この人を解放してあげたり?」
【彼がカタコトの言葉で脅しを続けると、彼に後ろから刃を当てられていた教団員が突然笑い始めた。】
「ククッ…はははっ…!」
「わ…笑ってんじゃ無いですよコノヤローめ!この人達を下がらせたり戦わせない様に命令してくれたら命とその他の安全は保証してあげま…」
「馬鹿め!貴様のその様子を見れば…貴様は人を殺す事など到底出来ぬような青二才だと解るわ!!総員、攻撃系魔術の使用とアサルトライフルの射撃を許可する…ターゲットはあの男だ…」
【仮面を着けた教団員は、春喜を指さした。】
「た…隊長!教祖様は敵をなるべく生かして捕らえるようにと…それに!貴方の身が…」
「1人くらい殺したとて構わん。教祖様には必要な犠牲だったと言えば良い。そして、私の身の安全についてだが…こやつの足元をよく見るといい。」
「え?」
俺の足元…?
【流輝が恐る恐る視線を落とすと、彼の足元には紫色の魔法陣が出現しており、そこから紫色の光が少しづつ溢れ始めていた。】
「雷撃よ。我が敵を無力と化せ。」
【仮面を着けた教団員がそう呟くと、魔法陣から紫色の無数の稲妻が現れ、流輝に襲いかかった。】
「ッあぁああぁあああぁあアアアアアアァあ!!」
「流輝君!」
【身を焼くような熱さと電流による痺れ、そして激痛が彼の身体を支配した。彼はその痛みに耐えきれず、手に持っていた『彗星』を地面に落とした。そして教団員が痛みに悶える流輝を押し倒しすと、『彗星』を拾い上げて彼を拘束した。】
「ふん…舐められたものだ。『魔術』の『無詠唱』は私も習得しておるわ…さてと…総員、準備は良いな?」
「はい!」
「隊長の命令通りに…!」
「上出来だ…総員、攻撃開始!」
【仮面を着けた教団員が命令を下すと同時に、アサルトライフルを構えた3人の教団員と、火の玉を手の平に浮かべている2人の教団員が春喜に向き直り、攻撃を開始した。】
「春…喜…さん…」
【彼が薄れゆく意識の中で見たのは、弾丸と炎の塊が春喜の方へと飛んでいく光景だった。】
第26章「狼煙に潜む怒り」
「ふっ…敵襲とさえ呼べぬ茶番劇だったな。」
【仮面を着けた男は、春喜が立っていた場所から立ち上る炎と煙を見ると、満足そうな声で他の団員に振り返りながら言葉をかけた。】
「その通りですよ…」
「警戒して損しましたね!」
「あぁ!その通りだ…ハハッ!」
「で…ですが隊長!本当に殺さずとも…拘束系魔術で捕らえた方が…」
「全く…貴様はあの小娘の戯言を守り続けた方が正しいとでも言うのか?敵も味方も…如何なるものであろうとも殺生は控えろと?下らん…お互いに手を取り合って平和を作るなど起こり得ぬわ!」
「いや、大丈夫だよ…僕は死んでないからね。」
「な…グアッ…!!」
【仮面を着けた男が驚いて後ろを振り向いた瞬間。青色の鉄の塊が彼の頭を全力で叩きのめし、白い仮面を粉砕した。】
「隊ちょ…うぁあっ!?」
「待て!いったいなにガッ…!」
【その様子を見て驚いた2人の教団員も同じ様に叩きのめされ、アサルトライフルを持った1人の教団員と、魔法を使った2人の教団員のみがその場に残っていた。】
「クソっ!何だってんだ!後退!退け!退けぇ!煙が消えるまでッ…」
【アサルトライフルを持った教団員が2人に指示しながら後ろに下がろうとした時、重々しく空を裂く様な音と共に青い何かが飛来し、彼の頭に命中した。】
「こ…これは棍棒か!?く…クソっ!もう俺達だけだぞ!」
「もうすぐ煙が晴れる…魔術の準備をしろ!」
【2人の教団員が煙と炎のある方を見ると、そこから1人の人影が見えた。】
「嘘だろう!?なぜ…なぜ生きている!?」
「単純に考えて…90発のアサルトライフルの弾丸と2つの火炎弾を食らったんだぞ!?生身だろうが鎧を着ていようが生き残れるわけが無い!!」
「コイツは人外か…!?」
【その煙の中から、背後で燻り続ける炎をものともせずにゆっくりと歩いてくる春喜が現れた。】
「人間だよ。少なくとも、人を傷つける事そのものに躊躇いを感じない君達よりも…僕はまともな人間だ!」
【春喜からいつもの様に穏やかでマイペースな雰囲気は消えており、怒りの感情を剥き出しにした表情と声で彼らにそう言い放った。春喜の姿を見た2人は、手を彼に向けるとそれぞれの詠唱を開始した。】
「か…風よ!見えざる刃となりて、我が眼前の敵を切り裂け!」
「炎よ!全てを灰と化す火球となりて我が敵を燃やし尽くせ!!」
【2人が詠唱を終えると同時に教団員の手から凄まじい突風と業火の球が彼に向かって放たれたが、その2つは彼に命中する寸前で弾け、炎がまた彼の周りに煙を生み出した。】
「ば…馬鹿野郎!また煙が…ッ…」
【風の魔術を使った教団員が文句を言うと、目の前まで迫ってきていた春喜に腕を掴まれると同時に側頭部を殴られ、気絶した状態でもう1人の教団員に投げつけられた。】
「ぐほあっ…」
「本当にジョゼフィーヌさんの言ってた通りだね…流輝君が倒れたこと以外は…」
第27章「この身を賭けて」
「俺達がやる事は分かったんですけど…さっきジョゼフィーヌさんが言ってたギャンブルって?」
「星次さんの『天国と地獄《Eden & Hell》』を使用し、私と春喜さんで『インディアンポーカー』を行います。」
「『インディアンポーカー』か…!なるほどな…」
味方同士でやるそのゲームなら…
勝敗の決まったギャンブルが成立する訳だ!
「あんたは本当にやり手だな…」
「『インディアンポーカー』って何すか?」
「あぁ…インディアンポーカーってのはな。カードの強さが3~13の順に強くて、後は…13より上の数字が1と2。そんで…1番強ぇのがJOKERだ。」
「因みに、JOKERは3のカードに負けてしまうのでご注意を!」
「何か大富豪と似てますね!」
「このゲームのルールはお互いに1枚だけカードを取って、そのカードを自分で見ずに…相手にカードの内容が見えるようにして頭の上に掲げるんだ。後は、お互いに相手のカードの内容を話し合って…自分のカードが相手よりも強そうなら、頭の上に掲げたまんまにする。そんで負けそうなら、そのカードを下ろす…簡単だろ?」
「本来ならカードの内容を話し合う際に嘘を混ぜたりして相手を翻弄するのですが…今回はお互いに真実のみを話す事によって…春喜さんには勝利して頂きます!」
「そっか!それならどっちが勝つか負けるかも自由だ!」
「そういえば、何を賭けて…何を貰えば良いんすか?」
「私は…『私の戦闘能力・身体能力・視覚と聴覚以外の感覚・魔武具の使用権利』を賭けます。そして、春喜さんにも私と同じものを賭けて頂き…『私と春喜さんが賭けたものに見合う防御力』を獲得してもらいます!」
【彼女のその賭けの内容を聞いた星次は、珍しく取り乱していた。】
「な…待て!いくら何でも賭けすぎじゃねぇか?『天国と地獄《Eden & Hell》』の効果時間がだいたい5分間かそれ以下だとしてもだ…あんたが城壁を越えた時にその賭けの効力が残ってたら、あんたはさっきの奴を全部失った状態で先に進む事になるんだぞ!?」
「大丈夫です!私には…その数分間を耐え凌ぐ能力があります。私がその能力を失わない限り…私と皆さんが完全に死亡することはありません…!」
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「ジョゼフィーヌさんはああ言ってたけど…」
今は…ジョゼフィーヌさんが来るまでにできることをしよう。
【春喜は1人でそう呟きながら流輝の傍に座り込むと、彼の上体をゆっくりと起こして背中に耳をつけた。】
「少し失礼するよ…」
心音は…止まってないけどペースがゆっくりで乱れてる時がある…
「呼吸を確かめるときは…鼻と口に手を当てるんだったかな…」
【何かを思い出したかの様に呟くと、流輝の上体をゆっくりと下ろし、彼の鼻と口のあたりに手を添えた。】
「ダメだ…」
息はしてるけど…
呼吸がとっても浅い…!
「これはかなりまずいね…」
この状態の流輝君に心臓マッサージはしても良いのかな…
【彼がそう考えていると、彼の後から風切り音の後に足音が2つ聞こえた。そして彼が後ろを振り返ると、急いでこちらに向かってくるジョゼフィーヌと星次の姿が見えた。】
「俺のカードをぶん投げてそれと俺達の位置を入れ替えて城壁を越えてみたら…まさかこんな事になってたとはな…」
「そんな…流輝さんが…!いえ…春喜さんは無事ですか?」
「うん…ジョゼフィーヌさんとやったギャンブルのお陰でね。でも流輝君は…紫色の電流を体に流されたんだ。心音が乱れてて呼吸が浅い…かなり良くない状態だよ。」
「あんたは…なるほどな。今はその人格か…とりあえず敵は?」
「全員倒したよ。思わず力を込めちゃったけど…死んではいないと思う。」
「報告ありがとうございます。私はこれから流輝さんのバイタルチェックに入るので、周囲の警戒をお願いします!」
【彼女はそういうと、春喜が行ったバイタルチェックに加えて、彼の瞼を開いて目の反応を確認した。そして、しばらく彼を見つめながら考えると。春喜と星次に向き直り、口を開いた。】
「現在の流輝さんの生命はとても危険な状況です。このままでは…2分以内に死亡してしまうでしょう。」
「クソッ…もうそれを使うしか無いのか?」
【星次はそう言いながら、流輝の首にかかっている『血の琥珀石』を指さした。】
「いえ…これは最終決戦まで残しておく方がベストの筈です。」
「じゃあどうするんだ?あんたの『魔武具』もまだ使えないんだろ?」
「星次さんの言う通りです…ですが、私にはまだ残っている能力があります。」
【彼女はそう言うとガーターベルトにストックしていたアーミーナイフを右手で取り出し、流輝の心臓部の上で左手首に刃を当てた。】
「な…あんた…一体何をするつもりだ!?」
「…もしかして。君のお母さんがやってたのと同じ事をしようとしてるのな?」
「そうです。今の私に残っている能力…それは、私のお母様の力です!今ここで…お母様に力を借ります!」
あとがき
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!
やっと城内への侵入を書くことができましたが、これまた諸々の描写でクソ長くなってしまい申し訳ない…!
次回は、『血を統べる者《Ruler of Blood》』の力と、テミスとの対峙まで持って行けたらいいなと思っています!
それでは次回をお楽しみに!