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第二部「破滅を照らす者:弾丸の天秤」その10

目次


第31章「一筋の光」

第32章「銀血の弾丸」

第33章「不透明」

第34章「冷酷な正義」

あとがき



第31章「一筋の光」


「血よ…我が命に従え。我が血の下に…彼の者の傷を癒せ…!」

「これは…詠唱…!?」

「何だ…!?」

詠唱と一緒にあいつの体が光って…完璧に元通りか…!

「今のがあいつの力…か…?」

「うん…きっとそうだよ。これがジョゼフィーヌさんの能力…いや、お母さんから受け継いでる力なんだ…!」

「そうか…」

こいつ(春喜)は確か、起きてるうちにこいつ(ジョゼフィーヌ)のお袋に出会ってるから直感で理解してんのか…?

「なぁ…ッておい!」

【星次がジョゼフィーヌに対して流輝の容態と、彼女の能力について質問しようとしたとき、流輝の隣に座っていた彼女の上半身が前後に揺れ始めた。それに気づいた彼は、すぐに彼女に駆け寄ってその背中を受け止めた。】

「おい!大丈夫か?おい!」

「どうしたんだい!?」

「クソッ…目を開けねぇぞ…!」

【目を閉じている彼女の顔を、二人が心配そうにのぞき込んでいると、彼女は静かな寝息を立て始めた。】

「寝たみたいだね…!?」

「寝たのかよ…ッ!?」

ったく…心配かけさせやがって…

「何で急に眠っちゃったんだろうね…?」

「多分…『魔法』を使ってたからだろうな。俺もあのトランプ(魔道具)を使った後はちょいと疲れるからな…」

【そうやって二人が話していると、流輝が突然、勢い良く目を覚ました。】

「待って下さい!あなたは…へ?春喜さん!それに星次さんと…ジョゼフィーヌさんッ!?」

【二人の無事を喜んでいた彼は、倒れているジョゼフィーヌを見て大声を出した。】

「落ち着け!お前はさっきまでぶっ倒れてたんだろうが!」

「え…えっと…実はそれが、倒れる前よりも元気になりました!」

「だとしてもいきなり飛び起きるのはやめようね流輝君…」

「えっ!?あっ…今はこっちの方の春喜さんなんですね…!」

「まぁ…無事なら良かったって素直に喜んでやりたいんだが…」

【彼はそこで言葉を切り、ジョゼフィーヌを見つめてため息を吐いた。】

「これじゃあ等価交換じゃねぇか…」

「もしかして…ジョゼフィーヌさんが助けてくれたんですか…?」

「あぁ、『魔法』でな。そんで体力使ったのか倒れる様に眠ったってわけだ。」

【それを聞いた流輝は、情けなさそうな表情と声で言った。】

「そんな…俺のせいで…」

「いや、そんな事ないよ…もっと僕が警戒するべきだったんだ…」

「そんな事…!」

【流輝と春喜のその会話を聞いていた星次は、ジョゼフィーヌがつけている腕時計を見ながら言った。】

「おい…お互いに自分を罰して慰め合うのは止めろ。今はそんな悠長なことしてる暇ねぇだろうが。」

「あ…はい!」

「星次君の言う通りだね…ごめん。今はどうするか考えようか。」

「でも…どうしたら?」

「先ずは状況確認だ。」

【星次はそう言うと、ジョゼフィーヌのポーチから地図を取り出した。】


挿絵(By みてみん)


「俺達が今居るのは大会議室の隣の部分…つまり目的地までまだ距離がある。この城のデカさからして…10分以上はかかるだろうな。時間はまだあるとは思うが…行動は早いに超したこたぁねぇ。」

【彼は春喜を見て言った。】

「あんたならこいつ(ジョゼフィーヌ)を担げるだろ?」

「うん大丈夫だけど…移動中に敵に見つかったら危険だと思うよ?」

「それはな…」

「それは…!俺が解決できるかも知れないです!」



第32章「銀血の弾丸」


「あ…?それはどういう事だ?」

「じ…実は…」

あれが夢じゃなかったら…

あれが本当の事だったら…!

「実は、倒れてる時にジョゼフィーヌさんに良く似た人と会ったんです!髪は白色で…目は赤色で…それ以外は思い出せないんですけど…」

でも…これだけは覚えてるんだ…

「その人が、ジョゼフィーヌが俺にくれた銀の弾丸に力を込めてくれたんです!その時に…」

【彼はそう言うとズボンのポケットに手を入れて、1つの弾丸を取り出した。その弾丸は真紅の血の様な色で、微かに銀色の光を放っていた。】


挿絵(By みてみん)


「赤色に…染まってたんです!」

「これ…どこかで見た事あるよね?」

「あぁ…こいつが俺達の治療に使ってた『魔弾』だ!」


挿絵(By みてみん)


「じゃあ…これを使えばジョゼフィーヌさんは起きるかも知れないね!」

「いや…実はそうじゃないみたいなんです…」

「そうじゃない…か…その言い方だと、弾丸を赤く染めた奴から正しい使い方を聞いた見てぇだな?」

「はい!これは…『持ってる人の魔法の効果と身体能力を上昇させる』みたいです!だから…俺の予想が正しかったら…俺の『幻影(Phantom)』が皆さんにも使えるかもしれません!」

「やってみる価値はあるな…!」

「そうだね…流輝君。お願い出来るかな?」

「わ…分かりました!準備が出来たら教えて下さい!」

【彼がそういうと、星次はジョゼフィーヌが持っていた拳銃とナイフを手に持ち、春喜は寝ている彼女をお姫様抱っこで持ち上げた。】

「よし…前に出るのは俺とお前(流輝)だ。あんた(春喜)は1番後ろから着いてきてくれ。良いか?」

「分かった。ジョゼフィーヌさんのことは任せて欲しい、代わりに前は任せるよ。」

「準備はできてますよね…そ…それじゃあ…」

【彼は『彗星(Comet)』を右手で持つと、真紅の弾丸を左手で握りしめ、自分の胸に当てて息を吸い込んだ。】

「『幻影(Phantom)』!ここに居る全員が、目的地に着くまで!!」

【彼がそう叫ぶと弾丸が彼の手の中で光り、少しだけ体が重くなるのを感じた。】

こ…この感じは…!

「できてると思います!『幻影(Phantom)』を発動した時に感じる感覚があったので!」

「できてると思う…か…お前のこの『異能』は、透明になるんじゃなくて相手に認知されなくなるって奴だよな?」

「そ…そうですね…?あれ…?お互いに姿も見えるし声も聞こえるけど…」

もしかして…流石に無理だったかなぁ…?

「とりあえず…進んでみようか。」

「あぁ…そうだな。」

【そして彼らは壁沿いに、なるべく靴音を立てないように慎重に歩みを進めて進み続けた。すると、道中で教団員を見つけた。】

「チッ…3人か…コイツらもアサルトライフル担ぎやがって…!」

「お…俺が…先に前に行きます!」

「流輝君、それは…!」

「俺が『幻影(Phantom)』の使用者なので…俺が責任を持って、効果がちゃんとあるのか確かめます!」

「……そうだな。頼んだ。」

「星次君まで…!」

「良く考えろ馬鹿…俺たち全員が蜂の巣にされればそれで終わりだ。だが…1人が殺られても俺達にはこの首飾りがある。」

【彼はそういうと『血の琥珀石』を指さした。】

「あんたはもちろん前に出られねぇし…俺は武器を持ってるからくたばる訳にはいかねぇ…これが1番の選択だ…!」

「…そ…そうですよ春喜さん!だから…俺に行かせてください!」

【その言葉を聞いた春喜は悔しさを滲ませた様な、己の無力感を呪うかのような表情と声で言った。】

「分かった…でも、君の命が1番だ。何かあったら直ぐに戻って来て欲しい。」

「はい!じゃあ…行ってきます!」

【彼はそう言うと、1人で前へと歩み出した。】

今なら…ジョゼフィーヌさんの気持ちが分かる気がする…

いつもジョゼフィーヌさんが1人で行動しようとしてたのは…誰かを守りたくて…それが一番だと思ってるからだったんだろうな…

「ごめんなさい…ジョゼフィーヌさん…1人で全部やろうとするなとか言って…」

俺も今は人の事を言えないかもしれないけど…

それでも、俺は嫌だったんです。

1人だけで進んで…傷つく姿を眺めるだけなのが…

それがどんなに最善でも…寂しくて悔しくて辛かったから…

「だから…今回だけはそのお返しってことで許して下さい…!」



第33章「不透明」


ここからはまだ距離がある…

少しづつ近ずいて行くしかないか…!

【流輝が少しずつ前に進んでいくと、3人の教団員の会話が耳に入ってきた。】

「今のところ…敵は入ってきてないみたいですね。」

「あぁ、何しろこの山には教祖様の結界があるからな。城に入る以前の問題だろ。」

「だが…へカーティア様の部隊から連絡が着いてないとかの噂があるぞ?」

「へカーティア…?誰だ…?それ…」

「なっ…お前、覚えてねぇのかよ!」

「えっと…実は私も覚えて無いのですが…そもそもとして聞いた事が…」

「いやいやいや!『ロキの化身』のお1人だぞ!」

【1人の教団員が驚愕した様子で2人に話をするが、その2人は困惑した様子で返事を返す。】

「夢でも見たか?」

「ごめんなさい…私も知らないです。」

「いや…お前ら…ヤバくねぇか!?」

え?

どういう事?

何でこの人だけはへカーティアのこと覚えてるのに他の人は忘れちゃってるの?

一応…凄い人なんだよね?

え?

俺達…っていうかジョゼフィーヌさんが倒してたよね?

「もしかしたら…俺達かお前のどっちかが敵の『記憶系魔法』でも食らったか…?」

「いや…それは難しいんじゃ無いですか?『記憶系』って高度で、遠距離から使うだけでもその難しさと『魔力』の消費量が跳ね上がるみたいですし…」

「うーん…そうだな…」

「いや!へカーティアっていうお方が…」

「分かった!とりあえずその人から俺達の舞台に連絡はねぇんだろ?」

「あ…あぁ…」

「じゃあ気にすんな。俺達は…教祖様の安全と儀式の成功さえ守ってりゃあ良いんだ。」

「そうですね。」

「いや…まぁ…そうだな。」

【やがてへカーティアの存在を訴えかけていた教団員も諦め、3人で別の会話を始めた。その様子を流輝は目の前で眺め、会話を聞いていた。】

えっと…?

困惑しすぎて目の前まで来ちゃったんだけど…?

とりあえずへカーティアの事は置いといて!

ちゃんと確かめるか…

【彼はそう考えると、教団員の頭の前に手を振りながら声をかけた。】

「き…聞こえますかー?おーい?視力はありますかー?」

【しかし、教団員は全くの無反応で会話を続けている。】

よし!大丈夫そうだ!

【そして彼は振り返ると、心配そうにこちらを見守る2人に手を振りながら音声で呼びかけた。】

「春喜さ〜ん!星次さ〜ん!大丈夫ですよ〜!!」

【その声を聞いた2人は、なるべく靴音を立てないように素早く彼の元に駆けつけた。】

「お前なぁ!大丈夫なんだろうが大声は出すなよ!心臓に悪ぃんだよ!!」

「あはは…まぁまぁ星次君…流輝君ってたまに大胆になるよね…」

「あ…確かにそうですよね…それにジョゼフィーヌさんが寝てますし…」

「そういう問題じゃあ…まぁいい。『異能』が効いてるってだけで最高だ。とりあえず…静かに進むぞ。」

「はい!」

「うん…気を付けて進もうか。」

【そして、道中に立つ教団員の隣を慎重に前に進み続け、遂に『第三の門』が見え始めた。】



第34章「冷酷な正義」


「ふぅ…無事に着きましたね…」

「そうだな…ところで、お前の『魔力』は大丈夫か?」

「実は…ジョゼフィーヌさんの治療のお陰かこの銃弾のお陰か…思ったよりも疲れてる感じが無いので大丈夫じゃないかな…と思います。」

「そいつは凄ぇな…もしかすっと…その銃弾を染めた奴はこいつ(ジョゼフィーヌ)のお袋じゃねぇか?」

「そうかもしれないね…とりあえず、ここら辺でジョゼフィーヌさんを起こしてみようか。」

「そうだな。ここら辺に『テミス』とかゆう奴が居るかも知れねぇからな…」

【春喜はジョゼフィーヌの体を優しく揺らしながら声をかけた。】

「ジョゼフィーヌさん…ジョゼフィーヌさん!」

【すると突然、彼女は目を覚まし、上半身を起こそうとした。】

「周囲の状況は…ッ!え…?」

「おはよう、ジョゼフィーヌさん。立てるかな?」

「は…はい!」

【彼女はそういうと急いで春喜の腕から飛び降り、銀のリボルバーに手を掛けながら周囲を見渡した。】

「ここは…目的地に…?確か私は流輝さんを治療した後に意識が…」

「あぁそうだ。あんたはこいつを治した瞬間にぶっ倒れた。」

「でもジョゼフィーヌさんのお陰で元気です!」

「それは…!本当に…本当に良かったです…!そして春喜さん、ここまで運んで頂きありがとうございました!」

「いや、ジョゼフィーヌさんが元気ならなんて事ないよ。」

「とりあえずあんたにこれを返しとくぜ。」

【星次がそう言うと、拳銃とナイフを手渡した。】

「はい!ありがとうございます!ところで…ここに来るまでの間に接敵はありませんでしたか?」

「あ…それについてですね…」

【不思議そうに尋ねる彼女に、流輝は弾丸の事や、ここに来るまでの間のことを話した。】

「なるほど…それは非常に強力な物ですね!」

「あ…そういえば…」

【彼はそこで言葉に行き詰ってしまう。】

「どうした?」

へカーティアについての話があったけど…

今はあんまり関係無いし…困惑させるだけかな…?

やめとこうかな…

「えっと…ジョゼフィーヌさんは色んな物を春喜さんとのギャンブルで賭けてましたけど…今は『魔武具』とかは使えるんですか?」

「そうですね…それでは、試しに出してみますね!来い…『死神の薔薇(ReaperRose)』!」

【彼女はそう言うと右腕を前に伸ばした、するとその腕と手を覆う様に青い薔薇の花びらが回転しながら現れると、『死神の薔薇(ReaperRose)』がその花びらの渦から現れた。】


挿絵(By みてみん)


「はい!バッチリです!」

「そいつは良かった…これで安心して先に進めるな。」

「そうですね!本当にどうなるかと思ってヒヤヒヤしてましたよ…」

「そうだね。でも、本当に良かったよ。」

「ですが…問題はこれからです。マーリンさんの情報では、いま私たちの目の前にある『第三の門』…そこで『テミス』が待ち受けているはずです!」

「えぇ、そうよ。」

「…ッ!」

【その瞬間、風を切るような鋭い音と共に何かが煌めき、門の近くにいた星次に目掛けて煌めきが素早く迫ってきた。その出来事に反応できたのはジョゼフィーヌだけだった。】

「星次さんッ!」

【彼女はそう叫ぶと同時に、無言で彼女と星次の位置を『影の霧《Trans Figuration》』で入れ替え、『死神の薔薇(ReaperRose)』でその輝くものを受け止めた。】

「何だッ!?」

「えっ!?」

「今のは…!?」

【その瞬間、甲高い金属音同士がぶつかる音が鳴り響き、火花が散る。そして、冷たく、静かな殺意のこもった声が彼女に囁く。】

「早いわね…ジョゼフィーヌ。」

「あなたは…!」

【彼女がその攻撃の主に反撃をしようとした瞬間、その人物は素早く後ろにステップを踏み、距離を取った。そして、門の前に立つと金色の剣を手に、彼らに告げた。】

「ようこそ、罪人の皆さん。あなた達がここに来るのを待っていたわ。」

「おっと…初対面で罪人呼ばわりか?先ずは…名前から名乗ったらどうだ?想像は着くがな…!」

【星次のその言葉に、門の前に立つ者は答える。】


挿絵(By みてみん)


「我が名は法と正義を司り罪を裁く者、『テミス』。私は『ロキの化身』の1人にして…貴様らを断罪する処刑執行人である。」

【彼女はそう告げると、彼らを鋭い目で睨みつける。】

「ここがあなた達の墓場よ。あなた達がこの門を通り抜ける事は無い。あなた達がこれから(くぐ)る事になるのは…冥界への門よ!」



あとがき


ここまで読んで頂きありがとうございました!


今回は新たなお守りや流輝のちょっとした成長、へカーティアについての謎、そして、テミスの登場についてを楽しめたかと思います!


次回からは遂にテミスとの戦いが始まるので、是非お楽しみに!

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