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祝福とその後……

 ルーカスとエミリーがバルコニーに出ると大きな歓声に包まれる。


(すごい人だわ……)


 王宮を取り囲むほどのたくさんの獣人族たちが、エミリーとルーカスに大きく手を振っている。

 エミリーが驚きに目を見開いていると、ルーカスがエミリーの肩を引き寄せ、応えるように手を振り返す。



「さぁ、エミリーも」


 ルーカスの声にエミリーも笑みを浮かべて手を振り返す。


(よかった! 本当にみんな歓迎してくれているみたいだわ……)




「エミリー、少しこっちを向いてくれ」


「何でしょう?」


 ルーカスは悪戯っ子のようににっと笑うとエミリーを引き寄せ、エミリーの唇を奪った。

 歓声がより一層大きくなる。

 突然のことに大きく目を見開いたエミリーだがすぐに顔を真っ赤に染め、ルーカスを押し返そうと手に力を込める。

 しかし、その時、突然王宮の中庭にある光の木から光の柱が天に向かって放たれた。


 その神秘的で圧倒的な力にみんなの視線が釘付けになる。あれだけ騒がしかったのが嘘のように静寂に包まれる。

 そしてその光の柱が弾けキラキラと輝く無数の光の玉となり、一瞬で四方に広がって行く。

 そんな美しい光景に見入っていると、ぽつりと誰かが声を上げる。




「光の木の祝福だ!」


「ルーカス殿下と光の守り手であるエミリー様の結婚を光の木も祝福しているんだ!」


 そんな声が至る所から上がると先ほどよりもずっと大きな歓声が響く。


 エミリーは驚きながらもルーカスを見上げると、ルーカスは柔らかな笑みを浮かべてエミリーを抱きしめた。



「みんなが、そして光の木も私とエミリーを祝福してくれているようだ。それに応えられるよう私はこれから先もずっと君を愛し、幸せにすると改めて誓おう」


「はい……ルーカス様。私もあなただけを愛し続け、ルーカス様を幸せにすると誓います」


 エミリーは目の端にに溜めた涙を堪えるように笑みを浮かべる。ルーカスはその涙を拭うようにエミリーの目の端に口付ける。

 二人は見つめ合うと、ふっと柔らかな笑みを浮かべもう一度口付けをした。


 光の玉は獣王国だけで無く、周辺諸国へも広がり、エミリーとルーカスの結婚は前代未聞の光の神の祝福として、全世界に語り継がれることとなった。







「アドルフくんいる?」


「お!! アリーナじゃん! どうしたんだ?」


 ルーカスと同じ白銀の髪にエミリーと同じ青紫色の瞳を持つ可愛らしい面立ちの少女が扉からの顔を出し、窺うようにアドルフを見つめる。


「ママとパパがまた何度呼んでもお部屋から出てこないのよ。アリーナ遊びたいのに……ねぇアドルフくんアリーナと遊んでくれる?」


「そうか……そりゃ仕方ないな……じゃあ俺と遊ぶか?」


「うん! アドルフくん大好き!」



 アリーナはパタパタとアドルフに駆け寄るとぎゅっと抱きついた。



「にしても仲が良いのはいいが……アリーナのパパには困ったな……ルーカスがどうせまた部屋から出さないんだろ?」


 ルーカスとエミリーの仲の良さは他国まで噂されるほど周知の事実で、ルーカスがエミリーを連れて一度寝室に入ると呼びかけに応じないのは王宮内では常識になりつつある。

 バーナードが苦笑を浮かべてアリーナの頭を撫でると、アリーナはニコッと笑う。



「でもアリーナはアドルフくん大好きだから、パパとママと遊べなくても寂しくないよ!」


「ア、アリーナ!! 本当にアリーナは可愛いなぁ〜」


 デロデロに甘い顔をしながらアドルフがアリーナを抱え上げ、ぎゅっと抱きしめると、アリーナも嬉しそうにアドルフを抱きしめ返した。


「じゃあ俺ちょっと外出てくるよ!」


「アドルフこの書類の山、お忘れなきように。ほどほどにしてくださいよ」


 アーノルドがモノクルを押し上げ厳しい表情で告げると、アドルフが困ったように頭をかく。


「わ、わかってるって!」



「アーノルド……アリーナ、アドルフくんと遊びに出ちゃダメ?」


 アリーナが悲しげな表情でアーノルドを見つめると、今までアドルフに向けていた厳しい表情が嘘のようにアーノルドの表情が優しげな微笑みに変わる。


「いえ、遊んで来ても大丈夫ですよ。ですがあまり長い時間はダメですよ?」


「うん! アーノルドありがとう!!」


 いつも厳しいアーノルドすら味方につけてしまう少女はにっこり可愛らしい笑顔を浮かべると、アドルフに抱えられ、みんなに手を振りながら嬉しそうに部屋を出て行った。

 その愛らしい表情にバーナード、アーノルド、ファハドも癒されながら手を振って送り出した。



「でもおかしい……アリーナの声にならルーカスは絶対応えるはずなのに……今日はどうしたんだろ?」


「そうですね。ルーカスは子どもたちを溺愛してますから」



 ルーカスとエミリーには現在二人の子どもがいる。

 下の子はつい先日生まれたばかりの男の子クラウスだ。この子には白虎獣人特有の耳と尻尾があり、エミリーより白に近いプラチナブロンドの髪色をしている。顔立ちはルーカスにそっくりだ。


 そして部屋に訪ねてきたアリーナは二人の上の子どもで、今年五歳になる女の子だ。

 獣人族の血を引いているというのに驚くことに獣人族特有の耳と尻尾は出現しなかった。しかし身体能力の高さは獣人族のそれと変わらない。

 アリーナは顔立ちがエミリーにそっくりだった。髪の色がプラチナブロンドであればエミリーに生き写しだ。

 アリーナはアドルフが大のお気に入りで、よくアドルフに会いに来る。エミリーとそっくりで可愛らしいアリーナをアドルフも溺愛している。



「あれ?……そういや今日は午前中出かけるってルーカスが言ってなかったか?」



 その時トントンと執務室をノックする音が聞こえる。


「みなさんお疲れ様です」



 扉を開いてエミリーが部屋に入って来た。



「エミリー、どうかしたか?」


「ここにアリーナは来ていませんか? もう少ししたらルーカス様が戻られるので、一緒にお茶をする約束を昨日していたのですが……さっきまで隣の部屋にいたはずなのにあの子勝手に抜け出したみたいで……」



 困ったように眉を寄せるエミリーにバーナードたちは顔を見合わせる。


「勝手に抜け出したって……エミリーに声をかけなかったのか?」


「ええ。今日はお義母様がクラウスを預かってくれていて、私はずっと隣の部屋にいましたが声は聞こえませんでしたよ。しかもこっそり抜け出したみたいで、子ども部屋のわざわざ鍵をかけている扉を開けて出たみたいなんです……」


「じゃあさっきアリーナが言ってたのは……まさか嘘か? まだ五歳の女の子だぞ!?」


「あんな無邪気な笑みを浮かべていたのに……」


 信じられないというように目を見開くアーノルドとバーナードにエミリーは苦笑を浮かべる。



「もしかして私が声をかけても返事しないからと言ってここに来たのですか?」


「うん……今アドルフと遊びに行ってる」



 エミリーは額に手を当てると大きなため息をついた。



「またアドルフくんに迷惑をかけているんですね……私探して来ます。みなさんお仕事中にすみませんでした」



 エミリーが部屋を出ると、ぽつりとファハドが呟く。


「アリーナは見た目はエミリーにそっくりで可愛いけど、性格はルーカスそっくりだから、欲しいものは何が何でも手に入れようとするタイプだよね……」


「じゃあアドルフと遊ぶためにこっそり部屋を抜け出して来たのか? 嘘までついて?」


「確かにアドルフのこと大好きですもんね。何故か私たちのことはみんな呼び捨てなのにアドルフにだけエミリーさんを真似するように『くん』をつけてますよね……」



 先ほど見た可愛らしいアリーナの笑みの中にルーカスのような計算高い笑みを見た気がして三人がブルリと震える。



「こりゃ……末恐ろしいな……」


「うん……」


「そう……ですね」




 その後、すくすくと元気に育ち、エミリーと並ぶ絶世の美女に育ったアリーナが、大好きなアドルフと絶対に結婚するのだとルーカスの頭を悩ませるのは、まだ少し先のお話。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

また評価・ブックマークもありがとうございます!励みになりました。


また気力と体力があれば、もう少しほのぼの系で五百年前の光の守り手のお話も書きたいなぁ……と思っております……

もしその時はまた見に来ていただけると嬉しいです!

ありがとうございました!

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