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事故の真実

「嫌ね。そんな恐い目で見つめないで」


 そう言いながらも、レイラは全くもって恐れなど感じていないように微笑み、挑発するような視線を向ける。


「あなたを倒して、マチルダ様の体を返してもらいます」


「ふふっ! 倒す? 私を? あなたにそれができるの? あなたの力じゃ無理なんじゃない? 歴代の光の守り手の中でもあなたの力は最弱でしょう?」


「だとしても……あなたの思い通りにはさせません!」


「はぁ……面倒だわ。だからもっと早くに潰すつもりだったのに……これもあの女のせいね」


 レイラは疲れたようにため息を吐く。そしてエミリーを見つめるとニヤッと嫌な笑みを浮かべる。



「弱いくせに強がる……本当に母親とそっくりだわ」


 エミリーはレイラの言葉にピクリと反応すると、警戒しながらレイラに問いかける。



「私の母を知っているのですか?」


「ええ。知ってるわ。たいした力も無いくせに私の邪魔をした」


「邪魔をしたって……いったいどういうこと?」


「ほんとはね……お前を殺すつもりだったのよ。あの日、あの馬車にはお前が乗ってるはずだったでしょう?」


「それって……まさか……」



 レイラはエミリーの表情を楽しげに見つめ、ニヤッと笑う。



「そうよ。お前の両親が死んだあの事故は私が仕組んだのよ。下級魔物に襲わせて、馬車を崖から落とした」


「そんな……どうしてそんなことを……」


「だからお前を狙ったって言ったでしょう?」


「まさか……それじゃあ両親は私のせいで……」



 ふらりと体をよろめかせたエミリーをルーカスとアドルフが支える。


「エミリー、しっかりするんだ」


「エミリーのせいじゃない! あの魔族が仕組んだせいだ!」



 レイラはエミリーの真っ青になった顔を嬉しそうに見つめる。



「一応お前も光の守り手と言われてたから、もし後々大きな力を手にすると面倒でしょう? だから早々に潰してしまおうと思ったのよ。でもあの馬車にお前はいなかった」


 レイラは楽しげに笑っていたが、エミリーを見つめると不快だというように眉を寄せる。



「本当に母親とそっくり。お前が死ぬところを見ようとあの場に行ったら、あの女が虫の息で言ったのよ。『あなたの思い通りにはさせない』って。しかもあの女、最後の力で私に封印の魔法をかけたのよ。本当に忌々しい」


「封印の魔法だと?」


「そうよ。だからあの後動くことができなくなった。せっかく溜めた力も全て封印されたわ」



(お義父様が言っていたお母様のもう一つの特殊魔法は封印の魔法だったのね。お母様は最後まで私を、そしてみんなを守ろうとしてくれたのだわ……だったら私も私にできることをしないと)


 母親に報いるためにも、魔族であるレイラをこのままにしておくわけにはいかない。



「でも所詮はただの光属性の魔法使い。光の守り手のような力はないし、私の全ての力を封じられるものではなかったわ。そんな時に出会ったのよ、マチルダと。本当に私にぴったりの子だった」


 レイラのニヤリと笑う表情にはマチルダへの親愛など微塵(みじん)も感じられない。自分にとって都合の良い道具としか思っていないのだろう。



「ぴったりですか……なぜマチルダ様を選んだのですか?」


「ふふっ! だってあの子ったら嫉妬心(しっとしん)(かたまり)みたいな子だったんだもの。常に誰かを(うらや)んで(ねた)んで、心の中は真っ黒。私の闇属性ととても相性が良かったわ。しかもあの子はいつも社交界の中心にいるお前をずっと憎んでた」


 レイラは楽しげに話しながら、マチルダの体を隅々まで確認するように視線を指先へと向ける。


「それでも封印された力ではすぐに体を入れ替えることはできなかった。だから少しずつ闇属性に染めたの。私の言う通りにすればお前を潰せるって……マチルダはとっても素直で可愛い子よ。だっていつも大人しく私のいうことに従うのだもの」



(彼女にとって自分の意に沿わない者は全て邪魔者。大人しく従う者は自分のための道具としか思っていないのだわ)


 エミリーは警戒しながら、レイラを睨みつける。


「お前が目の前に現れてくれてよかった! みすぼらしい姿じゃなく、そうやってお前を守る騎士まで連れて来たことで、より一層マチルダの心が闇に染まった。そしてやっと私のものになったのだから」


 レイラは満足気な笑みを見せ、上機嫌にダンスでも踊るように体を動かす。



「それであなたは体を得て何をするつもり?」


「それはもちろん、五百年前の続きよ?」


「続きだと……?」


「ええ、そうよ。五百年前に果たせなかった光の木を潰す。あの木のせいで私たち魔族は本来の力を出しきれない。あの木が闇の力を浄化し光に変えてしまうせいで魔族はどんどん数が減り、魔物も弱い個体しか生まれない。あの木が無ければこの世界は私たち魔族のものになるわ!」


 レイラはぞっとすることを語りながら、楽しげに無邪気な表情で笑う。

 その笑みにエミリーはブルリと体を震わせながらも、自分を奮い立たせるように大きく息を吐き出した。



「魔族のものになんかさせない……お母様の言った通り、あなたの思い通りにはさせないわ!」


「そうだ! そんなことは私たちが止めてやる!」


「お前のことは俺たちが倒す!」


 エミリーの声に続き、ルーカスとアドルフがレイラを睨みつけ声をあげる。

 エミリーたちは顔を見合わせ頷くと、ルーカスとアドルフが剣を構えた。


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